理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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骨格筋量の変化に伴うペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γおよびadiponectinの発現応答
後藤 亜由美生田 旭洋大野 善隆後藤 勝正
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p. Ab1099

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抄録
【目的】 高脂肪食やエネルギー過剰摂取および運動不足などの生活習慣は、内臓脂肪の蓄積を招き、インスリン抵抗性や糖尿病をはじめ、高血圧症や脂質異常症を引き起こす。こうした内臓脂肪蓄積による肥満、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧などが合併した病態をメタボリックシンドロームと呼ぶ。メタボリックシンドローム発症の共通基盤には脂肪細胞由来のアディポカインの分泌異常があると考えられている。アディポカインの1つであるadiponectinは、末梢組織におけるインスリン感受性の維持や骨格筋および肝臓における脂肪燃焼ならびに糖利用促進作用を持つが、運動に伴うadiponectin分泌調節機構の全貌は明らかでない。我々は骨格筋肥大に伴い骨格筋組織内adiponectinの発現が増加することを報告した。しかし、骨格筋組織内adiponectin増加の分子機序は不明である。また、運動が循環血液中のadiponectin濃度に及ぼす影響について統一した見解はない。一方、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(以下PPARγ)は脂肪細胞をはじめ多くの組織に存在し、インスリン感受性に関与することが知られている。近年、インスリン抵抗性を改善するチアゾリジン受容体は、PPARγを活性化させてadiponectinの発現を増加することが報告されている。しかしながら骨格筋量の変化に伴うPPARγ発現は明らかでない。そこで本研究では、骨格筋量の増大に伴う骨格筋組織中のPPARγおよびadiponectinの発現、ならびに血中adiponectin濃度について、マウス代償性筋肥大モデルを用いて評価・検討することを目的とした。【方法】 実験には生後11週齢の雄性マウス(C57BL/6J)のヒラメ筋を用い、全てのマウスの左後肢の腓腹筋腱を切除しヒラメ筋を代償性に肥大させた。対照には、右後肢ヒラメ筋を用いた。全てのマウスは気温23±1℃、明暗サイクル12時間の環境下で飼育された。なお、餌および水は自由摂取とした。腓腹筋腱切除後経時的に血液ならびに両後肢のヒラメ筋を摘出し、即座に結合組織を除去した後、筋湿重量を測定した。筋湿重量測定後、液体窒素を用いて急速凍結し、-80℃で保存した。その後、リアルタイムRT-PCR法によりadiponectinのmRNA発現量を、Western blot法によりadiponectin及びPPARγのタンパク発現量を測定した。また、ELISA法により血中adiponectin濃度を測定した。【倫理的配慮】 本研究は、豊橋創造大学が定める動物実験規定に基づき、豊橋創造大学生命倫理委員会の審査・承認を経て実施された。【結果】 代償性筋肥大モデルによる検討の結果、同筋腱切除によりヒラメ筋の筋湿重量の増加が認められた。共同筋腱切除により、骨格筋組織内のadiponectin mRNA及びタンパクの発現量は増加した。また、PPARγのタンパク発現量も共同筋腱切除により有意に増加した。しかし、共同筋腱切除による血中adiponectin濃度の変化は認められなかった。【考察】 共同筋腱切除による筋肥大において、adiponectin mRNA及びタンパク発現量の増加が確認された。また、同様にPPARγのタンパク発現量も増加した。したがって、PPARγを介してadiponectin発現量が制御される可能性が示唆された。しかしながら共同筋腱切除による血中adiponectin濃度に変化は認められず、骨格筋量増大によるadiponectinへの影響は局所的であることが示唆された。骨格筋量の増加をもたらす刺激は骨格筋のインスリン感受性の維持や改善、ならびに糖・脂質代謝亢進に十分に寄与すると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 骨格筋の増量は、骨格筋組織におけるadiponectin及びPPARγの発現を増大させることが明らかとなった。臨床場面でメタボリックシンドロームや糖脂質代謝異常などの疾患に対する理学療法では、骨格筋量を維持あるいは増大させる運動や刺激を積極的に取り入れるべきであると考えられた。本研究の一部は、文部省科学研究費(B, 20300218; A, 22240071; S, 19100009)ならびに日本私立学校振興・共済事業団による学術振興資金を受けて実施された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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