理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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腹部周囲径と腹横筋厚の関連性
布施 陽子福井 勉
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p. Ab0689

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抄録
【目的】 腹横筋の運動機能には、下位肋骨を下方に引き下げ腹部周囲径を減少させること、および腹腔内圧の上昇作用がある。近年、腹筋群(外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋)筋収縮を超音波診断装置によって筋厚測定する研究が多くなってきているが、筋厚が何を示しているのか不明確な点がある。そこで、腹横筋厚の示す意義について検討することを目的とした。一方で、腹部を凹ませることは体幹筋の収縮に有効であると言われており、腹部周囲径は腹横筋機能に重要な影響を与えていると考えられる。両者の関連性を検討するため、三次元動作解析装置と超音波診断装置を同期させ、腹部周囲径と腹横筋厚の関係を検証したので報告する。【方法】 対象者は腹部に異常のない健常者10名(男性2名,女性8名,平均年齢28.5±2.37歳,身長=161.4±8.08cm, 体重=53.5±7.91kg, BMI=20.5±1.78)であった。計測機器は、三次元動作解析装置(VICON motion systems社製)および超音波診断装置(HITACHI Mylab Five)を用いた。12個の反射マーカーを、被験者の臍の直上を通る腹部周囲水平面上に1周するように貼付した。また、前後関係の視認性を高めるため仙骨上にも貼付した。超音波診断装置による腹横筋厚の計測部位は、上前腸骨棘と上後腸骨棘間の上前腸骨棘側1/3点を通る床と垂直な直線上で、肋骨下縁と腸骨稜間の中点とした。本法は、われわれの先行研究で高い信頼性が得られた位置である。超音波画像は、腹筋層筋膜が最も明瞭で平行線となるまで押した際の画像を動画として記録した。計測肢位は立位とし、両上肢は反対側の肩に置いた状態とした。また被験者へは「5秒間かけて鼻から息を吸い、出来るだけお腹を膨らませてください。その後、5秒間かけて口から息を吐き、出来るだけお腹を凹ませてください。」と指示した。本指示による練習を十分に行った後に計測を行った。計測中はメトロノームを使用し、5呼吸中3呼吸目について三次元動作解析装置でマーカー位置を、超音波診断装置で腹部超音波画像を同期した。各マーカー間(1~12)の3次元座標位置から各マーカー間距離を算出し、その合計を腹部周囲径とした。また腹横筋厚計測は、超音波画像から得られた動画像を座標データと同期させ、Scion Imageにて計測した。統計処理はSPSS ver18を使用し、腹部周囲径と腹横筋厚の関係を有意水準1%未満にて回帰分析で求めた。さらに被験者の体格による差を考慮し、腹部周囲径最大値, 腹横筋厚最大値を基準に正規化を行い、両者の相関関係を有意水準1%未満にて分析した。【倫理的配慮、説明と同意】 本実験にあたり、文京学院大学大学院倫理委員会の承諾を得て行った。また、被験者には、腹横筋評価をより詳細に確立する事を目的とすること、実験方法については十分に説明をし、同意書による承諾を得た上で行った。【結果】 1、腹部周囲径が小さいほど腹横筋厚は大きく、腹部周囲径が大きいほど腹横筋厚は小さくなった(R2=0.73~0.94, p<0.01)。2、全被験者の腹部周囲径と腹横筋厚については有意な相関関係を示した(r=-0.76, p<0.01)。【考察】 本研究結果から、呼気で腹部周囲径が小さくなる時、腹横筋が活動していることが示された。したがって超音波診断装置による腹横筋厚は、腹横筋収縮を伴った腹式呼吸獲得の判断指標となりえると考えられた。また呼気に合わせて腹部を凹ませる事が、腹横筋収縮を促せる事から、臨床場面における呼吸法指導の1つとして捉えることが可能であると考えられる。Abeらは、腹横筋は座位と比較して、立位呼気時により大きい活動を認めるとしており、今回の実験で施行した腹部を凹ませながら口から息を吐く呼吸を立位で行う事の有効性が肯定されたと考えられる。フィードバックが難しい腹横筋収縮エクササイズを、腹部の動きに着目する事で、適確に判断する事が出来ると考えられる。また、このエクササイズにより、腹腔内圧を高めることが可能になれば、四肢の運動時に体幹,骨盤帯を固定するために有効に作用し、四肢の筋力の向上、パフォーマンスの改善が期待できると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究により、腹部周囲径に着目した呼吸をすることが、腹横筋の評価やエクササイズにつながる可能性を示したことは運動療法への適応を広げたと考えている。また超音波診断装置をフィードバックとして使用することにより、腹横筋収縮を伴った腹式呼吸獲得に貢献できると考えている。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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