理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
特発性パーキンソン病患者における主観的疲労感と呼吸機能の関連
鈴木 良和上出 直人成田 香代子水野 公輔平賀 よしみ福田 倫也
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p. Be0018

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抄録
【はじめに】 パーキンソン病(以下,PD)患者の主観的疲労感は,身体活動量の低下(Garber,2011)やQOLの低下(Hideto,2011)に影響することが報告されている.一方,PD患者では呼吸機能が低下することも報告されている(和泉,1992).呼吸機能の低下は運動耐容能を低下させ,結果的に主観的疲労感の増大に繋がることが考えられるが,その関連は明らかとなっていない.本研究の目的は,PD患者における主観的疲労感と呼吸機能の関連を明らかにすることとした.【方法】 対象は外来通院中の特発性PD患者18例(男性6例,女性12例,年齢70.0±9.5歳, Hoehn and Yahr stage分類 I:1例,II:3例,III:7例,IV:7例,平均罹病期間6.9±4.0年)とした.主観的疲労度の評価には,日本語版Multidimensional Fatigue Inventory(以下,MFI)を用いた.MFIは,全般的疲労感,身体的疲労感,活動性の低下,意欲の低下,精神的疲労感の5つの下位項目で構成された質問紙で,各項目をそれぞれ4-20点,合計100点として主観的疲労感を評価する尺度である.なお,点数が高いほど主観的疲労感が高いことを示す.PDの運動症状の評価は,Unified Parkinson's Disease Rating Scale (UPDRS) Part3を用いた.UPDRS part3は108点満点で,症状が重篤であるほど高い点数を示す.呼吸機能評価として,呼吸筋筋力および咳嗽時最大呼気流速(PCF)を計測した.呼吸筋筋力はオートスパイロメーターを用いて最大吸気時口腔内圧(PImax)および最大呼気時口腔内圧(PEmax)を各3回ずつ計測した.PCFはピークフローメータにフェイスマスクを接続した機器を用い,最大咳嗽時の呼気流速を3回測定した.統計処理は,年齢およびUPDRS part3の合計点を調整変数とし,PImax平均値, PEmax平均値, PCF平均値を独立変数,MFIの合計点または5つの下位項目をそれぞれ従属変数とするstepwise法重回帰分析を行った. なお,有意確率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究内容は,北里大学病院倫理委員会で承認を得て実施した.対象には事前に研究の内容を書面および口頭で説明し同意を得た.【結果】 PD患者18例における,各測定項目の平均値は,UPDRS part3は23.2±14.4点,MFIは63.6±13.2点,PImaxは35.8±20.5 cmH2O, PEmaxは42.8±23.6 cmH2O, PCFは253.7±69.7 l/minであった.重回帰分析の結果,MFI合計点と各呼吸機能に関連は認められなかった.一方,下位項目のうち活動性の低下において,PCFと統計的に有意な関連性が認められた(B=-0.03,t=-2.52, p<0.05).すなわち,PCFが低下するほど活動性の低下が認められた.なお,全般的疲労感,身体的疲労感,意欲の低下,精神的疲労感においては,呼吸機能との統計的有意な関連は認められなかった.【考察】 主観的疲労感における活動性の低下において,年齢および運動症状を除いてもPCFが有意な関連因子として抽出された.すなわち,PD患者におけるPCFは,活動性の低下に対して年齢や運動症状と独立して影響していると考えられた. MFIにおける活動性の低下は,日中の主観的な活動量を反映する質問項目であり,PCFなどの呼吸機能の低下を示す患者では,日中に思うように活動することができないと感じていると推測された.本研究では咳嗽能力そのものが主観的疲労感に影響しているかは断定することができない.しかしながら,呼吸機能と主観的疲労感との関連性について示すことができた.すなわち,先行研究では,重症度,運動症状,精神症状,睡眠障害などが疲労感に影響することが述べられているが(Yoshii, 2006),本研究により呼吸機能も疲労感を引き起こす一因である可能性が示された.PD患者の疲労感を評価・軽減するうえで,呼吸機能障害を評価することも重要であると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 PD患者において呼吸機能の低下が主観的疲労感に影響することが明らかになった.呼吸機能を評価することで,PD患者の主観的疲労感の原因を把握する一助となりうる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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