理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
呼吸運動評価スケールの開発と信頼性の検討
金子 秀雄諸富 誠一近藤 泰彦山下 夕佳里堀江 淳
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キーワード: 呼吸運動, 評価, 信頼性
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p. Ab0675

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抄録
【目的】 呼吸のフィジカルアセスメントにおいて呼吸運動に関する所見は欠かせない情報の一つであり、その把握には的確な評価技術が求められる。しかし、視診や触診のよる呼吸運動の評価は経験的に判断され胸式呼吸や横隔膜呼吸など定性的な評価に留まることが多い。この背景には呼吸運動を評価するための具体的な基準や手順が明確でないことが考えられる。そこで、我々は3次元動作解析装置を用いて健常者の胸腹部の呼吸運動を測定し、その参考値を示してきた。今回、この結果をもとに呼吸運動を評価するためのスケール(呼吸運動評価スケール)を作成した。本研究では呼吸運動評価スケールを紹介するとともに、その信頼性について検証することを目的とした。【方法】 呼吸運動評価スケールは、呼吸運動を上部胸郭、下部胸郭、腹部に区分し、その観察点(左右の第3肋骨および第8肋骨と上腹部)の吸気運動の大きさを視診・触診によって判別し5段階で表記するものである。観察点は各区分において呼吸運動が大きな部位として選んだ。段階は、-1(縮小)、0(変化なし)、1(わずかに拡大)、2(明らかに拡大)、3(大いに拡大)と定義した。健常者における安静時吸気運動の平均は深呼吸時の3割未満であり、この大きさを1とした。上部および下部胸郭の呼吸運動は左右個別に評価し、その平均で表した。3区分の呼吸運動は合計し、呼吸運動全体の大きさとして表記した(平均的な呼吸運動では3となる)。呼気時に腹直筋の収縮を認めた場合には+を付け加えるようにした。呼吸運動評価スケールの検者内および検者間信頼性を検証するため、2名の理学療法士に評価方法を口頭にて説明した。症状が安定した入院中の呼吸器疾患患者13名を対象に、2名の理学療法士が同一日時に呼吸運動評価スケールにより呼吸運動を評価した。評価は背臥位と座位(背もたれあり)の各姿勢で行い、1名の理学療法士が評価した直後に、もう1名の理学療法士が同様な手順で実施した。そのうち1名の理学療法士は、1週間後に再評価を行った。評価結果は手元に残らないように別の理学療法士が回収し管理した。上部胸郭、下部胸郭、腹部のスケールとその合計における検者内および検者間信頼性の指標として重み付けカッパ係数を求めた。【説明と同意】 対象者には研究内容を書面および口頭にて説明し同意を得た。また、本研究は所属施設および実施施設の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】 対象者13名のうち3名は退院したため、1週間後に再評価を実施できた対象者は10名であった。検者内信頼性としてのカッパ係数は、背臥位において-0.06~0.43となり合計スケールは負の値を示した。座位においてもカッパ係数は-0.03~0.53となり、背臥位と同様な結果を示した。検者間信頼性では、背臥位において-0.05~0.73となり、上部胸郭スケールが最も高く、合計スケールが最も低くなった。座位では0.20~0.63となり、下部胸郭スケールが最も高く、合計スケールが最も低くなった。【考察】 呼吸運動評価スケールの検者内および検者間信頼性を検証した。その信頼性は、胸郭スケールで比較的良好な値を示したものもあるが、全体としては十分な信頼性を確認することができなかった。特に合計スケールのカッパ係数は低く、各部における評価スケールの信頼性の低さが反映したものと考えられる。また、検者内信頼性においては、症状の安定した呼吸器疾患患者を対象としたが、1週間後に再測定を行ったことでコンディションが変化し、呼吸運動の大きさに違いが生じていたことも考えられる。今回、評価者には口頭説明だけで実践的な練習は行わずに実施した。しかし、今回の結果を踏まえると、信頼性を高めるために事前に練習を行っておく必要があったと考える。安静呼吸時の呼吸運動の平均は胸郭で4mm前後、腹部では10mm程度とその変化は大きくない。そのため境界域の呼吸運動を的確に判別するには、その大きさに関する具体的なイメージを持てることが大切かもしれない。今後は、練習を行うなどの条件を変えることで呼吸運動評価スケールの信頼性を高められるか検証していきたい。【理学療法研究としての意義】 呼吸運動を評価するための明確な基準や手順がない現状において、その基準を示すことは呼吸運動の的確な評価を行う上で重要なことと考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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