理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
病棟勤務看護師への理学療法介入の効果に関する多施設間共同研究
─全国労災病院リハビリテーション技師会腰痛研究(第2報)─
武田 正則戸渡 敏之浅田 史成上総 広美川瀬 真史高野 賢一郎澤田 小夜子中山 卓也原田 康隆廣滋 恵一藤村 宜史
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キーワード: 腰痛, 看護師, 多施設間研究
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p. Cb0499

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抄録
【はじめに】 労働災害の50%を占める腰痛は,産業保健において改善しなければならない疾患として重要視されている。職種別にみると,製造業,運輸交通業,商業,清掃業,保健・衛生業の5業種においては腰痛多発業種と認識されている。また、保健・衛生業の中でも病院勤務の看護師の職場での腰痛は、高率に発症するといわれている。我々は、第46回学術大会において多施設間における病棟勤務看護師の腰痛の実態について調査し、報告した。今回は、その調査に基づき無作為による理学療法の介入研究を行ったので報告する。【方法】 全国の労働者健康福祉機構の病院(労災病院)のうち協力が得られた15施設にて病棟勤務の看護師に初回アンケートを行った。研究内容を説明し同意が得られた看護師全員に対して、アンケート用紙を配布し、無記名による記入を依頼した。アンケートの内容は、職務中の腰痛の有無、腰痛の程度(フェイススケール)、RDQ(Roland-Morris Disability Questionnaire)、診断の有無、腰痛が起こる職務内容、精神的ストレスの有無、ストレスの程度(フェイススケール)、日ごろの運動状況、勤続年数、配置病棟、属性、介入研究の協力同意などであった。今回はその中から回答が得られた54名を対象とした。対象者は、運動療法・介助方法指導群(A群)、介助方法指導群(B群)、対照群(C群)の3群に無作為に分け、A群とB群にて理学療法介入を行った。各群の対象者数は、A群は17名、B群は22名、C群15名であった。また、介入終了後に初回アンケートとほぼ同様の項目と理学療法介入への効果について終了後アンケートを行った。【説明と同意】 本研究は、各労災病院の倫理委員会の承認を得て実施しており、研究の趣旨を各病院の看護部を通じて看護師に説明し同意を得られた者のみを対象とした。尚、この研究は全国労災病院リハビリテーション技師会の研究支援の助成を受けて実施した。【結果】 対象者の中で回答が有効なものはA群15名、B群21名、C群11名であった。終了後アンケート内容では、腰痛の改善についてはA群で8名(53%)、B群では11名(52%)が改善したと回答した。業務改善に役立つと回答したものは、A群7名(47%)、B群6名(29%)であった。腰痛発生の業務を初回と終了時アンケートで比べると、移乗介助、体位変換、排泄介助、中腰姿勢の項目でA群、B群ともに終了後アンケートの方が低い発生率であった。また、職場でのストレスはA群、B群では80%台であったのに対してC群は100%であった。【考察】 今回の結果からは理学療法の介入を試みたA群、B群ともに約50%から腰痛の緩和と業務の改善について効果があったと回答を得た。また、A群、B群ともに腰痛発生の業務頻度が低くなっていることから介助方法指導が一定の効果があったと考えられる。また、職場での腰痛自体の発生もA群、B群ともに5例と4例腰痛が消失しており、この点も腰痛緩和と業務改善に影響を及ぼしていると考えられる。運動指導についてはA群とB群に腰痛の改善には差がないが、運動指導をした群が業務改善に役立ったとの回答が多かったことから今回の運動では腰痛緩和への効果はみられないが、看護業務の改善に影響があったと考えられる。今回の我々の理学療法介入研究の結果からは、病棟勤務の看護師の職場での腰痛指導は、介助方法の指導を行うことが重要であることが示されたと考えられる。しかし、A群、B群の対象者の半数は理学療法介入の効果を感じられていないことや腰痛の程度においてもほとんど変化がないことから、介入方法や指導の行い方、方法の正確性の確認などの本研究の課題も考えられた。また、運動指導の効果についてはより詳細な検証が必要であることも示された。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究は腰痛が高率に発生すると言われている病棟勤務の看護師への産業保健としての理学療法介入の意義とその指導方法の必要性を明らかにすることが提示できた。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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