抄録
【はじめに、目的】 シャルコー・マリー・トゥース病(以下, CMT)は, 末梢神経が障害される遺伝性疾患である. CMTは症状が軽度の時期では, 仕事や学業を行うことは可能である. しかし, 症状に伴い筋力低下や筋萎縮が進行すると日常生活に支障をきたす. この対策としてCMT患者はトレーニング行うことが多い. しかし, CMT患者のトレーニング効果は不明な点が多い. また, CMT患者の筋は疲労しやすい特徴があり, 筋疲労特性については表面筋電図を用いた先行研究がある. そこで本研究の目的は, CMT患者の筋疲労回復特性を明らかにし, 安全なトレーニング作成の一助とすることである.【方法】 対象者は13名のCMT患者[年齢: 42.5±17.2歳. 性別: 女性4名, 男性9名. 病型: CMT 1 (6名), CMT 2 (2名), CMT X (1名), 不明 (4名).]である. CMT患者の筋疲労, 筋疲労回復特性を客観的, 主観的に測定した. 対象筋は利き手の上腕二頭筋とし, アームカールベンチにて肢位を統一した. また, 全測定を通し体重の5%の重錘バンドを前腕遠位部に負荷した. まず前疲労測定として, 5秒間の等尺性収縮を30秒間の休憩をはさみ2回実施した. 次に, 筋疲労誘発課題として, 肘関節の屈曲, 伸展を10回連続で実施した. 筋疲労測定は, 筋疲労誘発課題後に5秒間の等尺性収縮として実施した. 最後に, 筋疲労回復測定として, 筋疲労誘発課題後から30, 60, 90, 120, 240, 480秒後に5秒間の等尺性収縮として実施した. 前疲労と筋疲労, 筋疲労回復測定時に表面筋電図を用いて筋電位を導出した. 分析として, 得られた筋電位を周波数解析(パワースペクトラム)して中央パワー周波数(Median Power Frequency, 以下MdPF)を求めた. 筋疲労は対象者3名から, 筋疲労回復特性は全対象者のMdPFの変化により検討した. また, 筋疲労回復特性の主観的な測定として, Borgスケールを疲労の評価に, Visual Analog Scaleを痛みの評価として実施した.【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき, 対象者に対して研究の目的を説明し, 同意を得た上で研究を行った.【結果】 客観的な測定結果では, 前疲労と比較し筋疲労測定でのMdPFは低下を示した. また, 主観的な測定結果では, Borgスケールは3名中2名が高値を示し, 1名が低値を示した. 筋疲労回復測定では, 240秒にて13名中9名のMdPFが回復を示した. 前疲労と480秒でのBorgスケールとMdPFは, 480秒にて対象者7名のMdPF は回復を示した. 対してBorgスケールでは, 同対象者中1名のみ低下が認められた.【考察】 筋疲労誘発課題により対象者の上腕二頭筋に筋疲労が生じた. 筋疲労後, 240秒にて最も多くの対象者の筋疲労回復が認められた. よって, 上腕二頭筋のトレーニングでの休憩時間は240秒と考える. また, 客観的な筋疲労回復と主観的な筋疲労回復は一致することが少ないため, 口頭にて筋疲労回復の確認は困難であると考える.【理学療法学研究としての意義】 CMT患者の上腕二頭筋の筋疲労回復特性から, 休憩時間の設定が行えることや口頭で筋疲労回復を確認することが困難であることが分かった. よって, CMT患者の安全なトレーニング作成の一助として有用である.