理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
健常若年女性における腹臥位からpuppy positionへの腰椎椎間板厚変化
畠 昌史竹井 仁宇佐 英幸小川 大輔松村 将司市川 和奈見供 翔妹尾 淳史渡邉 修
著者情報
キーワード: 腰椎椎間板, puppy position, MRI
会議録・要旨集 フリー

p. Ab0687

詳細
抄録
【はじめに、目的】 理学療法でよく用いられる治療的肢位の一つに、パピー姿勢 (puppy position;以下、PP)があり、腰椎前弯が減少している腰椎椎間板障害に対してや、胸腰椎可動性の改善目的等に実施されている。またPPは腰部疾患に対する治療のみに限らず、徒手療法の治療肢位として選択されることもある。しかし、PPについての運動学的分析に関する報告は少なく、PPが腰椎椎間板に与える影響を分節別に検討した報告はみあたらない。そこで今回の目的は、健常若年女性を対象に、MRI (Magnetic Resonance Imaging)を用いて、腹臥位とPPにおける腰椎椎体間前縁の距離と後縁の距離を測定し、PPが各腰椎椎間板に与える影響を明らかにすることとした。【方法】 対象は腰部・下肢に既往のない健常若年女性15名で、平均年齢(範囲)は20.3(19-23)歳、身長と体重の平均値(標準偏差)は156.4(4.1)cm、49.8(5.1)kgだった。測定条件は、1)腹臥位・2)PPの2肢位とした。各条件について、MRI装置(PHILIPS社製Achieva 3.0T)を用い、T2強調矢状断像(撮像視野470mm、繰り返し時間6278msec、エコー時間 90msec、スライス厚6mm、スライス間隙6mm、スキャン時間3分25秒)を撮像した。得られた画像から、腰椎棘突起と仙骨稜を含む画像を抽出し、1)上下に隣接する椎体間(Th12/L1~L5/S1)の前縁の距離、2)上下に隣接する椎体間(Th12/L1~L5/S1)の後縁の距離を画像解析ソフト(米国国立衛生研究所、Image J Ver.1.42)を用いて計測した。統計学的分析は、腹臥位とPPとの差を比較するため、各椎体間前縁・後縁の距離それぞれについて対応のあるt検定を実施した。有意水準は5%とした。統計ソフトにはIBM SPSS Statistics Ver.19を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】 全対象者に対し、事前に研究内容ならびにMRI撮像について十分説明を行い、書面にて研究参加の同意を得た。なお本研究は、研究代表者が所属する大学院の研究安全倫理審査委員会の承認を受けて実施した。【結果】 腹臥位における腰椎椎体間前縁の距離 [mm]の平均値(標準偏差)はそれぞれ、Th12/L1:12.6(2.6) 、L1/2:14.0(2.1) 、L2/3:15.6(2.6) 、L3/4:18.4(1.8)、L4/5:21.7(1.8)、L5/S1:22.5(2.9)だった。PPではそれぞれ、Th12/L1:12.3(2.8) 、L1/2:15.1(2.9)、L2/3:17.3(2.4) 、L3/4:19.0(2.7) 、L4/5:22.2(2.4)、L5/S1:22.1(3.4)だった。次に、腹臥位における腰椎椎体間後縁の距離 [mm]の平均値(標準偏差)はそれぞれ、Th12/L1:9.9(1.3) 、L1/2:11.0(1.6)、L2/3:12.1(1.3) 、L3/4:13.2(1.9)、L4/5:14.0(1.7)、L5/S1:11.0(2.5)だった。PPではそれぞれ、Th12/L1:9.2(1.4) 、L1/2:10.0(1.4)、L2/3:11.0(1.4) 、L3/4:11.6(1.8)、L4/5:12.5(1.8)、L5/S1:10.3(2.5)だった。腹臥位とPPを比較した結果、前縁の距離はL1/2・L2/3で有意差がありPPでより大きかった。一方、後縁の距離はL1/2・L2/3・L3/4・L4/5で有意差があり、PPでより小さかった。その他の部位には差がなかった。【考察】 PPでは、L1/2・L2/3の椎間板前部に伸張ストレスがかかり、L1/2・L2/3・L3/4・L4/5の椎間板後部には圧縮ストレスがかかることが明らかになった。その他の部位には変化がなく、ストレスがかからないことがわかった。したがって、PPはL1/2・L2/3・L3/4・L4/5の椎間板後方線維輪あるいは後縦靭帯の緊張を緩和させるための肢位として有用であることが確認できた。特に、L3/4・L4/5は椎間板前部の伸張を加えることなく、後部のストレスを緩和できることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 PPにより影響を受ける腰椎椎間板とその部位は、L1/2・L2/3の前縁と後縁、L3/4・L4/5の後縁であることが分かった。特にL3/4・L4/5については、PPをとることで前部線維輪に伸張ストレスを加えることなく後部線維輪のストレスを軽減できることから、軽度な椎間板ヘルニアの治療肢位として有効である可能性が示唆された。他にも、脊椎分節を考慮した運動療法や治療肢位の選択、あるいはリスク管理やADL指導等に応用することができると考える。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top