理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
能動的触覚にかかわる脳活動について
大西 秀明菅原 和広大山 峰生相馬 俊雄桐本 光田巻 弘之村上 博淳亀山 茂樹
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p. Aa0890

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抄録
【はじめに、目的】 自発運動時の脳活動を脳磁界計測装置で計測すると「運動関連脳磁界」波形が観察される.この波形は3つの著明な振幅から構成され,それぞれ「運動磁界」,「運動誘発磁界第一成分(Movement Evoked Magnetic field 1; MEF1)」,「運動誘発磁界第二成分(MEF2)」とよばれ多くの報告がある.また,体性感覚刺激時に導出される「体性感覚誘発磁界」に関する報告も多々あるが,動作を伴う能動的な触覚刺激時における脳活動についての報告は極めて少ないのが現状である.そこで,本研究では能動的触覚にかかわる神経基盤の一部を解明することを目的とした.【方法】 対象は健常成人男性7名(28.7±8.7歳)であった.脳活動の計測には306ch脳磁界計測装置(Vectorview,Neuromag)を利用し,運動に伴う「運動関連脳磁界」を計測した.課題動作は右示指屈曲運動とし,示指先端指腹部をアクリル板上に接触させた状態から示指近位指節間関節を屈曲してアクリル板を擦る動作とした.アクリル板は,表面が滑らかなアクリル板と,幅2mm・高さ0.7mmの突起12個を1mm間隔で付着させたザラザラしたアクリル板の2種類を使用した.課題動作は5秒間に1回程度の頻度で40回以上行い,示指屈曲運動開始を基準として加算平均処理を行った.誘発された磁界波形は1Hzから50Hzのバンドパス処理を行い,MEF1とMEF2のピーク潜時と電流発生源(Equivalent current dipole:ECD)および電流強度を算出した.【倫理的配慮、説明と同意】 本実験を実施するにあたり新潟医療福祉大学倫理委員会にて承認を得た.また,被験者には書面および口頭にて実験内容を説明し実験参加の同意を得た.【結果】 2種類のアクリル板のどちらを使用した際も,運動に伴う「MEF1」「MEF2」ともに明確に記録することができた.MEF1のピーク潜時をみると滑らかなアクリル板を使用した際には33.6±9.2 msであり,ザラザラしたアクリル板を使用した際には38.6±16.9 msであった(P>0.05).MEF1における電流強度は滑らかなアクリル板では24.5±5.6 nAmであり,ザラザラしたアクリル板では28.3±8.4 nAmであった(P>0.05).MEF2のピーク潜時は,滑らかなアクリル板を使用した際には178.6±24.2 msであり,ザラザラしたアクリル板を使用した場合(179.3±27.9 ms)であった(P>0.05).一方,MEF2の電流強度については,滑らかなアクリル板では13.1±4.7 nAmであり,ザラザラしたアクリル板を使用した場合(19.96±4.5 nAm)に比べて有意に小さい値を示した(P<0.05).ECDはいずれも一次体性感覚野近傍に推定された.【考察】 運動直後に観察される「MEF1」は運動開始後約40msで観察される波形であり,筋紡錘の活動を反映し,電流発生源は一次運動野と考えられている(Onishi et al. Clinical Neurophysiology 2011).本実験では,どちらの課題遂行時においても運動開始後約40msで観察され,過去の報告と同様であった.一方,我々の先行研究では,手指を動かさずに示指先端に接触したアクリル板が他動的に動くような動的触覚刺激を行った場合,触覚覚刺激後約40msで著明な振幅が検出でき,表面が滑らかな条件とザラザラの条件で潜時および振幅ともに差が認められないことが明らかになっている(日本生体磁気学会誌,2011).これらのことから,本実験におけるMEF1には,筋紡錘による入力と皮膚表在感覚からの入力がともに含まれているものと考えられるが,MEF1に対する表在感覚からの入力は触覚刺激の種類に影響されないことが明らかとなった.MEF2は示指伸展運動の場合には運動開始後約170ms後に認められると報告されているが,本実験においても同様に示指屈曲運動開始後約170ms後に観察され,ピーク潜時は触覚刺激の種類に影響されずに一定であった.しかし,MEF2の電流強度はザラザラした表面を擦った際に有意に大きな値を示し,MEF2が表在感覚刺激の種類に影響されて変動することが明らかとなった.このことは,MEF2が運動に伴う表在感覚を反映している可能性を示唆しており,能動的触覚機能に関与している成分と推察できる.【理学療法学研究としての意義】 理学療法領域において,運動障害や体性感覚障害を評価・治療の対象にすることは非常に多い.本研究は能動的な触覚刺激の神経基盤を解明しようとするものであり,将来的には運動障害や感覚障害の定量的な評価指標の開発に貢献できると考えられる.【謝辞】 本研究は「文部科学省科学研究費補助金基盤(B)」および「新潟医療福祉大学研究奨励金(発展的研究)」の助成を受けて行われた.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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