理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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固定法の違いが等尺性膝伸展筋力測定に与える影響について
牛山 直子長崎 明日香百瀬 公人
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p. Ab1303

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抄録
【はじめに、目的】 筋力測定時に最大筋力を測定するためには被験者の体の固定が必要と思われる。膝伸展筋力測定時の被験者の体の固定については、上肢把持や背もたれの使用、大腿、骨盤、体幹固定の有無などによる比較研究が行われている。Mendlerは上肢把持と背もたれ及び大腿カフの固定を最大固定とした時の筋力を100%とすると、固定なしの場合は70%、上肢把持のみでは90%の発揮となり、固定なしと最大固定時の間には有意差が認められたが、上肢把持のみと最大固定の間では有意差が認められなかったと報告した。Richardは上肢把持に背もたれを使用すると上肢把持のみより有意に筋力が5%ほど高いと報告した。HartとHantenは背もたれに被験者の骨盤・体幹を固定した場合としない場合の比較を行ったが両者の研究結果は異なっている。このように、先行研究からはどの程度被験者を固定すれば最大筋力が測定できるのか不明である。そこでこの研究では、固定なし、大腿固定のみ(以下大腿のみ)、上肢把持のみ(以下上肢のみ)、上肢把持と大腿固定(以下上肢大腿)、上肢把持と大腿固定と背もたれに骨盤・体幹固定(以下最大固定)の5条件の固定方法で比較し、固定による最大等尺性膝伸展筋力発揮の違いを明らかにすることを目的とする。【方法】 対象者は20~40歳の健常成人27名、除外基準として現在測定下肢または腰に痛みのあるもの、1年以内に測定下肢の膝関節、大腿部の外傷既往があるものとした。検者は経験17年目の理学療法士1名、全ての測定を同一検者が行った。測定器機は 等尺性筋力測定器GT-330(OG技研)を使用。測定項目は効き脚の最大等尺性膝伸展筋力、測定条件は固定なし、大腿のみ、上肢のみ、上肢大腿、最大固定の5条件とした。測定姿勢は股関節屈曲90度座位、膝関節屈曲60度、センサは下腿遠位前面に下腿軸に垂直にあて、各条件で位置が同一になるようレバーアームを設定。最大固定以外の条件では背もたれは使用せず行い、測定中は体幹を正中位に保ち、殿部が挙上しないよう指示。上肢は上肢把持の場合椅子横のバーを把持、把持なしでは胸に組むよう指示した。測定手順は練習セッションとして測定日前に最大収縮の事前練習を行った。同一被験者の測定は1日で行い、1条件につき5秒間の最大収縮を2回、30秒の休憩を挟んで実施。条件間の休憩は10分、測定順はランダムとした。測定中激励のかけ声をかけた。測定中は被験者、検者とも筋力値をみないよう盲検化した。また測定中痛みがあったら中止するよう説明した。データ分析には2回測定の最大値を使用し、統計処理として反復測定の分散分析、事後検定にTukey検定を行った(p<0.05)。また最大固定に対しての各条件の筋力値の割合を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者には研究の目的及び測定内容を説明し、参加の同意を得た。また、本研究は富士見高原医療福祉センター倫理審査委員会の承認を得た。【結果】 対象者は27名(男性12名、女性15名)、年齢は27.6±4.8歳、身長164.4±8.1cm、体重60.4±10.1kg、握力右43±9kg、左38.7±9.1kgであった。各条件の筋力値と最大固定に対する各条件の筋力値の割合は、固定なし371.7±119.7N 、54%、大腿のみ465.2±147N、68%、上肢のみ647.0±211.8N、94%、上肢と大腿647.1±222.3N、94%、最大685.9±231.8Nであった。反復測定の分散分析とTukeyの事後検定の結果、固定なしと大腿のみは有意に他3条件より筋力値が低かった(p<0.01)。固定なしと大腿のみの間では有意に固定なしが低かった(p<0.01)。上肢のみ、上肢大腿、最大固定の3条件間には有意差はなかった。【考察】 固定なし、大腿固定のみの場合は他条件と比べ有意に筋力が低く、最大固定時の68%以下の筋力発揮となっており固定が不十分であることが明らかとなった。上肢のみ、上肢大腿の場合は最大固定と比べ有意差がなかったため、上肢把持すれば最大固定とほぼ同等の筋力が測定できるといえる。背もたれや体幹、大腿を固定するバンドがなくても上肢で椅子またはベッドを把持すれば最大筋力の94%程度の測定が可能であることがわかった。固定なしや大腿のみの固定で測定を行った場合は最大筋力が測定できず、筋力測定の妥当性に問題があると思われる。筋力がある程度強い対象者の測定では、簡易的だが妥当な方法として最低でも上肢把持の必要性が明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】 客観的な筋力測定の方法として、等尺性筋力測定器を使用して被験者を椅子に固定して測定する方法や、徒手保持型筋力測定器を使用してベッド端坐位で被験者の固定なしで行う方法などが提示されている。今回の研究結果から、筋力がある程度強い対象者においては、膝関節屈曲60度での測定では最低でも上肢把持をしないと最大筋力を測定できず、妥当な筋力測定が行えないことが明らかとなった。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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