理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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除神経性筋萎縮と廃用性筋萎縮におけるタンパク質分解経路に対する電気刺激の効果
松本 愛香藤田 直人荒川 高光三木 明徳
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p. Ab1108

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抄録
【はじめに、目的】 筋萎縮はタンパク質の分解が亢進し、相対的に合成が抑制された結果として生じる。骨格筋の代表的なタンパク質分解系にはカルパイン系やユビキチン・プロテアソーム系がある。タンパク質分解の亢進は除神経や非荷重などで起こり、いずれも骨格筋に萎縮を生じさせる。電気刺激は筋萎縮の予防手段の1つとして用いられるが、筋萎縮を引き起こす原因が異なれば主となるタンパク質分解経路も異なり、その予防効果に違いが生じると予想される。そこで今回、除神経と非荷重の筋萎縮モデルを用い、電気刺激による筋萎縮予防効果の違いを検討した。【方法】 12週齢のWistar系雄性ラットを対照群(Con群)、坐骨神経を除神経した群(Den群)、除神経+電気刺激群(Den+ES群)、後肢非荷重群(HU群)、後肢非荷重+電気刺激群(HU+ES群)に区分した(各群n=6)。電気刺激は前脛骨筋の筋腹を経皮的に刺激することで実施し、刺激条件は周波数を100Hz、パルス幅は1msとした。刺激強度はDen+ES群及びHU+ES群ともに、同じ収縮張力が発生する値とした。電気刺激は1秒間の刺激と2秒間の休息を20回繰り返し、午前と午後に5セットずつ、一日合計200秒実施した。なお、セット間には5分間のインターバルを設けた。2週間の実験期間終了後、前脛骨筋を摘出して湿重量を測定した後に急速凍結した。得られた筋試料から、横断切片を作製し、ATPase染色(pH 4.5)所見にて筋線維をタイプI、IIA、IIBに分け、筋線維タイプごとに横断面積を算出した。また、筋試料の一部はWestern blot法によるカルパイン-1、カルパイン-2、及びユビキチン化タンパク質の解析に用いた。得られた測定値の統計処理には一元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を用い、有意水準は1%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全ての実験は所属施設における動物実験に関する指針に従い、動物実験委員会の許可を得たうえで実施した。【結果】 筋湿重量と全てのタイプにおける筋線維横断面積は、Con群に比べて他の全ての群で有意に低値を示した。また、筋湿重量とタイプIIB線維の横断面積に関して、Den群はHU群に比べて有意に低値を示し、Den+ES群はDen群よりも有意に高値を示したが、HU群とHU+ES群の間に有意差を認めなかった。Den群におけるカルパイン-1 、カルパイン-2、及びユビキチン化タンパク質の発現量はCon群とHU群に比べて高値を示した。HU群におけるカルパイン-1とユビキチン化タンパク質の発現量はCon群との間に有意差は無かったが、カルパイン-2のみ増加傾向を示した。カルパイン-1 、カルパイン-2、ユビキチン化タンパク質に関して、Den+ES群はDen群よりも低値を示した。【考察】 筋萎縮の程度は非荷重よりも除神経でより大きく、電気刺激による筋萎縮予防効果も非荷重に比べて除神経で高かった。また、除神経による筋線維横断面積の減少と萎縮予防効果は前脛骨筋に多く含まれるタイプIIB線維において顕著であった。本研究では、除神経と非荷重の両方においてカルパイン系の発現が増加したため、カルパイン系は除神経と非荷重における筋萎縮に影響を及ぼしたと考えられる。しかし、ユビキチン化タンパク質の発現は除神経でのみ増加しており、除神経において筋萎縮の程度が大きくなったことにはユビキチン・プロテアソーム系の関与があると考えられる。ユビキチン・プロテアソーム系は骨格筋の筋萎縮において主な作用をするとされているため(Stewart,1999)、カルパイン系よりも筋萎縮を強く引き起こしたと考えられる。また電気刺激によって除神経群の筋萎縮を抑制できたのは、除神経でのみ増加したユビキチン化タンパク質の発現を電気刺激が抑制できたためであろう。【理学療法学研究としての意義】 筋萎縮が生じる原因によって影響を受けやすい筋線維とタンパク質分解系が異なるため、最適な刺激条件を選択する必要性が示唆された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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