理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
急性期軽症CVAにおける自宅復帰、転院者のFBSカットオフ値の検討
小山内 大地佐藤 義文青山 誠
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キーワード: 急性期, 軽症CVA, FBS
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p. Ba0290

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抄録

【はじめに、目的】 当院ではCVAを発症し、初回評価時の下肢Brunnstromstage(以下Br-stage)IV以上の患者様に対して包括的な評価を行い、データべース化し、患者様の全体像を把握し、スムースに自宅復帰できるよう介入している。BergらによりFBSを用いた急性期脳血管障害患者を対象とした研究では、発症後4,6,12週の平均得点で、家庭復帰45.0~45.3点、一般病院からリハビリテーション病院へ転院27.3~32.9点との報告がある。一方でFBSの下位項目やTUGにおける、片麻痺患者様の転帰先に関する報告はない。本研究目的は急性期における軽症CVA患者様の自宅復帰、転院者のFBS、TUGを比較検討し、臨床的に有用な指標になるかどうかと、カットオフ値を調査することである。【方法】 対象者は2010年6月~2011年9月の間に、当院の脳神経外科に入院し、脳梗塞、脳出血、脳幹梗塞、脳幹出血の診断を受けた者で初期評価時、下肢BrunnstromstageIV以上の患者様で、当院から直接自宅退院した者を自宅群(男性26名、女性13名、平均年齢67.1±14.1歳)、回復期病院などに転院した者を転院群(男性14名、女性7名、平均年齢67.6±12.8歳)とした。平均在院日数は自宅復帰群20.3±12.4日、転院群30.7±18.5日であった。検討項目はBr-stage(下肢)、感覚障害、FBS(総合、下位項目)、TUG(患側回り)、FIM(総合、運動項目、認知項目)とした。統計学的処理は自宅群、転院群におけるFBS、TUGの得点の比較をそれぞれMann-WhitneyのU検定、対応のないt検定を用い、有意水準は危険率5%未満とした。また、FBSでのカットオフ値を算出するため、ROC曲線を用いて検討を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院の倫理委員会の規定に従い、対象者には本研究の目的、評価内容について説明を行い、同意を得た。【結果】 自宅復帰群、転院群の2群間で統計学的に有意な差がみられた項目は在院日数(p=0.01)、感覚障害、FBS総合(自宅群53.9±4.1点、転院群42.9±14.0点、p=0.0005)、FBS下位項目(上肢前方到達p=0.03、Mann肢位p=0.009、片脚立位p=0.004))、FIM(総合、運動項目)であった。TUGは両群間で有意差はなかった(自宅群11.3±7.9秒、転院群12.5±4.9秒、p=0.66)。また、FBS総合でのカットオフ値は54点(感度0.80、特異度0.80、オッズ比16.8)であった。下位項目でのカットオフ値は上肢前方到達4点(感度0.76、特異度0.61、オッズ比5.33)、Mann肢位4点(感度0.76、特異度0.69、オッズ比7.50)、片脚立位4点(感度0.76、特異度0.76、オッズ比11.11)であった。【考察】 研究結果より、急性期の軽症CVA患者様の転帰先を決定する際のカットオフ値としてFBS総合54点、下位項目では上肢前方到達、Mann肢位、片脚立位とも4点が臨床的に有用な指標となることが示唆された。FBS総合でカットオフ値が先行研究より高かった理由は、今回は軽症CVA患者様を対象としたことで、バランス能力がより良く反映されたことや、在院日数の違いなどが影響していると予想される。FBS下位項目では3つすべてが満点を示していることから、自宅退院に際してはより高いバランス能力が必要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 急性期における軽症CVA患者様の自宅退院の一つの指標としてFBS総合得点では54点、下位項目では上肢前方到達、Mann肢位、片脚立位ともに4点がカットオフ値になることが示唆された。

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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