理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
重度脳性麻痺患者における骨盤側傾が脊柱側弯と風に吹かれた股関節変形の関連性に及ぼす影響について
大須田 祐亮堀本 佳誉高田 千春近藤 健鈴木 敦史樋坂 悠佳門間 美和小塚 直樹津川 敏
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キーワード: 脳性麻痺, 骨盤側傾, 変形
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p. Bb1169

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抄録
【はじめに,目的】 歩行移動が不可能な重度脳性麻痺患者においては,脊柱側弯の凸側が風に吹かれた股関節変形(以下,WHD)の両下肢が倒れた方向と反対側に見られやすいことがPorterらによって報告されているが,両者の重症度についても関連性が存在するかという点についてはまだ明らかにされていない.また,両者の関連性について骨盤側傾が関与する可能性についても言及されているが,定量的評価を用いた検討は行われていない.そこで本研究では,重度脳性麻痺患者における脊柱側弯とWHDとの関連性を明らかにすること,両者の関連性に骨盤側傾が及ぼす影響について検討することを目的とした.【方法】 粗大運動機能分類システムレベル4および5に含まれる重度脳性麻痺患者30名(男性18名,女性12名,年齢40.7±15.1歳)を対象とした.定期検査として放射線技師が撮影を行った背臥位X線画像上から脊柱側弯の評価指標としてCobb角を計測し,骨盤側傾の評価指標として骨盤側傾角度を計測した.なお,骨盤側傾角度は第1胸椎と第5腰椎の中軸を結んだ線と両腸骨稜を結んだ線に対する垂線のなす角度から算出した.またWHDの評価指標としてGoldsmith Index(GI値)を計測した.GI値は2回計測を行い平均値を算出した.まず,脊柱側弯とWHDの関連性を検討するためにCobb角とGI値についてピアソンの相関係数を求めた.次に骨盤側傾角度を制御変数として偏相関分析を行い,相関係数にどのような変化が認められるか検討を行った.なお,Cobb角については左凸の弯曲を正の値,右凸の弯曲を負の値とし,骨盤側傾角度については高位側が左側のものを正の値,右側のものを負の値として扱うこととした.またGI値については左側への偏位を正の値,右への偏位を負の値として扱うこととした.統計処理はIBM SPSS Statistics 19を用いて行い,有意水準は5%とした.【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は北海道済生会西小樽病院倫理委員会の承認(承認番号10-07)および札幌医科大学倫理委員会の承認(平成23年2月9日付)を得て実施した.すべての対象者に対する研究概要の説明,研究協力の依頼は対象者の法定代理人に対して行うこととし,同意書に法定代理人の署名・捺印を得た.【結果】 Cobb角とGI値との間に有意な相関が認められた(r=-0.853, p<0.0005).しかし,骨盤側傾角度を制御変数として偏相関分析を行った結果,Cobb角とGI値との間に有意な相関は認められなかった(r=-0.208, p=0.278).【考察】 Cobb角とGI値との間に認められた有意な相関は相関係数の値から強い負の相関になることが示され,脊柱側弯の凸側はWHDの両下肢が倒れた方向と反対方向に生じるという先行研究と同様の関連性が認められた.加えてCobb角が高値を示すほどGI値も高値を示すという両者の重症度についても関連性が認められることが示唆された.しかし,骨盤側傾角度を制御変数とした偏相関分析においてはCobb角とGI値との間に有意な相関は認められなかったことから,Cobb角とGI値との間に認められた有意な相関関係は,骨盤側傾角度の影響を強く受けて間接的に示された疑似相関の関係であったことが示唆された.骨盤は脊柱および大腿骨と関節する部位であり,骨盤側傾が存在する場合には,様々な解剖学的な要因や運動力学的な要因から身体各部位の変形につながる力がもたらされるため,脊柱側弯とWHDの関連性に骨盤側傾が影響を及ぼすことが考えられた.このことから重度脳性麻痺患者の変形に対してしてリハビリテーションを実施する場合や全身的な姿勢管理を行う場合には,骨盤側傾の状態も併せて評価しながらアプローチすることが必要であると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 重度脳性麻痺患者における脊柱側弯とWHDとの関連性およびその関連性に骨盤側傾が影響を及ぼすことを明らかにできたことは,重度脳性麻痺患者の変形に対してリハビリテーションを展開していく際に,局所的視点のみならず全身的な視点でアプローチする必要性が存在することを示す上での根拠となり,また変形への対策を講じる上で具体的な示唆を提供することができると考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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