理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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後方重心移動による体幹筋厚の変化
種本 翔山下 裕之西本 哲也藤野 雅弘長尾 光城
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p. Ab0665

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抄録
【はじめに、目的】 体幹部の安定性を高めるために、腹横筋の活動を伴う運動が臨床に用いられている。腹壁の引き込み運動などがその代表であるが、筋の収縮感覚や口頭指示の理解が困難である対象などへは導入が困難なことも少なくない。また、このような随意的運動だけではなく、運動や姿勢の変化に伴う自動的な筋収縮にも注目が集まっている。実際の現場でも、一連の動作の構成要素や、上下肢への操作から体幹筋へ働きかけることが多い。先行研究においても、姿勢変化に伴う体幹筋厚の変化が、前方重心移動、側方重心移動に関連する報告としてなされている。しかしながら、後方重心移動による体幹筋厚の変化を報告は少ない。そこで本研究では、自然立位姿勢と重心を後方に移動させた姿勢との間で、体幹筋厚の変化を確認し、臨床における重心移動の意義を検討することを目的とした。【方法】 対象は、整形外科疾患等の既往のない健常成人男性14名(年齢20.9±0.6歳、身長172.9±5.6cm、体重67.5±9.1kg)とした。測定条件は、自然立位姿勢と後方に重心移動させた立位姿勢(以下、後傾立位姿勢)とした。測定肢位は、上肢は自然下垂位させた閉脚姿勢とした。測定時の注意として、重心移動を行なう際に、母趾MP関節部が床面から離れていないことを確認して実施した。また、股関節や体幹の動きが生じていないことを確認し、各被験者の最大努力での重心移動を行わせた。条件は、順不同で行い、試行間に十分な安静を設けた。体幹筋厚は、超音波診断装置(フクダ電子社製UF‐750XT)を使用し、Bモード、7.5MHzのリニア型プローブで測定した。先行研究を参考に、プローブ照射部を臍高位と前腋窩線との交点に当て、安静呼気終末の外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋の筋厚を測定した。各条件で2回ずつ測定、平均値を算出し、条件間で比較検討を実施した。統計処理には、対応のあるt検定を用い、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき、本研究の被験者には、研究目的および内容、危険性等について、書面および口頭で十分な説明を行い、同意を得た上で実施した。【結果】 得られた体幹筋厚は、自然立位姿勢時の外腹斜筋が7.1±1.5mm、内腹斜筋が15.4±3.8mm、腹横筋が4.7mm±1.1mmであった。後傾立位姿勢時の外腹斜筋が7.1±1.5mm、内腹斜筋が16.8±3.8mm、腹横筋5.7±1.3mmであった。両条件間の比較において、内腹斜筋(p<0.05)、腹横筋(p<0.001)それぞれの筋厚に有意な増加が認められた。【考察】 本研究の結果から、後方重心移動により内腹斜筋および腹横筋の筋厚は有意に増加を示し、重心移動が体幹筋厚に変化が生じさせることが確認された。これは、体幹や股関節の動きを意識的に制限した条件下であれば、後方重心移動に伴う姿勢制御の過程で、内腹斜筋と腹横筋に活動を要求できることを意味する。体幹部の安定性を担う腹圧や胸腰筋膜の緊張の調節には、腹横筋だけでなく内腹斜筋も寄与していることが報告されており、これらの筋群に活動を高めることはきわめて重要である。今回得られた変化から、腹横筋だけでなく内腹斜筋も含めた姿勢制御において重要な筋群に、後方重心移動という簡便な方法で働きかけることができることが示唆された。ローカル筋とグローバル筋に分類されて以降、体幹部の重要性は様々な手法で議論されてきているものの、重要になるのはそれら異なる機能を持つ器官が協調的な運動を行なうことであり、それをいかにして対象者に獲得させるかということである。それぞれの筋が協調して活動する上で、ある筋の活動が低下していることは、全体としての運動効率を低下させる要因にも繋がる。そのため、これらの筋に活動を促す姿勢変化は、機能が低下している対象者に対する介入の選択肢になると考えられる。しかしながら、腹横筋は、運動に先行する筋活動が体幹部の安定に重要であると考えられており、本人の努力による今回の姿勢変化のみでは、収縮のタイミングなどの学習には、限界があると感じられる。今回得られた筋厚変化から、姿勢変化に伴う体幹筋の活動は確認できた。今後、活動を促すことが、体幹筋の機能に対する影響、しいては、体幹部の安定性への寄与を含めた臨床的応用の可能性を検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】 姿勢や運動の制御において重要視されている腹横筋およびそれと協調すべき内腹斜筋に、重心移動という簡便な方法を用いて、活動を促せる可能性が示唆された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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