理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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膝関節固定がラット前十字靱帯に及ぼす影響
林 一宏小野 武也沖 貞明梅井 凡子大田尾 浩田坂 厚志石倉 英樹相原 一貴椰 千磨大塚 彰
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p. Ab0467

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抄録
【はじめに、目的】 臨床において、安静臥床やギプス固定などによる関節の不動化はしばしば見られ、その結果、皮膚や骨格筋、腱、靱帯、関節包などの関節軟部組織が様々な影響を受ける。これまでの動物実験における先行研究では、膝関節の固定により、大腿骨-前十字靱帯-脛骨複合体が引張に対する強度などの低下を起こすことが報告されてきた。また、靱帯も関節可動域制限の要因となることが報告されている。しかし、関節可動域制限の原因となるのは、複合体ではなく靱帯実質であると考えられるが、靱帯実質の強度など機械的特性について報告しているものは見られない。また、靱帯のコラーゲン線維の形態学的な変化について光学顕微鏡を使用して観察を行なっている先行研究も散見されるが、走査電子顕微鏡を用いた研究は少ない。そして、これらの研究における固定期間はほとんどが4週以上としており、そこに至るまでの経過を示す報告もほとんど見られない。本研究の目的は、ラット膝関節を対象に、関節固定後早期における前十字靱帯の引張試験と走査電子顕微鏡を用いたコラーゲン線維状態の観察から、固定期間と靱帯実質の機械的特性の一つとしての最大強度や形態学的変化の関連について検討を行なうことである。【方法】 Wister系雌ラットを使用し、左後肢を固定側、右後肢は無処置で対照側とした。固定期間は1,2,4週間の3グループに分けた。固定角度は屈曲130度とした。各試験期間終了前後には、固定側膝関節伸展角度の計測を行なった。角度計測時に加える力を一定とするため、ひずみゲージ式変換機を用い、踵骨直上に0.3Nの力を加えた。引張試験については、標本を固定側、対照側とも大腿骨-前十字靱帯-脛骨複合体の形態として試験に供し、最大強度、破断様式を記録した。また、形態学的検索については、前十字靱帯を切離して組織固定を行ない、走査電子顕微鏡にてコラーゲン線維の走行状態について観察を行なった。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は県立広島大学研究倫理委員会の承認を受け(承認番号:第M11-001号)行なった。【結果】 膝伸展角度の計測により、固定後1週間という早期から伸展角度が有意に制限されることが示された。引張試験の結果でも、固定後1週間で固定側が対照側よりも最大強度が有意に低くなっている。走査電子顕微鏡による形態学的検索においても、固定側と対照側を比較すると、やはり固定後1週間目から固定側ではコラーゲン線維配列が乱れ、靱帯の長軸方向に対して横走する線維の増加が見られた。【考察】 本研究ではラット膝関節を対象に、関節固定後早期における前十字靱帯の最大強度と形態学的変化の関連について検討するために引張強度試験と走査電子顕微鏡によるコラーゲン線維の観察を行なった。不動による関節可動域制限が起こり始める時期について、ラットの足関節を固定した先行研究では、2日目で可動域制限が発生することを報告しているものや、1週間で可動域制限が発生していることを示したものがある。本研究でも関節固定開始後1週目から固定側の膝伸展可動域に制限が見られており、先行研究と同様の結果となっている。また、関節固定1週間後から大腿骨-前十字靱帯-脛骨複合体の引張試験を行ない、機械的特性を調査した中で最大強度が低下したことを示した先行研究もあるが、大腿骨-前十字靱帯-脛骨複合体の破断個所が靱帯実質だけではなく、骨が剥離骨折を起こした場合の強度も結果に含めており、靱帯実質の強度を示してはいなかった。本研究では、骨-靱帯-骨複合体を引張試験に供した場合の靱帯そのものが破断した結果により、固定後早期から最大強度が低下する事を示した。また、走査電子顕微鏡を用いた観察結果より、固定後早期からコラーゲン線維に形態学的変化が起きていることが示され、膝伸展可動域制限や靱帯の強度低下の要因であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 先行研究により、筋、関節包などとともに前十字靱帯も膝の関節可動域制限に寄与していることが知られている。現在では、関節拘縮に対しては予防が最大の治療であることが周知のこととなっている。しかし臨床では、最近においてもやむを得ず関節固定や不動状態となってしまうことがあり、そのような場合において、固定後1週間という短い期間でも前十字靱帯は強度の低下が起きていることを明らかにすることができた。また同時に、走査電子顕微鏡による観察によって、コラーゲン線維の形態学的変化が起きていることも示され、可動域制限や強度低下の要因であることが示唆された。今後、その形態学的変化などの可逆性を明らかにすることにより、関節拘縮に対する予防、治療に示唆を与えられるものと思われる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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