理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
腰椎変性疾患を有した高齢者の腰部多裂筋筋厚測定の再現性について
─超音波画像診断装置を使用した検者内・検者間の比較─
朝重 信吾伊藤 貴史住谷 久美子星野 雅洋大森 圭太五十嵐 秀俊
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p. Cb0498

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抄録
【はじめに、目的】 当院では、腰部脊柱管狭窄症や腰椎すべり症などの腰椎変性疾患に対して腰椎椎体間固定術(当院ではTransforaminal Lumbar Interbody Fusion:以下TLIF)が施行されている。TLIFとは狭小化した椎間板腔を広げ、椎体間を固定し正常な腰椎前彎角度に近づける手術方法である。そのためTLIF施行後は、腰椎前彎角度の保持が重要視されている。手術後は腰椎硬性コルセットを装着し、理学療法では腰椎前彎角度を保持できるように腹横筋や腰部多裂筋(Lumbar Multifidus:以下LM)などの体幹深部筋の筋力強化を中心に施行している。しかし、TLIF施行後は固定部位と隣接する椎間に過可動性が起こり、腰椎隣接間障害が発生する問題点もある。この二次的障害を予防するためには、TLIFを施行した椎間に隣接する腰椎の安定性が不可欠であり、これに作用する筋のひとつがLMである。そのため理学療法を施行するにあたってLMの評価を行う必要がある。先行研究において超音波画像診断装置(Ultrasound:以下US)を用いて健常成人や腰痛を有する若年者のLM筋厚、筋断面積測定が行われており、腰痛側のLMは筋厚や筋断面積が減少しているという報告がある。しかし、腰椎変性疾患を有する高齢者のLM筋厚、筋断面積測定に関する報告は見あたらない。これは高齢による腰椎変形の多様化、皮下組織の変性などが測定を困難にしていたのではないかと考えられる。しかし、TLIFを施行する患者は高齢者が多く、腰椎隣接間障害を予防するためには高齢者においてもLMの詳細な評価が必要である。そこで本研究の目的は、USを使用し高齢の腰椎変性疾患患者におけるLM筋厚測定の再現性の検証を行うこととした。【方法】 対象は、当院にて腰椎変性疾患に対してTLIFが必要と診断された患者13名(男性7名、女性6名、平均年齢(標準偏差):66.1(13.0)歳)とした。測定肢位は腹臥位で頭頸部中間位、上肢下垂位、骨盤、下肢は中間位とした。測定時期は手術前日とし、測定方法はUS(PHILIPS社製HD11)を用いて両側のLMを対象者の左側より撮影した。プローブは、医師の診断により固定を予定された腰椎の棘突起とそれに隣接する上位の腰椎棘突起の間から1cm外側で脊柱と平行に縦に設置した。USにて抽出した筋厚画像は画像解析ソフト(Image J)にて腰椎椎間関節から皮下までの距離を0.1mm単位で測定した。検者は、検者間再現性を確認するため2名(検者a、検者b)とし、検者aは左右それぞれ2回測定し、検者bは左右それぞれ1回ずつ測定した。統計解析は、検者内および検者間信頼性について級内相関係数(以下ICC)を算出した。検者内信頼性をICC(1,1)、検者間信頼性をICC(2,1)にて算出した。【倫理的配慮、説明と同意】 全対象者に対して、ヘルシンキ宣言に基づき、事前に本研究の目的、研究への参加の任意性と同意撤回の自由について説明を行い、本研究協力への同意を得た。【結果】 検者aのLM筋厚の平均(標準偏差)は、右2.3(0.4)cm、左2.5(0.4)cmであった。検者bでは、右2.4(0.4)cm、左2.5(0.5)cm であった。ICC(1,1)は、右側0.95、左側0.95、ICC(2,1)は、右側0.79、左側0.85と高値を示した。【考察】 本研究では、USを用い腰椎変性疾患を有する高齢者のLM筋厚測定をした結果、検者内信頼性と検者間信頼性に再現性を示した。これは、健常成人や腰痛を有する若年者のLM筋厚測定と同様に高齢者の腰椎変性疾患に対してもUSでのLM筋厚測定が可能であることを示している。また、今回の結果では、右側が左側に比べて検者間信頼性が低かった。この理由として、LM測定時に対象者の左側より測定したため、右側測定時にプローブを固定する圧や角度に変化が生じたのではないかと考えられ、今後の課題となった。さらに理学療法評価およびバイオフィードバック療法に応用していくためには、腰椎変性疾患を有する高齢者の手術後やLM収縮時における筋厚測定の再現性を検証していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果より、高齢者においてもUSを使用したLMの筋厚測定に再現性があることがわかった。これは、理学療法介入時にUSを使用したLMの筋厚測定がLMの状態を数値化し評価することが可能であることが述べられたと考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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