理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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神経再支配による骨格筋再活動様式と神経筋接合部の形態的変化
今北 英高森川 成彬吉村 真佳山上 拓西川 彰
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p. Ab0458

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抄録

【はじめに、目的】 脳血管障害や脊髄損傷、腕神経叢損傷など神経麻痺を対象とした理学療法は数多く実施されている。その程度は様々であり、理学療法実施期間中に回復、変化することも多く経験する。その回復過程において、再神経支配された筋の筋力や動きに関しては理学療法で捉えることが可能であるが、再生過程における筋組織や神経筋接合部などの変化については捉えることができない。今回、両側横隔神経切除を施し、3ヶ月間飼育することで、再神経支配を生じた横隔膜について,その程度、筋活動の特徴、また神経筋接合部の形態的特徴について分析したので報告する。【方法】 実験動物は10週齢のWistar系雄ラットを用い、被検筋は横隔膜(DIA)とした。麻酔下にて頚部腹側を切開し、両側横隔神経を露出、単離し、引き抜くことで横隔膜の活動を停止させた(DNV群)。また、同じ行程で横隔神経を露出するのみのSham手術を行なったものをコントロール(CTL群)とした。実験動物は3ヶ月間飼育し、1週間に1度の頻度で実験小動物用パルスオキシメータ(Mouse Ox Life Sciences社製)を用い、非麻酔下でSpO2を測定、横隔膜麻痺での呼吸状態を観察した。3ヶ月後、横隔膜筋活動の測定は,開腹して横隔膜を露出し,左右の横隔膜肋骨部の筋走行に沿ってテフロンコーティングされたワイヤー電極(直径0.003mm)を刺入し,TRIAS筋電計(バイオメトリクス社製)に接続した。記録した筋電波形から筋放電量(Root Mean Square : RMS)および高速フーリエ変換により再神経筋の平均パワー周波数を求めた。筋線維組織は電気泳動法(SDS-PAGE)によるミオシン重鎖アイソフォームの分析と神経筋接合部に対して蛍光染色を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本実験は畿央大学動物実験倫理委員会の承認を得て,畿央大学動物実験管理規定に従い実験を行った(承認番号20-2-I-200812)。【結果】 3ヶ月間のSpO2の経時的変化はCTL群では常に95%以上を維持していたが、DNV群では1ヶ月目が77.8%、2ヶ月目が83.4%、3ヶ月目が85.1%と緩徐に上昇したが、sham群と比較して、3ヶ月後も有意に低下していた。筋活動については再神経支配によって筋収縮を生じていたものが70%であり、それらの平均パワー周波数は、CTL群で147.5Hz,麻痺が残存している部位で74.7Hz,麻痺から回復過程にある部位で216.2Hzと高周波数帯域での活動が大きくなっていた。また、SDS-PAGEでは横隔膜筋線維は萎縮し、遅筋化していた。神経筋接合部の形態的特徴としては、CTL群は筋線維に対して円形の形態であったが、DNV群では反応性が悪く、また、小径化、鋭角化していた。【考察】 本実験結果から再神経支配された横隔膜の筋活動は、スパイク放電様でばらつきがあり、CTLと比べて散発的な筋活動であった。周波数解析によると高周波領域の活動が増加しており、神経再支配された骨格筋での活動様式であると推測され、遅筋化された横隔膜に対しての反応であるのかもしれない。今後は他の骨格筋での神経再支配について検討が必要であると考える。【理学療法学研究としての意義】 横隔神経切除による脱神経横隔膜から3ヶ月間の飼育によって再神経されることが確認された。理学療法において骨格筋の回復過程におけるこのようなミクロな部分での筋活動の解析、形態的変化、筋タンパクの変化を複合的にとらえることは非常に重要であり、さらなる追加研究において再生筋に対する経時的変化の特性を把握でき、治療場面での基礎的な知見となると考える。

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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