理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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脳深部刺激療法におけるライフコーダを用いた評価の有用性
小林 美寿季南 隼人鈴木 寛之松浦 慶太
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p. Bb1437

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抄録
【はじめに、目的】 パーキンソン病(以下PD)に対する脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation;以下DBS)は2000年の保険適応以来、その手術件数は飛躍的に増加し、理学療法介入の場面も増加してきている。当院でも2008年より開始し、県内ではDBSによる治療が可能な唯一の施設となっている。パーキンソン病の評価はUnified Parkinsons Disease Rating Scale(以下UPDRS)が主に使用されているが、検査者の主観的評価の影響が大きく運動症状の変動の影響が反映できないという欠点がある。そこで今回、当院においてDBSを施行したPD患者に対して手術前後の評価にライフコーダを使用し、ライフコーダの有用性を検討した。【方法】 対象は視床下核脳深部刺激療法(以下STN-DBS)を施行したPD患者4名(男性1名,女性3名,平均年齢69±5歳,平均罹病期間14.3±7.0年,Hoehn-Yahr重症度分類on-period(以下on)stage2:4名,off-period(以下off)stage4:3名,stage5:1名)。評価項目はライフコーダGS(SUZUKEN製)にて運動量、歩数、運動強度推移から推測されるon時間(ライフコーダは2分ごとの運動強度を記録する。それを10分毎に積算し2.5以上をonと定義)を術前、術後1カ月と3カ月で測定。同時にL-DOPA換算量(以下LEDD),UPDRSを評価した。そしてこのライフコーダの評価とUPDRS評価(Part2、3)との比較検討を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者とその家族に本研究の趣旨を説明し同意を得た。【結果】 ライフコーダ評価時点のUPDRSにて、術前より改善を示している3例のうち全てのパラメーターが改善したのが1例。運動量、歩数の活動時間が改善したが、on時間が減少したのが1例。運動量、歩数の活動時間が減少したがon時間が延長したものが1例術後の改善が不十分な1例ではUPDRS、ライフコーダとも全てのパラメーターの結果が悪化していた。【考察】 STN-DBSはoff-periodの底上げ効果により運動症状の日内変動が軽減、on-periodの肩代わりにより内服量が減り、副作用が軽減するとされている。今回UPDRS評価とライフコーダ解析の結果は必ずしも一致しなかった。一致しない原因としては、日による変動の影響、術前後で動き方が変わったことなどが考えられる。過去の報告では薬効と運動量、歩数は概ね相関するという報告もなされている。しかし、同時に当てはまらない例があることも指摘されている。UPDRSはある1点の評価であるが、ライフコーダ解析は24時間評価であることから、さらに数日間の連続した客観的評価が可能になる。一方、ライフコーダのみの評価では実際の生活動作の状態、運動レベルの評価は困難である。よってそれぞれの利点を加味することでより、現実に即した評価を行うことが可能であると考える。また、術後の刺激調整もDBS患者にとっては重要である。DBS前後の身体機能、ADL能力をPTが適切に評価し、主治医、患者とともに相談し調節する必要があり、刺激調整は不定期に実施され、また時間を要するため主治医とリハビリスタッフ間の密な連携が必要である。当院では2008年より現在で12例実施しているが当院の特色として、DBS患者の平均在院日数は47.8±20.1日と長期の入院となっている。また手術場面においても担当セラピストが立会い、刺激における運動症状の変化を評価するなどリハビリスタッフのDBSに対しての介入が大きな意義をなしている。DBS患者に対してはPTが手術前後の状態を全般的に評価し、積極的な訓練介入をすることでDBSによって再獲得された身体機能を生かし社会生活を送れることにつながると考える。【理学療法学研究としての意義】 慢性進行疾患であるPD患者においては、DBSは身体機能レベルの再獲得できる手段である。DBS後の患者における理学療法の介入は、進行期PD症状による廃用の改善、外科的手術により再獲得したADLを社会生活において存分に発揮するにあたっては大きな意義をなしていると考えるため、PTが術前後の状態を詳しく評価することは重要で、そのための評価ツールを検討することで本研究の意義は大きいと考える。今後、より多くの指標からDBSにおける理学療法介入の効果を検討、評価ツールも検討していきたい。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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