理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
片脚着地時に足底板が下肢に与える影響
─Insole effects on the lower extremity during a single leg landing─
五反田 昌子吉元 洋一木山 良二
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キーワード: 足底板, 片脚着地,
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p. Cb0731

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抄録
【はじめに】 前十字靱帯(Anterior Cruciate Ligament ; ACL)は大腿骨に対する脛骨の前方への滑り出しを抑制する働きを持つ。非接触型ACL損傷は、スポーツ場面等におけるジャンプ着地動作、ストップ動作、カッティング動作などの荷重減速動作時に起こりやすいとされている。今回はその中でも受傷することが多いと報告されている着地動作に注目した。着地動作の膝外反運動と外的内反モーメントの増大がACL損傷の可能性を高めることは広く知られている。膝関節外的内反モーメントは膝の静的安定化機構の力学的負担を定量化したものであり、ACL損傷の発生機序を理解し、ACLの負担軽減を考える上で重要である。足底板は靴の中敷きを利用した一種の矯正装具である。足部は大地に唯一接しており、人間の身体全体の姿勢制御に重要な役割を果たしているため、足底板は運動連鎖により下肢全体に作用し,膝関節の運動に影響を与えると考えられる。ACLの負担を高くしている片脚着地時の膝関節の外的内反・内旋モーメントは、床反力が膝関節中心のより内側を通ることで増大につながっていると考えられる。ここで足底板を付加することにより、足部からの下肢・身体全体への運動連鎖、膝関節中心・COP(center of pressure,足圧中心)の移動が生じ、膝関節外的内反・内旋モーメントを減少させ、ACLの負担を軽減させることができると考えた。本研究では健常成人を対象に、足底板が片脚着地動作時に下肢、特に膝関節に与える影響を明らかにし、症例に応じた足底板を選択するための基礎的な知見を得ることを目的とした。【方法】 対象は下肢に整形外科的、神経学的障害を有さない健常成人男性20名、平均年齢 23±3 歳、身長 172.5±4.6 cm、体重 68.5±11.5 kg であった(平均±標準偏差)。実験装置には赤外線カメラ6台、三次元動作解析装置、床反力計1枚を使用し、利き脚(ボールを蹴る脚)に反射マーカー12箇所と電極6箇所を貼付した。40cm台上より利き脚にて片脚着地動作を行った。足底板は傾斜のない平坦な足底板 (Flat)、アーチサポート付の足底板(AS)、傾斜を付けた外側楔状型足底板(LW)、アーチサポート付の外側楔状型足底板(LWAS)の4種類とした。得られた各身体部位の座標、床反力から関節中心点、関節角度、関節モーメント、COP位置を算出した。関節モーメントは外的モーメントを算出し、体重で正規化した。各々の足底板が片脚着地時に主に膝関節周囲に及ぼす影響を検討した。統計学的有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究の趣旨と内容について文章と口頭にて説明を行い、書面にて同意を得た。本研究は、鹿児島大学医学部疫学・臨床研究等に関する倫理委員会の審査を受けた研究である。(第162号)【結果】 今回の片脚着地動作において、被験者全員の床反力鉛直成分と左右成分のピークが足尖接地後0.12~0.16sの間に観察され、各モーメントのピークもその前後に観察された。膝関節内反モーメントは、LWではFlatに比較して有意な減少を認めた(p<0.05)。ASではFlatに比較して増加傾向はみられたが、有意な差は認めなかった。LWASとFlatの間に有意な差は認められなかった。LWではFlatに対してCOPが有意な外側への移動を認めた(p<0.05)。また、LWとLWASではFlatに比較して有意な減少を認めた(p<0.01)。ASではFlatに比較して有意な増加を認めた(p<0.05)。筋電値は各筋の最大値において、各足底板による有意差は認めなかった。【考察】 LWにおいて膝関節内反モーメントが減少を示した。LWにおいてCOPの有意な外側への移動がみられたこと、LWにより膝関節中心が内側へ移動したことにより膝関節中心と前額面上の床反力のモーメントアームが小さくなり膝関節内反モーメントの減少につながったと考えられる。逆に、ASでは膝関節内反モーメントは増加傾向を示した。ASでは、COPは内側へ移動する傾向がみられ、床反力と膝関節中心との距離が大きくなったことにより膝関節外的内反モーメントの増加傾向につながったと考えられる。LWASにおいて、膝関節内旋モーメントは有意に減少したが、膝関節内反モーメントでは減少傾向を示したが有意な差はみられず、着地動作においてはLWASの膝への影響は小さいと考えられた。以上、片脚着地時に膝関節の外的内反モーメントを生じる対象者においては、LWを着用することにより膝関節外的内反・内旋モーメントを減少させ、ACLの負担を軽減させ得ると考えられ、一方でASの着用ではACLの負担が増加する可能性が考えられた。【理学療法学研究としての意義】 片脚着地時に膝関節の外的内反・内旋モーメントを生じる対象者にとって、LWはCOPを外側へ移動させることにより、膝関節中心と床反力のモーメントアームを小さくすることによって、膝関節内反・内旋モーメントを有意に減少させ、ACLの負担を軽減させるのに効果があると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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