理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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パーキンソン病の日常生活動作自立度に影響する因子の運動症状左右差による差異
遠藤 正裕山本 ともみ
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p. Bb1436

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抄録
【はじめに、目的】 パーキンソン病(PD)は、一側上肢または下肢の振戦や固縮から発症し、やがて両側に症状がみられ、進行しても病初期からの左右差が認められると言われている。進行度別のリハビリテーション(リハ)が推奨されているのが現状であるが、PDの運動症状の左右差について報告されたものは少ない。そこで、PDの日常生活動作(ADL)自立度に影響する因子が、運動症状の左右差によって異なるか検討を行った。【方法】 対象は、薬物療法とリハを併用している入院中のPD患者182名[男性71名、女性111名、平均年齢74.1歳(57~89歳)、Hoehn-Yahr stage(HYs)I:13名、II:36名、III:79名、IV:54名]とした。固縮、変換運動障害などのパーキンソン症状が右側に強く見られている群を右群(74名)とし、左側に強く見られている群を左群(108名)とした。評価項目は1.Functional Independence Measure(FIM)、2. Unified Parkinson's Disease Rating Scale (UPDRS運動項目)、3.スパイログラム:%VC、FEV1.0、4.口腔内圧:PEmax、PImax、5.10m歩行試験:秒、歩数、6.Frontal Assessment Battery(FAB)とし、2~5は同一験者が、1と6は各担当者が実施した。また、症状の日内変動が著明なものはOFF時間帯を避け評価を行った。右群の属性は、男性28名、女性46名、平均年齢74.8歳(60~89歳)、UPDRS運動項目の平均29.8点(5~59点)、HYsはI:4名(5.4%)、II:14名(18.9%)、III:31名(41.9%)、IV:25名(33.8%)であった。左群の属性は、男性43名、女性65名、平均年齢73.7歳(57~87歳)、UPDRS運動項目の平均28.0点(6~59点)、HYsはI:9名(8.3%)、II:22名(20.4%)、III:48名(44.4%)、IV:29名(26.9%)であった。各項目の結果は、SPSS ver.11.5 for Windowsを用い、従属変数をFIM運動項目、独立変数を、%VC、FEV1.0、PEmax、PImax、10m歩行の所要時間(10m秒)、10m歩行の歩数(10m歩数)とし、ステップワイズ法による重回帰分析を、右群、左群それぞれで行い、有意水準は5%未満とした。なお、検定は匿名化した上で行い、情報の漏洩防止に努めた。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者へは、ヘルシンキ宣言に則り院内の倫理規定に基づいて紙面を作製し、趣旨、内容、結果の取り扱い等について説明し署名にて同意を得た。【結果】 重回帰分析の結果、右群では、10m秒とFABが抽出され、重回帰式:FIM運動項目=68.140-1.395×10m秒+1.498×FABが構築された。その際、重相関係数Rは0.797、決定係数R2は0.635であった。左群では、10m秒と%VCが抽出され、重回帰式:FIM運動項目=77.464-2.206×10m秒+0.203×%VCが構築された。その際、重相関係数Rは0.687、決定係数R2は0.473であった。【考察】 右群は10m秒とFABのみが、左群は10m秒と%VCのみがFIM運動項目に影響を与えることが示された。両群ともに歩行能力の高さが重要であることが示唆されたが、右群のみでFABが、左群のみで%VCが抽出された。FABはセットの変換などの前頭葉機能のテストバッテリーであり、%VCは胸郭や肺の弾性収縮力や呼気筋力などにより規定される。そのため、右側の運動症状が強い症例に対しては協調変換運動練習が、左側の運動症状が強い症例に対しては、拘束性換気障害に対して有効とされている胸郭可動域練習が有効と考えられる。【理学療法学研究としての意義】 PD患者のADLトレーニングには、運動症状の進行度のみではなく、左右差にも着目してプログラムを立案することが重要である。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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