理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
関節リウマチ患者の足部に関する意識調査
田原 大二郎石本 健小松 智平川 信洋峯 博子青柳 孝彦可徳 三博小峯 光徳鶴田 敏幸田中 康博笠原 貴紀
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p. Ca0273

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抄録
【はじめに,目的】 当院では,関節リウマチ(RA)患者のフットケアとして,足底板療法やADL指導,術後のフォロー等を実施している.我々は第39回九州リウマチ学会において,RA患者の足部の状態やフットケアに関する意識を調査し,意識不足が足部症状を重篤化させる危険性があるという結果を得,医療従事者及び患者の意識が重要であると報告した.今回,1年後に同様の意識調査を実施し,経時的な変化からRA患者の足部の状態やフットケアに関する問題点を把握し,より効果的なフットケアを提供する一助とすることを目的とした.【方法】 2009年9月から2010年1月までに当院に来院し,1年以上フォローが可能であったRA患者51例102足[男性8例(66.0±8.0歳),女性43例(60.6±12.0歳)]を対象とした. 足部の状態では,巻き爪,爪の肥厚,爪白癬,胼胝・鶏眼,槌趾,浮腫,皮膚の乾燥の有無を視診・触診にて評価した.アンケートにて,疼痛等の自覚症状の有無,履物の状況,フットケアへの意識の有無について調査した.上記の評価を初回とその1年後に実施した. フットケアへの意識の有無を「有り・無し」で聴取し,初回調査時の結果から対象を意識有り群19例(年齢61.5±11.0歳,罹患年数12.5±9.2年)と意識無し群32例(年齢61.9±12.2歳,罹患年数11.1±10.3年)とに群分けし,上記の結果を2群間で比較した.【倫理的配慮、説明と同意】 上記の対象に本研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た.【結果】 足部の状態に関して,巻き爪,胼胝・鶏眼等の所見は,意識有り群では延べ40例から25例,意識無し群では延べ42例から延べ45例と,意識有り群では改善が認められた. 疼痛は,意識有り群では15例から変化は無く,意識無し群では16例から11例へと変化し,明らかな改善は認められなかった.また,歩行時に疼痛を有する症例が15例から23例へと増加しており,そのうち15例がADLの困難さを感じていた.その他の自覚症状に関して,むくみやかゆみ,足がつる等の症状は,意識有り群では延べ30例から延べ22例,意識無し群では24例から延べ40例と,意識有り群では改善が認められたが,意識無し群では新たに症状を有する症例が増加していた. 屋外での履物に関して,運動靴やスニーカー等を着用する症例は,意識有り群では延べ14例から延べ16例,意識無し群では延べ22例から延べ25例と変化していた.また,スリッパやサンダル等を着用する症例は,意識有り群では延べ7例から延べ7例,意識無し群では延べ11例から延べ14例変化した.屋内での履物に関して,室内履きを着用する症例は,意識有り群では13例から変化は無く,意識無し群では17例から20例と,両群共に屋内外での履物に大きな変化は認められなかった. フットケアへの意識に関して,初回調査時,疼痛を有する症例では31例中15例,疼痛を有しない症例では20例中4例がフットケアへの意識を持っていた.1年後の調査でも,疼痛を有する症例では26例中10例,疼痛を有しない症例では25例中5例がフットケアへの意識を持っており,疼痛を有する症例の方がフットケアへの意識があった.しかし,1年後の調査時に疼痛が改善した症例12例中8例ではフットケアへの意識が持たなくなっていた.【考察】 今回の結果から,患者自身が足部の状態やフットケアに意識を持つことが異常所見や自覚症状の改善の一助となると考える.疼痛では,歩行時痛を有する症例が増加しており,それらの症例の多くがADL上の困難さを感じていたことから,RA患者の足部症状は,経過と共に歩行時や荷重時の疼痛が主症状となり,ADL制限につながっていくことが示唆された.巻き爪や胼胝・鶏眼,槌趾等の異常所見は疼痛出現に関与し,重篤化すると対応が困難となる為,より早期からの対応が重要であると考える. 歩行時や荷重時の疼痛への対応として,屋内外での履物が重要となる.しかし,1年後の調査においても非機能的な履物を着用する症例や屋内で室内履きを着用しない症例が多く認められたことから,今後,履物の重要性をさらに啓蒙していく必要がある. 今回の結果から,フットケアへの意識の有無には疼痛が大きく影響しており,フットケアへの意識の長期的な維持が出来ていないことが示唆された.患者自身のフットケアへの意識の重要性を考慮すると,医療従事者が介入し,フットケアへの意識を維持する為の取り組みが必要であると考える. 今後,当院で実施しているRA教室を利用し,足部の病態やフットケアに関する情報を提供していく.また,パンフレット等を作成し,RA患者や家族が足部の病態やフットケアに関する情報に触れる機会を設けていく.さらに,自覚症状の有無に関わらず,RA患者に対して足部の評価を定期的に実施し,その都度,足部の状態をフィードバックし,患者自身の足部・フットケアへの意識の向上を図っていく.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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