理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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体幹屈曲角度の増大が肩関節挙上筋力に及ぼす影響
窟 耕一山下 堅志永井 宏達國津 秀治島野 泰成大久保 佳祐今田 晃司亀井 滋
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p. Cb0505

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抄録
【はじめに、目的】 第46回日本理学療法学術大会にて、我々は肩関節挙上位や肩甲骨面挙上位での肩関節筋力が、体幹伸展位と比べ体幹屈曲位で筋力の低下を認める報告を行った。しかし、姿勢変化の程度に伴う肩関節筋力の変化について十分な検討が実施できなかった。そこで本研究では、体幹屈曲角度を段階的に増大させ、体幹アライメントの変化が肩関節挙上筋力にどの程度に影響を及ぼすのか、観察することを目的とした。【方法】 肩関節に既往疾患の無い健常成人男性14 名28 肩(平均年齢29.4 ± 5 歳)を対象とした。まず被験者を椅座位とした上で、体幹が0 °、10 °、20 °、30 °屈曲位になるように、今回の計測のために作製した簡易固定装置を用いて固定した。肩関節の筋力測定は、ハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製、ミュータス F-1)を用いて、体幹0 °、10 °、20 °30 °屈曲位にて、それぞれ測定を行った。測定は肩甲骨面90 °挙上位からの挙上動作及び矢状面90 °挙上位からの挙上動作の2 肢位にて、最大等尺性収縮を5 秒間3 回施行し、左右の平均値を筋力値とした。なお各肢位の測定順はランダムとし、疲労の影響を避けるため、各測定条件間には十分な休息をとった。体幹角度の測定は、静止椅座位を伸展角度0 ° とした上で、体幹屈曲固定位での体幹屈曲角度を測定した。検討は、各測定肢位間の肩関節筋力について行った。各測定肢位間の検討は一元配置反復測定分散分析を用い、多重比較検定(shaffer法)を行った。有意水準は5 %未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には本研究の趣旨を十分に説明し、同意書にて同意を得た。【結果】 肩甲骨面での挙上筋力は体幹屈曲0 °位210.3 ± 60.4 Nm、体幹屈曲10 °位184.8 ± 48.7 Nm、体幹屈曲20 °位162.0 ± 42.5 Nm、体幹屈曲30 °位154.0 ± 43.4 Nmであり、体幹屈曲角度の増加に伴い肩関節挙上筋力は低下した(p < 0.01)。一方、矢状面での挙上筋力は体幹屈曲0 °位204.1 ± 56.7 Nm、体幹屈曲10 °位180.0 ± 54.9 Nm、体幹屈曲20°位161.6 ± 43.6 Nm、体幹屈曲30 °位154.6 ± 41.0 Nmであり体幹屈曲角度に伴う肩関節挙上筋力は低下した(p < 0.01)。【考察】 本研究の結果より、体幹屈曲角度の増加に伴い肩関節挙上筋力が低下するということが明らかになった。この結果について、肩関節動作筋の面から考えると、我々の先行研究と同様に体幹屈曲角度が段階的に増加することでより筋が短縮位となり、筋長と張力の関係から筋力発揮が抑制されたことが影響していると考えられる。次に体幹アライメントと肩甲骨の可動性の面から考えると、肩甲骨が外転位となり、肩甲骨の後方傾斜の減少、肩甲骨の上方移動の増加が起こる。そのため肩甲骨周囲筋の筋長を中位ではなく短縮位または伸長位になり筋力発揮を抑制させ、肩甲骨の固定性が低下することで肩関節拳上に関する主動作筋の筋出力を抑制していると考えた。また加えて、体幹安定性の面から考えると体幹屈曲角度が増加することで腹筋群が短縮位となり、筋長と張力の関係から腹筋筋力を発揮出来ず、肩関節動作時の体幹安定性にも影響を及ぼし、肩関節筋の筋力発揮抑制に関与した可能性がある。今後の課題として、体幹屈曲角度の増加に伴い肩関節挙上動作で個々の肩関節周囲筋、体幹筋の活動変化を検討したいと考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究により、わずかな体幹アライメントの変化でも肩関節筋力に影響を及ぼす事、また円背姿勢の悪化により肩関節筋力の低下に繋がることが考えられる。これらを踏まえ、今後の理学療法において体幹アライメントの詳細な評価は重要であると再認識された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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