理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
骨粗鬆症に罹患している日本人の骨折リスク低減に運動介入は効果があるのか?
─ランダム化比較試験に対するメタアナリシス─
梅原 拓也田中 亮山崎 貴博
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p. Ca0276

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抄録
【はじめに、目的】 骨粗鬆症は骨代謝が障害されて骨折しやすくなる疾患である.低骨密度は骨折の危険因子であるが,運動介入により改善されるというエビデンスがある.また,転倒も骨折の危険因子である.転倒の危険因子には筋力低下やバランス障害が挙げられるが,これらもまた運動介入によって改善されるというエビデンスがある.しかしながら,これらのエビデンスは主に欧米人を対象にした研究で検証されている.そのため,欧米人とは体型の異なる日本人にこれらのエビデンスが適用できるか疑問である.本研究の目的は,骨粗鬆症に罹患している日本人を対象に,運動介入が低骨密度や筋力低下およびバランス障害といった骨折リスクを低減させるか検証することである.【方法】 研究デザインはランダム化比較試験に対するメタアナリシスであった.骨粗鬆症に罹患している日本人を対象にして運動介入の効果を検証したランダム化比較試験の論文を検索した.電子データベースには,PubMed, PEDro, CINAHL, Cochrane Central Register of Controlled Trials,医中誌Web Ver.5.0を使用した.対象に術後患者および入院患者が含まれている論文や,コントロール群の介入内容に運動が含まれている論文は除外した.アウトカムが一致した論文が複数あり,かつ数値データを入手できた論文を対象に,RevMan5を用いてデータを統合し,効果量として標準化平均値差を算出した.【結果】 電子データベースを使用して検索した結果,373編の論文が抽出された.373編の論文から,電子データベース間で重複していた論文や同じ対象者を扱っていた論文を除外し,さらに除外基準に合致した論文を除いた5編(6試験)の論文をメタアナリシスに組み入れた.研究参加者は262名であり,介入群134名,コントロール群128名であった.研究参加者は全員女性であった.平均年齢は59歳から75歳の範囲にあった.各試験のベースラインにおける介入群の平均骨密度(腰椎)は0.563g/cm2から0.744g/cm2の範囲にあった.組み入れられた論文が扱っていたアウトカムは,腰椎骨密度(4試験),握力(1試験),体幹前屈筋力(2試験),体幹伸展筋力(3試験),膝伸展筋力(1試験),片脚立位保持時間(1試験),Timed Up and Go Test(TUG)(1試験)であった.各アウトカムの標準化平均値差[95%信頼区間]は,骨密度で-0.27[-0.62, 0.08],握力で0.08[-0.39, 0.55],体幹前屈筋力で-0.51[-1.60, 0.57],体幹伸展筋力で0.04[-0.49,0.57],膝伸展筋力で0.19[-0.29, 0.66],片脚立位保持時間で-0.33[-0.80, 0.15],TUGで0.40[-0.08,0.88]であり,すべてのアウトカムにおいて運動介入による有意な改善は示されなかった.【考察】 de Kam et al(2009)のシステマティックレビューによると,低骨密度者に対する荷重をともなった有酸素運動や筋力増強運動は骨強度を高める.また,筋力増強運動は膝伸展筋力や体幹伸展筋力を増強させ,バランス運動を含めた介入はバランス機能を改善させる.しかしながら,本研究の結果は運動介入の効果を支持しておらず,これらの報告と一致しない.その原因として,日本人の骨密度の低さ,および運動介入の質の低さが挙げられる.骨密度に対する運動介入の効果を実証した過去の試験は大半が欧米人を対象者にしており(例えば,Stengel et al., 2005; Bergstrom et al., 2008),その平均骨密度(腰椎)は0.8g/cm2以上である.一方,本研究が組み入れた試験の対象者の平均骨密度は0.8g/cm2未満である.このように,骨粗鬆症に罹患している日本人の骨密度は欧米人よりも小さく,このことが骨密度に対する運動介入の効果に影響を及ぼしていたと考えられる.また,体幹伸展筋力をアウトカムにした欧米の試験は,僧帽筋や菱形筋,股関節伸転筋など多様な筋に対する筋力増強運動を実施していたり,負荷を加えていたりしている.これに対して本研究における日本人を対象にした試験では,腹臥位でのシンプルな体幹伸展運動のみ行われている.バランス機能をアウトカムにした試験においても,欧米人を対象にした試験は動的なバランス運動を取り入れているが,日本人に対して運動介入を行った試験は片脚立位保持という静的なバランス運動のみが行われている.以上より,単純な運動や少ない負荷量のために,筋力やバランス機能に対する運動介入の効果が得られなかったと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 骨粗鬆症に罹患している日本人の骨折リスクを運動介入によって低減するためには,対象者の骨密度,および運動の種類や負荷量を考慮する必要がある.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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