理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
変形性膝関節症に対する下腿内旋運動とリアライン・ソールの短期効果:無作為化対照研究
貞清 正史貞松 俊弘秋山 寛治久我 哲也一瀬 浩志伊藤 一也上川 哲朗杉野 美里樋口 隆志川野 沙也加秋山 祐樹蒲田 和芳
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p. Ca0232

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抄録
【はじめに、目的】 変形性膝関節症(膝OA)において、運動療法が一定の症状改善効果を示すが、OA膝のスクリューホーム運動の異常の改善を意図した運動療法は未発表である。吉田らは、OA膝に対するリアライン®・レッグプレス(GLAB社製)を用いた1回の下腿内旋エクササイズにより、膝関節可動域の改善、Q角の減少、大腿骨内側顆間距離の減少、歩行時痛の改善を報告した。一方、日常生活の足部外側荷重での歩行による下腿外旋が、下腿内旋エクササイズの効果を相殺する可能性があった。本研究の目的は、リアライン・レッグプレスによる下腿内旋エクササイズに、外側アーチ支持を目的としたリアライン・インソール(GLAB社製)併用の効果を検証することであった。【方法】 対象の包含基準は、日本人、50歳以上、膝OA患者とした。18名36膝(うち男性5名)(平均年齢±標準偏差:年齢59.0±6.0歳、身長153.9±8.6cm、体重59.7+11.4kg)が参加に同意した。この18名を無作為にインソール有り群とインソール無し群に割り付けた。膝OAの進行度(K-L分類)は、グレード1が10膝(有り群6膝)、グレード2が24膝(有り群9膝)グレード3が2膝(有り群1膝)であった。プロトコルは、1)説明と同意、2)割り付け、3)ベースライン測定、4)介入、5)介入後測定、とした。測定項目は、膝関節可動域(屈曲・伸展)、Q角、片脚立位時間、10m歩行、6分間歩行、VAS(歩行、立ち上がり、階段昇降)、アンケート(WOMAC、JCOM、SF-36)を採用した。両群共通の介入は、院内では(1)リアライン・レッグプレスを用いた膝90度屈曲位での下腿自動内旋運動10回と自動内旋から伸展運動10回、(2)荷重位での下腿内旋から伸展運動10回、自宅では(3)端坐位にて同様の運動を1日2回毎日実施、とした。リアライン・インソール群には外出時にいつも使用する靴にインソールを挿入した。統計学的検定として群内比較には対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付順位和検定を用い、群間比較には対応のないt検定およびMann-Whitneyの順位和検定を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は貞松病院の倫理委員会の承認を得て実施した。各被験者には紙面で研究内容を説明し、同意書を得た。【結果】 介入前後に有意差が認められた項目は、インソール有り群で、膝関節屈曲可動域(前142.6±8.9°、後148.4±9.3°、P<0.00)、Q角(前27.0±9.5°、後18.0±6.0°、P<0.00)、6分間歩行(前392.5±60.4m、後:438.1±59.4m、P<0.00)、JKOM(前51.8±12.8、後41.3±13.1、P<0.00)、SF-36 PF(前62.5±24.8、後77.5±17.5、P=0.01)、SF-36 MH(前76.7±16.9、後89.2±7.4、P=0.02)であった。インソール無し群で、Q角(前28.9±10.8°、後20.4±4.8°、P<0.00)、6分間歩行(前390.8±41.5m、後435.9±61.7m、P=0.03)、VAS立ち上がり(前2.2±2.2、後0.6±1.3、P=0.02)、JKOM(前56.7±18.6、後42.5±11.1、P<0.01)であった。群間の比較では有意差はみられなかった。【考察】 本研究の結果、両群に共通してQ角の減少、6分間歩行距離の増大およびJKOMスコアの改善が得られた。また、膝関節屈曲可動域の増大、SF-36でのPF・MHの2項目での改善が「インソール有り群」のみで認められた。上記の結果は、吉田ら(2010)の研究結果を支持する。リアライン・レッグプレスの使用により下腿外旋が改善され、歩行能力が改善した可能性がある。一方、インソールの併用により、膝屈曲可動域とSF-36に効果を認めた理由として、外側アーチの支持による歩行中の下腿外旋の抑制が推測された。本研究の限界としてサンプルサイズ不足が挙げられる。本研究の結論を「下腿内旋エクササイズは膝OAの保存療法として有効であり、リアライン・インソールはその効果を増強する可能性がある」とする。【理学療法学研究としての意義】 本研究により、下腿内旋エクササイズとリアライン・インソールは膝OAの保存療法として有効な手段となり得ることが示唆された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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