理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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長下肢装具の処方時期と歩行獲得の関連性
菅原 健太郎大西 徹也井上 和之吉尾 雅春
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p. Bb0769

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抄録

【はじめに、目的】 脳卒中ガイドライン2009にて十分なリスク管理のもと早期リハを行うことはグレードAとして推奨され、早期リハ開始時期や歩行訓練開始時期が年々早期化されている。今回、当回復期リハ病棟での脳卒中患者における長下肢装具(以下、KAFO)を活用したリハアプローチと歩行再獲得の関連について検討する。【方法】 対象は2009年1月1日~2011年6月30日までに当院へ入院した脳卒中患者304名のうち、KAFOを処方された38名とした(男性18名、女性20名、年齢71.2±11.0歳、脳出血19名、脳梗塞17名、SAH2名)。38名のうち入院から2週間以内にKAFOが処方された群(以下、2w以内群)と2週間以上経過して処方された群(以下、2w以上群)の2群に分類し、両群の歩行再獲得率(監視レベル以上)を算出した。その他、発症から入院までの期間、入院からKAFO処方までの期間、入退院時FIM、在棟日数、自宅復帰率の情報も収集した。歩行再獲得率の統計解析はχ2検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 データ収集においては後方視的研究であるためインフォームドコンセントは得ていないが、個人を特定できるような項目の収集は避け、データの取り扱いには注意を払った。【結果】 2w以内群は38名中18名であり(男性11名、女性7名、年齢68.2±10.9歳)、脳出血9名(視床4名、被殻4名、脳幹1名)、脳梗塞8名(心源性4名、アテローム血栓性2名、脳幹2名)、SAH1名、歩行再獲得率50%(視床2名、被殻2名、脳幹出血1名、心源性3名、脳幹梗塞1名)であった。また、発症から入院までの期間34.0±15.1日、入院からKAFO処方までの期間6.6±3.9日、入院時FIM49.7±23.6点(移動1.3±0.7点)、退院時FIM67.6±29.0点(移動3.9±1.8点)、在棟日数139±32.3日、自宅復帰率50%であった。2w以上群は38名中20名であり(男性7名、女性13名、年齢74.2±10.7歳)、脳出血10名(視床5名、被殻3名、小脳1名、外傷1名)、脳梗塞9名(心源性5名、アテローム血栓性2名、脳幹2名)、SAH1名、歩行再獲得率10%(心源性1名、アテローム血栓性1名)であった。また、発症から入院までの期間41.7±18.5日、入院からKAFO処方までの期間46.2±30.2日、入院時FIM40.7±18.2点(移動1.1±0.4点)、退院時FIM60.9±24.0点(移動2.3±1.4点)、在棟日数138±30.4日、自宅復帰率35%であった。歩行再獲得率は2w以上群に比べ、2w以内群の方が有意に高値を示した(P<0.05)。【考察】 近年、早期からKAFOを用いることは実用歩行を獲得するうえで有効なアプローチとされている。今回の調査にて、当回復期リハ病棟に入院して2週間以内にKAFOを処方することが歩行を再獲得しやすいとする有効な結果が得られた。また、FIM移動項目にも関連し、2w以内群の改善度の方が高い傾向にあった。急性期病院からの転院時期が早まるなかKAFOを早期に処方し、立位や歩行訓練へ取り掛かることが歩行再獲得に向けて重要であり、自宅復帰へとつながる有効なアプローチの1つになっていると考える。【理学療法学研究としての意義】 脳卒中患者に対して早期からKAFOを用いた訓練の有効性は周知されているが、未だ作製基準は施設によって様々で、統一されたものはない。装具使用に関する誤った概念、あるいは経験不足などが原因で装具療法をためらう傾向も生じているが、今回あらためて早期からKAFOを活用するリハアプローチの有効性を示すとともに、これから益々早期処方に向けた取り組みが必要と思われた。

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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