理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
3次元動作解析装置による股関節回旋角度計測時における大腿マーカー位置の検討
永田 正夫福井 勉
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p. Ab1081

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抄録
【はじめに、目的】 3次元動作解析装置による測定の際には、皮膚の動きが計測値に対し影響を与え、誤差を生み出すとされている。こうした皮膚の動きによる干渉はskin movement artifact(以下artifact)と呼ばれ、特に回旋運動への影響が大きいとされている。股関節回旋運動の計測においては、大腿に貼付するマーカーのartifactが計測値に大きな影響を及ぼし、大腿マーカーの貼付位置によって算出される股関節回旋角度が異なることが明らかにされ、大腿マーカー位置は、大腿の近位に置くほど誤差が大きいと報告されている。しかし、基準となる前後あるいは遠位の詳細な貼付部位については検討されていない状態であり、artifactの影響の少ない大腿マーカー位置を規定することが求められている。そのため本研究においては、3次元動作解析装置を用いた股関節回旋運動計測時の誤差の少ない大腿マーカー位置を規定し、従来の方法と比較検討することを目的とした。【方法】 対象は骨・関節および神経疾患の無い健常成人男性10名(年齢;30.8±4.04歳、身長;171.0±5.39cm、体重;66.8±4.08kg、BMI;22.9±1.70)であった。計測機器はvicon-mx(カメラ8台、sampling rate 100Hz)にて行った。身体標点として、直径14mmの赤外線反射標点をvicon社のplug-in-gait下肢モデルにより定められた所定の位置に計15個貼付した。本実験目的である大腿マーカーについては、右側前列として右側上前腸骨棘から右大腿骨外側上顆にかけて直線を引き、下1/4の位置(am)と、そこから上(as)下(ai)4cmの位置に計3点、中列として右側上前腸骨棘と右側上後腸骨棘を結んだ線の中点から右大腿骨外側上顆にかけて直線を引き、同様に上からca、cm、ciの3点、後列として右側上後腸骨棘から右大腿骨外側上顆にかけて直線を引き、同様に上からpa、pm、piの3点、合計9点のマーカーを貼付した。動作課題は立位における右側下肢の長軸回旋とした。対象被験者は、右膝関節伸展位でボールベアリングターンテーブル上に立位姿勢を取り、骨盤が動かないように固定された。この状態で、メトロノームに合わせて1秒の間に、股関節で右側下肢を回旋させ、その際ターンテーブルは、内外旋それぞれ20°と30°回転すると止まるように設定された。また計測中膝関節は伸展位で固定されていることを確認した。被験者は十分な練習を行った後、各角度で3回ずつの測定を行った。9つの大腿マーカーそれぞれを基準とし、plug-in-gaitに定められた他のマーカーとの組み合わせで作られるモデルを用いて、それぞれ算出される股関節回旋角度と、動作時における水平面上の骨盤と足部がなす角度の間に差があるかについて、有意水準5%未満としてBonferroni検定を用いて解析した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は文京学院大学大学院保健医療科学研究科の倫理委員会の承認を得て実施した。対象者には、予め実験の目的および内容を口頭並びに書面にて説明し、実験参加への同意を得た。【結果】 大腿遠位前外側部に貼付したaiのマーカーから算出された股関節回旋角度計測値の誤差が最も少なく、統計学的にも有意に小さかった(p<0.05)。【考察】 本研究においても他の先行研究と同様に、大腿マーカー貼付位置によって、算出される股関節回旋角度の大きさには違いが見られた。先行研究では、大腿のartifactは股関節に近いほど、大腿後方にあるほど大きいという報告があるが、本研究結果でも同様に、as、cs、psという比較的股関節に近い大腿マーカーの誤差が大きく、遠位にあるai、ci、piという大腿マーカーは誤差が少なかった。また、ci、piに比べて前方に位置するaiは、さらに計測誤差が少なかった。以上より、上前腸骨棘から大腿骨外側上顆にかけた直線上の遠位1/4以下の大腿前外側部は、皮膚の動きが比較的少なくartifactの影響を受け難い位置であり、同部位へのマーカー貼付が股関節回旋運動の計測時に信頼性が高いと考えられた。またartifactは、前後位置よりも上下位置における影響が大きいことが示され、大腿周囲径の違い、すなわち骨からマーカーまでの身体内の水平面上の距離が関係しているものと考えられた。また前後位置に関しては、動作課題が膝伸展位で行われたことより、大腿前面の膝伸筋の緊張状態も関係しているのではないかと推察した。【理学療法学研究としての意義】 本研究により、より明確な大腿マーカー位置決定基準を示唆することができた。また、その際の股関節回旋動作計測時の誤差量を特定できた。こうした誤差を明らかにすることは、股関節回旋動作計測時のデータを用いる上で有益なことであると考える。今後、この位置のartifactの影響が少ない原因を調査するとともに、この大腿マーカー位置を用いた計測を行うことにより、様々な動作での股関節回旋角度を明確にする所存である。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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