理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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外部負荷が肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の運動に与える影響
甲斐 義浩後藤 昌史竹井 和人政所 和也
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p. Ab1079

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抄録
【目的】 Codman(1934)は,上肢挙上運動時に起こる肩甲骨と上腕骨の連動した動きをScapulohumeral rhythm(SHR)と呼び,さらにInman(1944)は,この上腕骨と肩甲骨の運動は挙上運動全体を通してみると,概ね2:1の割合で起こることを明らかにした。これら上肢挙上時の規則的な肩甲骨運動は,腱板を代表とする肩関節周囲筋の協調的な活動によって成り立っている。従来の報告より,腱板断裂やImpingement症候群に代表される肩筋腱疾患によって筋機能が低下すると,高頻度で肩甲骨の運動異常が生じることが示されている。すなわち,筋活動性(随意収縮力)の変化は,結果的に関節運動の変化を招く可能性がある。そこで本研究では,外部負荷による筋活動性の変化が,上肢挙上時の肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の運動に与える影響について検討した。【対象と方法】 対象は,健常成人37名(平均年齢20.6±1.7歳,平均身長171.9±6.2cm,平均体重65.3±5.9kg)とした。被験者は,無負荷および1kg,2kg,3kg,4kg,5kgの外部負荷(ダンベル)を保持し,約3秒間の肩甲骨面上肢挙上を行った。測定には,磁気センサー式3次元空間計測装置(3SPACE-LIBERTY,Polhemus社製)および解析ソフトMotion Monitor (Innovative Sports Training社製)を用い,上肢挙上時の肩甲上腕関節挙上角(GHE),肩甲骨上方回旋角(SUR),肩甲骨後方傾斜角(SPT)をそれぞれ求めた。磁気センサーは,胸骨柄,肩峰,上腕骨三角筋粗面にそれぞれ工業用両面テープを用いて強固に貼付した。センサー貼付後,上腕骨,肩甲骨および胸郭における骨格ランドマークのデジタライズ処理を行い,解剖学的な座標系を求めた。運動軸は,International Society Biomechanics推奨のISB Shoulder recommendationに従い定義し,上肢挙上角(胸郭と上腕骨のなす角)5°ごとのGHE,SUR,SPTを算出した。算出されたGHEとSURより,上肢挙上角15°ごとのSHRを求めた(SHR=GHE/SUR)。統計処理には,一元配置分散分析およびTukey-Kramerの多重比較検定を採用し,危険率5%未満を有意差ありと判断した。なお,第2種の過誤(TypeII error)に配慮して, 統計学的有意差を90%の確率で検出できるサンプルサイズを,あらかじめ検出力分析(power analysis)によって決定した(α=0.05)。【説明と同意】 対象者には研究の趣旨と内容,得られたデータは研究の目的以外には使用しないこと,および個人情報の漏洩に注意することについて説明し,同意を得た上で研究を開始した。【結果】 上肢最大挙上時の各測定値の平均は,GHE;90.2±1.5°~88.7±1.5°(無負荷~5kg),SUR;38.2±1.2°~37.8±1.2°,SPT;23.9±1.8°~20.9±1.8°であり,各負荷間に有意な差は認められなかった。また,上肢挙上角5°ごとのGHE,SUR,SPTを各負荷間で比較した結果,すべての挙上角で有意な差は認められなかった。各負荷におけるSHRの平均は,無負荷;1.8±1.7,1kg;2.0±0.6,2kg;2.0±0.9,3kg;1.8±0.8,4kg;1.9±0.8,5kg;1.9±1.1であった。上肢挙上角15°ごとのSHRは,各負荷間に有意な差は認められなかった。【考察】 従来の報告では,外部負荷によって肩甲骨運動が増加することを示した報告(McQuade et al. 1998)や減少することを示した報告(Kon et al. 2008),変化しないことを示した報告(Michiels et al. 1992;Pascoal et al. 2000)など,さまざまな分析結果が報告されてきた。ただし,これら先行研究では,負荷量や測定方法などの実験条件が統一されていないことや,分析結果を担保する検出力とサンプルサイズの統制が不十分であったことから,それぞれの分析結果の積極的な支持には至らなかった。本研究の結果より,上肢挙上時の肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の運動は各負荷間で有意な変化を示さなかった。すなわち,筋機能に異常がなければ5kgまでの外部負荷を加えても至適な関節運動は保たれることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】 5kgまでの外部負荷を用いた動的な肩甲骨運動の評価によって,肩甲骨の運動異常が検出される場合,上肢挙上運動に貢献する肩関節周囲筋の筋機能不全が疑われる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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