理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
筋ジストロフィーの短期入院サービスマニュアル改訂について
─複数回利用した在宅療養36名の使用状況の検討─
横道 信之福永 浩幸田中 正則
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p. Bb1429

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抄録
【はじめに、目的】 当院では筋ジストロフィー患者の在宅支援として平成14年度より2泊3日の短期入院サービス「筋ジスポートサービス(以下PS)」を実施している。PSとは当院より遠方に在住であったり、就学・就業していたりする、筋ジストロフィーの身体的理由等で頻回な外来検査受診が困難な在宅療養中の筋ジストロフィー患者に対して、定期的にクリティカルパスを利用して出来るだけ負担を少なくし入院による検査や療養指導をきめ細かく行うことを目的としたサービスのことである。理学療法部門の役割は運動機能の評価と在宅での運動や体操の指導や介助方法、補装具の適合判定などである。その評価内容の不足や評価基準の解りにくさ、記載漏れ等が指摘され、平成20年度に統一した評価表の作成とマニュアルによる指導の標準化を開始した。平成21年度に作業療法部門が開設されたのを契機にPS運用を見直した。それから2年が経過したため今回マニュアルを使用して得られた身体機能のデータを分析し、改訂版を作成したので報告する。【方法】 平成21年度から平成23年度上半期までのPSを複数回利用した36名を対象とした。マニュアルの使用によって得られた身体機能の評価の中からステージ(筋ジストロフィー機能障害度分類)、徒手筋力(新・徒手筋力検査法 原著第7版)、咳の最大流量(cough peak flow:CPF)を用い複数回測定したデータの変化を分析しマニュアルの改訂版を作成した。【説明と同意】 本研究への参加は短期入院時に医師より研究の趣旨の説明を受け、同意を得た後に実施した。さらに、その結果等については当院の倫理規定に基づき個人情報が明らかにならないように配慮した。【結果】 PSののべ利用者は平成21年度47名、平成22年度53名、平成23年度上半期30名と増加していた。また、複数回利用した方は36名となった。筋ジストロフィー機能障害度のステージが変化した7名で四肢・体幹筋力が増加したのは6名、筋力が低下したのは1名であった。また呼吸機能ではCPFが増加したのは5名、低下したのは2名であった。筋ジストロフィー機能障害度のステージが不変であった29名で四肢・体幹筋力が増加したのは24名、筋力が低下したのは3名で筋力不変は1名で、筋力測定不能は1名であった。また呼吸機能ではCPFが増加したのは11名、CPFが低下したのは11名、CPFが不変は3名、CPF測定不能は4名であった。【考察】 サービス内容のマニュアル化により、複数回利用者数が増加したことは、筋ジストロフィー患者の在宅療養が継続可能になり、患者の医療費負担も軽減されQOLも維持されていると思われた。その結果、病期の進行が進まず四肢・体幹筋力や呼吸筋力が半年後の再評価で改善しているという予後予測を反する状況も現れた。今後は異なる検者による筋力測定でも差異が少なくなる様に検討することを最優先課題として、その上で四肢・体幹筋力と呼吸機能の改善・低下が「療養指導によるものか」「ホームプログラムによるものか」「日常生活上の問題か」など検討を加えたい。【理学療法学研究としての意義】 筋ジストロフィー患者の評価と指導をマニュアル化する意義は、専門病院での評価法・指導法を地域の医療機関や学校で利用することで、いかなる施設・関係者であっても患者に対する一定レベル以上の支援と指導を可能とし、在宅療養を推進することである。入院患者では病期の進行する中で運動機能が改善することにあまり遭遇しないが、在宅患者では一概にそうとは言い切れない。今回の改訂で四肢筋力測定を2名のセラピストで行う手順の再確認と、呼吸機能の詳細な評価を行うことで、筋ジストロフィー患者における動作遂行能力と四肢・体幹筋力と心肺機能の関係を明らかにして取り組んでいきたい。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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