理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
急性期脳卒中患者の歩行予後予測尺度の基準関連妥当性の検討
門叶 由美藤野 雄次播本 真美子高石 真二郎齋藤 友美大塚 由華利西元 淳司細谷 学史前島 伸一郎
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p. Bb0531

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抄録
【目的】 近年,急性期病院や回復期病院等の病院間での役割分担が確立されつつあり,当院のような急性期病院では在院日数の短縮化が図られている.そのため,急性期病院では脳卒中発症後早期から転院調整が進められるのが現状である.並行して脳卒中発症後早期から十分なリスク管理のもと積極的なリハビリテーションを行うことが推奨されており,当院においても発症から約2日で理学療法(PT)を開始し,早期に日常生活動作の向上,社会復帰を目指している.歩行獲得の有無については転帰先を決定する際の重要な要因の一つであり,急性期病院では早期から歩行の予後を予測することが求められる.そこで我々は急性期病院退院時の歩行可否に関する尺度として新たに判別式を作成し,その結果,高い判別的中率を得た.しかし,新たに作成された尺度は基準関連妥当性の検証が望まれているが,我々が作成した判別式と外的基準との関連については明らかではない.そこで本研究では,判別式の基準関連妥当性について検討することを目的とした.【方法】 対象は2007年5月から9月までに当院脳卒中センターに入院し,PTを施行した脳出血,脳梗塞患者137例とした.対象者の内訳は,年齢が67.5±12.1歳(平均±SD),性別が男性91例/女性46例,疾患が脳出血46例/脳梗塞91例,下肢Brunnstrom Recovery Stageは1:20例/2:2例/3:21例/4:4例/5:52例/6:38例,麻痺側が右61例/左69例/両側7例であった.PT開始病日は発症から2.5±1.1日,PT実施期間は16.9±13.6日,入院日数は19.0±14.4日であった.なお,脳卒中再発例,死亡例,アルテプラーゼ静注療法施行例,くも膜下出血例,テント下病変例は本研究から除外した.我々が作成した判別式はTrunk Control Test(TCT),脳卒中運動機能障害重症度スケール(JSS-M),疾患(脳梗塞/脳出血),年齢の4変数と歩行の予後との間に非常に高い関連性(正準相関0.856)を認めており,判別係数の平均値は歩行自立1.884,歩行非自立-1.432である.方法として,判別式で用いるTCT,JSS-M,疾患,年齢の4変数,外的基準として脳卒中の臨床試験で国際的にも使用されている評価スケールであるModified Ranking Scale(mRS)を発症後5日以内に評価した.判別係数は判別式y=0.034×TCT-0.044×JSS-M+0.69×疾患-0.019×年齢-0.099(定数)に4変数を代入して算出し,基準関連妥当性について判別係数とmRSの関連を検討した.統計ソフトはSPSS ver.16.0を使用した.統計処理にはSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準を5%未満とした.【説明と同意】 対象者には事前に本人もしくは家族に本研究の内容を書面にて説明し同意を得た.【結果】 判別係数は0.028±1.925点であった.mRSは1:7例/2:13例/3:18例/4:22例/5:77例であった.判別係数とmRSとの間に有意な負の相関があった(r=-0.766,p<0.05).【考察】 歩行予後予測尺度として作成した判別式から得られた判別係数とmRSとの間に相関があることが明らかになった.以上のことから,我々が作成した判別式の基準関連妥当性が確認され,歩行予後予測尺度として有用であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 我々が作成した急性期病院退院時の歩行予後予測尺度の臨床応用に際して,基準関連妥当性を検証することによってその有用性が示唆されると考えられる.また,短期間で歩行の予後予測が可能となり,それに対応したPTプログラムの立案に役立つと考えられる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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