理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
脳性麻痺児のボツリヌス治療の継続状況
─整形外科手術との関連について─
岩島 千鶴子脇口 恭生高澤 麻理絵本吉 美和松波 智郁鈴木 奈恵子廣田 とも子横松 加奈子岸本 久美
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p. Bb1168

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抄録
【目的】 ボツリヌス治療は、2001年に痙性斜頸を対象に適応承認されて以降、脳性麻痺の痙縮治療に取り入れられ、2009年小児脳性麻痺の下肢痙縮に、2010年に上下肢痙縮にも適応承認されるにつれ、多くの施設で開始される現状がある。当センターでは、2004年8月から神経内科医師により重症心身障害児(以下、重症児)の痙縮治療にボツリヌス治療が開始され、その評価に理学療法士が参加してきた。当初は、姿勢保持機能維持・改善、介助負担軽減などを目的にGross Motor Function Classification System(以下、GMFCS)レベル5の重症児に対して実施してきたが、下肢痙縮に適応承認されて以降、運動機能維持・改善の余地のあるレベル1~4の脳性麻痺児へ治療が増えてきている。当センターでは脳性麻痺児の整形外科手術も行っており、今回、ボツリヌス治療の継続状況と整形外科手術との関連について調査し、今後のボツリヌス治療の方向性の検討を目的とした。【方法】 対象は2004年8月から2011年9月までの間、当センターにてボツリヌス治療を実施した125名とし、性別は男児73名、女児52名、初回開始時の平均年齢は7.2±4.9歳であった。ボツリヌス治療開始時の年齢、GMFCSレベル、施行回数、治療目的、治療部位、継続状況を後方視的に調査した。【倫理的配慮】 本研究は後方視的調査であり、所属長の承認を得て実施し、個人を特定できる情報は使用していない。【結果】 125名中GMFCSレベル5の重症児が97名と多く、レベル1~4の脳性麻痺児は28名(レベル4は6名、レベル3は9名、レベル2は8名、レベル1は5名)で、初回開始時の平均年齢は6.8±4.0歳であった。施行回数はレベル5で1~27回、平均5.4±5.1回であったが、レベル1~4では1~14回、平均2.6±2.8回であった。治療目的は、レベル5で過緊張軽減による姿勢保持機能維持・改善、おむつ替えのしやすさ・抱っこしやすさなどの介助負担軽減などが主であり、レベル1~4では立位姿勢・歩行改善や上肢機能改善など運動機能改善を目指すことが多かった。治療部位はレベル5で97名中77名(79.4%)が頸部・体幹・下肢など全身にわたるものであったのに対し、レベル1~4では28名中24名(85.7%)が下肢のみ、残り4名(14.3%)が上肢のみと限局していた。継続状況はレベル5で97名中42名(43.3%)が断続的でも継続していたが、レベル1~4では28名中6名(21.4%)のみであった。整形外科手術等その他の治療法との関連では、レベル5で97名中17名(17.5%)がボツリヌス治療前後に整形外科手術・選択的脊髄後根切断術・髄腔内バクロフェン投与療法等を実施しており、レベル1~4では28名中11名(39.3%)が前後に整形外科手術を実施していた。整形外科手術の術関節は、レベル5で股・膝関節、レベル3・4では股・膝・足関節、レベル2で膝・足関節、レベル1で足関節と運動機能により異なった。【考察】 ボツリヌス治療は、神経筋接合部でアセチルコリン放出を阻害し神経筋伝達を遮断することで局所的に筋肉を弛緩させる治療法である。1~2歳の低年齢から治療可能であり、治療部位の変更が容易で、比較的簡便で安全に実施可能な治療法である。一方、効果が一時的なため、反復投与が必要であり、反復投与を繰り返す内、治療効果が曖昧になりやすい現状もある。今回の調査でGMFCSレベル1~4はレベル5と比べて平均施行回数が少なく、治療部位も下肢のみ・上肢のみと限局していた。また、前後に整形外科手術を実施する割合も高く、手術部位も運動機能により異なっていた。脳性麻痺児は生来もつ過緊張の中で動くため、成長・発達過程の中で筋短縮を起こし、変形・拘縮に移行しやすい。そのため、年齢・運動機能・社会状況に応じた治療法の選択が必要となる。運動機能の維持・改善がみこまれるレベル1~4の脳性麻痺児に対しては、低年齢から治療可能なボツリヌス治療で過緊張をおさえ、必要に応じて整形外科手術に移行するという流れが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 ボツリヌス治療の継続状況を調査することで、その他の痙縮治療への移行を含めた治療継続の目安が明らかとなった。今後、脳性麻痺児の痙縮治療への理学療法士の関わり・方針が明確となる点で意義があると考えられた。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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