理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
姿勢測定器(PA200)とVICON MXとの比較
─PA200の信頼性と乗り直し動作における姿勢再現性の検討─
加納 弘崇
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キーワード: 姿勢測定, 再現性, 計測精度
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p. Ab0661

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抄録

【はじめに、目的】 姿勢測定は、臨床における理学療法評価として非常に重要であり、結果に対する指導は欠かす事ができない。しかし、臨床では視覚による主観的な評価に頼っているのが実情であり、日々の臨床に於いて使用可能な簡便、安価な評価機器が求められる。姿勢測定器PA200(ザ・ビッグスポーツ社製)は、持ち運びができ、ある程度の空間があれば、被験者の姿勢を簡便に測定できる。評価結果はすぐに画面上の表示とプリントアウトも可能で、簡易評価としてはとても有用性が高い。しかし、前面・後面・両側面を撮影する為に、3度向きを変える必要があり、その時の姿勢評価の再現性は十分に検討されていない。今回、PA200における評価の信頼性を検討する為、VICON MX(vicon motion system社製)による姿勢評価と比較検討したので報告する。【方法】 姿勢測定器PA200とVICON MXとを用いて同一立位姿勢を計測し、それぞれの計測指標を基に計測値の差について検討した。計測は、PA200の計測手順に則り、前面、左側面、後面、右側面の順に3回計測、それぞれの計測指標となるランドマーク位置を比較した。PA200におけるランドマークは、(1)眉間中心左右移動距離・(2)喉元左右移動距離・(3)左右大結節上下差・(4)臍左右移動距離・(5)左右上前腸骨棘上下差・(6)左右上後腸骨棘上下差・(7)C7左右移動距離・(8)耳穴前後移動距離・(9)大結節前後移動距離・(10)大転子前後移動距離・(11)外果前後移動距離とした。対応するVICON MXにおけるランドマークをplug-in gaitのマーカーセットから(1)前頭部マーカー中心の左右移動距離・(2)胸骨丙マーカーの左右移動距離・(3)左右肩マーカー上下差・(4)対応なし・(5)左右上前腸骨棘マーカー上下差・(6)左右上後腸骨棘マーカー上下差・(7)C7マーカー左右移動距離・(8)前額部と後頭部のなす中心点の前後移動距離・(9)肩マーカー前後移動距離・(10)股関節中心前後移動距離・(11)足部中心前後移動距離とした。両群の比較は、対応のあるt検定を用いて有意水準を5%として検討した。またPA200とVICON MXにおける再現性の確認として、それぞれの3回の計測値から級内相関係数ICC(1,1)を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究の趣旨と内容,得られたデータは本研究の目的以外には使用しない事,および個人情報の漏洩に注意する事について説明し,理解を得た上で協力を求めた。また,本研究への参加は自由意志であり,被験者にならなくても不利益にならない事を口答と書面で説明し,同意を得ている。【結果】 両群間のランドマーク位置の比較では、(1)・(2)・(3)・(5)・(6)・右側(9)・両(10)・両(11)において、有意差がみとめられた。ICCでは、PA200において、(7)、(8)がslight。(2)がfair。(1)、(6)、(8)、(9)、(10)においてmoderate。(3)、足圧の右前、左前、右後、左後においては、substantial。(5)、(11)においては、almost perfectとなっており、殆どのランドマーク間で再現性のある傾向がみられた。また、VICON MXでは(2)にてfair、(8)にてmoderateとの結果が出たものの(11)では、substantial。他の部分では、almost perfectとなっており、再現性が確認された。【考察】 武井等によれば、VICON370での計測に於いて、その計測誤差は0.1mmと報告している事から、今回はVICON MXの精度を基準として考えてみると、結果において有意な差が認められた部位があっと事は、PA200の計測精度による問題と考えられる。PA200では、1024×768画素の写真に写った各身体ランドマークを視覚的に判断して位置を求めていく為、ランドマーク位置のズレや誤差が生じたと考えられた。しかし、PA200とVICON MXのそれぞれの再現性をICCにて確認したところ、殆どのランドマークにて再現性の確認が行えた。特にVICON MXにおいては、殆どのランドマークにて再現性が高かった。これらにより、3回の足圧計への乗り直しを行っても、被検者の姿勢の再現性が高い事が示唆された。しかし、PA200においては、頭部付近やC7、胸骨丙がVICON MXにおいては、頭部と胸骨丙において再現性の低下がみられた。これらは、より上部にある部位である為に、3回の計測間における身体位置変移がより大きく影響した為ではないかと考える。今回、PA200における計測信頼性について検討を行ったところ、計測精度はVICON MXに比べ低いものの、再現性は良好である事が確認された。また、PA200は設置から計測、結果の算出まで数分で可能である事から、臨床現場における姿勢評価指標として有効活用が可能であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 持ち運び可能な姿勢測定器PA200の特性を知る事で、臨床現場における簡便な姿勢評価と、姿勢改善指導への活用が可能となると考えている。

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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