理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
痙直型両麻痺児に対する短下肢装具とゲイトコレクターを用いた歩行時における表面筋電図による比較
井上 潤一今田 健
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p. Ba0962

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抄録
【はじめに、目的】 痙性を伴った脳性麻痺児の歩容は,股関節内転・内旋・屈曲,膝関節屈曲,内反尖足位を呈することが多い。それらの患児に対し,早期より尖足歩行の改善・関節可動域の維持,改善を目的としたプラスチック製または支柱付の短下肢装具(以下,SLB)を作成してきた。しかし実際は,成長とともに足部の内反が著明になり,歩容の悪化が避けられないことを多く経験した。ゲイトコレクター(以下,GC)は,足部底背屈の調整に加えてリンクバーおよび内外旋制御バーにより従来のSLBでは,コントロールできなかった足部の内外反を調整可能にした今までにない装具である。股関節内転,膝関節屈曲,足関節尖足が著明で,歩行時に尖足のため踵接地が困難であった痙直型両麻痺の症例に対してゲイトコレクターの使用を試みたところ,従来SLBと比べ歩行中の静止が行い易く,装着後裸足歩行でも足底接地が可能になるなど下肢の関節可動域の改善も認められた。従来使用してきたSLBと比べこのゲイトコレクターがなぜこのような効果を示すのか,表面筋電図(以下,EMG)を用いた定量的な検討を試みた。【方法】 痙直型両麻痺児2例(男児,8.0±1.4歳.いずれもGMFCSレベルII)に対して3通りの5メートルの直線歩行を行い,その際の筋活動を計測し,比較した。歩行様式は裸足,SLB装着(以下SLB歩行),GC装着であった。各歩行様式を4回ずつ実施し,階級幅10%で正規化した後,加算平均した。加えて,歩行中における各筋の平均筋活動量を標準偏差と併せて算出した。被検筋は,大臀筋,ハムストリング,大腿直筋,下腿三頭筋とし,EMGシステムとしてkm-818MT(メディエリアサポート社)を使用した。電極はブルーセンサーN-00S(Ambu社製)を十分な皮膚の前処理の後に貼付した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施された.対象となる患児およびその保護者に対し,本研究への参加は自由意思に基づいていること,いつでも中断できること,これらを含めた本研究への参加の可否により,通常の治療において何ら不利益を受けることはないことを十分説明し,同意を得たのち実施した.【結果】 2例とも裸足歩行時,SLB歩行時と比較しGC歩行では筋電図の振幅幅が狭まり,筋活動も減少した。以下SLB歩行とGC歩行との筋電図おける筋活動量の比較を記載する。ケース1:ハムストリング57.7%減 大臀筋37.3%減 大腿直筋21.1%減 下腿三頭筋7.7%減 ケース2:ハムストリング0%減 大臀筋24.1%減 大腿直筋11%増 下腿三頭筋26.8%減【考察】 ゲイトコレクターは1996年に英国の医療技術者David Hart氏により開発された装具で,本邦では2003年からハートウォーカージャパン社により国内での生産が始まった。構造は矯正靴(Piedro社製)と左右の足の外側に対して垂直に取り付けられたリンクバーからなる。この部品で構成される断面は四角形でこの断面を保ちながら部品の取り付け位置を上下にスライドさせて調整を行う。この調整で足部の内外反をコントロールし,背屈調整は足関節部に取り付けられたカムストップという装置で行う。また足部の内外反をさらに制御するため,必要に応じて内外旋制御バーセットを使用する。これらの構造より,痙直型両麻痺児の特徴的な立脚初期の尖足歩行で行われる距骨下関節(以下ST関節)回外位接地が矯正され回内位での接地が可能となる。ST関節回内位は立脚初期で下腿を内旋させ中期以降の立脚相では身体重心が前方へ移動することから下腿内旋に伴う大腿骨の外旋と後方回旋が起き,骨盤の前方回旋と後傾が起きる。ST関節における回内位は立脚初期に踵接地後の衝撃吸収をする回内現象が促されるため,踵接地の時間的停滞を生じ,足部底屈筋群のストレッチ効果も期待出来ると推察した。EMGの結果よりGC歩行と比較して従来のSLB歩行では全般的に高い筋活動が認められた。GC歩行では,明らかに筋活動が減少した。以上より,GCを用いた歩行では,従来のSLBを用いた歩行と比較して,過剰な筋活動が抑えられ,関節可動域の維持拡大を図りやすく,エネルギーの高効率化に基づいた歩行が可能であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 ゲイトコレクターは,従来の短下肢装具では矯正できなかった内外反を調整できる刷新的な装具である。今回の研究より,従来広く用いられてきたSLBと比較して異なる筋活動を示すことを,EMGを用いて定量的に確認できた。足関節の内反尖足に対して従来の短下肢装具だけでなく,客観的な事象に基づいた選択肢をもつことは,患児のリハビリテーションにおいて有益な報告である。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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