抄録
【はじめに、目的】 足関節脱臼骨折、脛骨天蓋骨折(pilon骨折)ともに関節内骨折である。骨折部の転位や靭帯損傷による不安定性、及び可動域制限、運動時痛が残存し二次的疾患への移行が危惧され、理学療法を行う上でも一進一退を繰り返し難渋する症例である。足関節脱臼骨折、脛骨天蓋骨折の二症例に対し機能解剖を考慮したアプローチと足底板を併用することにより疼痛緩和と歩行の安定性を獲得した。二症例を通して得た結果について考察を加え報告する。【方法】 対象である二症例に対する共通した基本的な運動療法は、ギプス固定時より足関節屈筋群、伸筋群の選択的収縮を繰り返し行い前・後方軟部組織に対し筋・腱の滑走性と伸張性を促し、ギプスカット後は浮腫とり距腿関節の関節運動を考慮し徒手療法を実施した。しかし、歩行時痛が残存したため、各々の症例に合わせた足底板を施行した結果、疼痛が消失し歩行も安定した。症例1は40歳代男性である。7mの高所より転落、受傷、当院にて救急搬送され、左足関節脱臼骨折(PERstage4)、左第1,3中足骨骨折と診断された。手術後、約2週でギプスカット、足関節可動域は背屈-10°、底屈20°、徒手筋力検査(以下MMT)は足関節背・底屈筋ともに3+、足関節屈・伸筋群の各々に圧痛所見が得られた。足部疾患治療成績判定基準(以下JOA score)は30点である。症例2は40歳代男性である。2mより落下、受傷、当院に救急搬送され、右脛骨天蓋骨折(Ruedi分類type3型)、右外果骨折と診断された。術後5日目より理学療法開始、術後3週でギプスカットPTB装具へ変更、足関節可動域は背屈-10°底屈25°MMTは足関節背・底屈筋ともに3、足関節屈・伸筋群の各々に圧痛所見が得られた。JOA scoreは18点である。【倫理的配慮、説明と同意】 症例に対して本発表の主旨を説明し、発表の同意を得た。【結果】 症例1は術後7週で脛腓間のスクリューを抜去、12週で足関節可動域(自動運動)背屈20°、底屈45°を獲得、歩行時痛が残存したため、週2回外来フォローを行い、足底板を処方後、疼痛が消失19週で理学療法終了となる。足関節可動域は背・底屈ともに全可動域獲得、MMTは足関節背・底屈筋ともに5、歩行時の疼痛消失、JOA scoreは95点である。また、Cedellによる足関節果部骨折治療成績評価は良(good)、Phillipsによる臨床評価は90点である。症例2は術後10週で全荷重歩行となり、足関節可動域(自動運動)背屈10°、底屈30°を獲得、13週より週2~3回のフォローを行い歩行時痛が残存したが、足底板を処方後、疼痛が消失19週で理学療法終了となる。最終評価は背屈20°、底屈45°、MMTは足関節背屈5、底屈4、JOA scoreは83点である。Burwellによる臨床学的評価基準では客観的・主観的評価ともに良(good)、Phillipsによる臨床評価は85点である。【考察】 症例1の足関節脱臼骨折(PERstage4)は骨間膜、脛腓靭帯損傷による脛腓間の不安定性、内側靭帯損傷による不安定性、後果骨折による後方軟部組織の損傷・癒着、以上の三点を踏まえ、靭帯熟成期間の6~8週までは距骨滑車のmortiseへの滑り込み操作を愛護的に実施した。前方軟部組織の柔軟性改善と後方軟部組織の損傷による癒着を考え、足関節屈筋腱・アキレス腱下脂肪体の滑走性・伸張性を促し8週以降は積極的に可動域訓練を行った。しかし、足関節内果に歩行時痛が残存した。つまり、踵接地時、踵骨が回内し、更に足底接地で過度に舟状骨へ荷重が加わることによる内側・横アーチの低下が疼痛を助長していると考え、踵骨・舟状骨部の機能を妨げないように足底板を設置し歩行時痛が消失した。症例2の脛骨天蓋骨折(Ruedi分類type3型)は脛骨天蓋部に強力な外力が加わり、距骨を含めた関節面の損傷、それに伴う軟部組織の重度な損傷を考慮しなければならない。後方軟部組織の後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋の損傷が推察され筋・腱の癒着と拘縮、滑走性の低下が考えられた。靭帯の損傷はなく後方軟部組織を中心にアプローチを行い可動域改善に努めた。また、歩行時痛も残存し、踵接地時、踵骨回外位から足底接地にかけて、急激に立方骨より舟状骨へ荷重が移動し、その事による内側アーチの低下が疼痛の一要因と考えられた。距骨下関節へのアプローチと足底板を併用し、疼痛が消失して安定した歩行へと至った。【理学療法学研究としての意義】 重篤な足関節外傷後の症例に対し機能解剖学的にアプローチを施行後、疼痛が残存した症例に足底板を併用し良好な成績が得られた。効果的な運動療法の一方法として有効であることが考えられる。