抄録
【はじめに、目的】 腰痛患者のうち、仙腸関節に原因があるとする症例は全体の30%であるとの報告がある。その中でも、仙腸関節の機能異常は仙骨側の原因によって生じることが多いため、仙骨へのアプロ-チの結果により、その正確な原因究明が可能となる。仙骨の機能異常を伴う症例の評価では、仙骨の動きの特徴を理解することが必要であり、機能異常の要素として仙骨偏移、疼痛誘発テスト、機能テストがある。仙骨偏移は、腹臥位において特に触診によって評価する。しかし、触診などの理学的検査技術では信頼性が乏しく、主観的であると指摘する報告がある。今回はデジタル傾斜計を用いて仙骨の左右上部と左右下部を計測する方法を仙骨偏移検査法とし、その検査法の信頼性を統計的に検討することを目的とした。 【方法】 対象は、整形外科的に異常のない健常成人29名(年齢27.6±6.2歳、身長174.0±4.0cm、体重66.1±4.8kg、BMI22.0±2.2)であった。測定項目は、デジタル計測計(Digi-key社)を用いて、腹臥位における被験者の左右仙骨溝(Sacral sulcii:以下SS)と左右仙骨尖下外側角(Inferiof lateral angle:以下ILA)である。測定手順は、デジタル傾斜計を左右SSと左右ILAに当てて、デジタル傾斜計のLCDから表示される傾斜角度を記録した. SSとILA測定はランダムに3回ずつ測定を行った。検者内信頼性の指標として、級内相関係数(Intraclass correlation coefficients:以下ICC)を用い、臨床経験3年次1名と4年次1名の測定結果により、検者内・間信頼性も求めた。検者内信頼性ICC(1,1)は臨床3年次の測定結果を用い、検者間信頼性ICC(2,1)は臨床3年次の測定結果と臨床4年次の測定結果を用いて統計処理を行った。計測中には体調の変化や仙骨部に痛みを確認し、室内の温度は一定にした。【倫理的配慮、説明と同意】 被検者に実施内容や注意事項を十分に説明し、書面による同意を得た。また、国際医療福祉大学研究倫理審査委員会の承認を得た。【結果】 検者内信頼性ICC(1,1)は、SSが0.95、ILAは0.93であり、検者間信頼性ICC(2.1)はSSが0.96、ILAは0.92であった。3回測定したSSの平均値は、左仙骨溝が高い人は7名(0.9±0.4°)右仙骨溝のほうが高い人が22名(1.9±1.1°)であった。また、3回測定したILAの平均値は左下外側角が高い人が23名(1.7±0.9°)、右下外側角のほうが高い人が6名(1.5±0.7°)であった。【考察】 デジタル傾斜計を用いて仙骨の偏移検査法の信頼性を検討したが、検者内・間信頼性とも高い信頼性が得られた。また、結果により健常成人においても仙骨が対称的ではなく捻転している状態が多いことが分かった。仙腸関節を構成する仙骨は、立ち上がりなどの基本動作や歩行などで常に前屈・伸展・回旋などの運動が起きている。この動きは対称的位置で行われることが望ましいが不良姿勢などにより、非対称的な位置が長時間続くことにより、仙骨機能異常の状態が生じる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 仙骨偏位検査法は、正確な評価を行うにはかなり熟練が必要である。今回の研究では、仙骨偏移値として数字化したことにより、仙骨の位置異常をイメージ化することである。