理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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大腿骨近位部骨折地域連携パス患者の在院日数に影響を与える因子について
十倉 孝文山本 敬文
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p. Cb0750

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抄録
【はじめに】 2006年度の診療報酬改定において大腿骨近位部骨折地域連携パス(以下、大腿骨パス)が点数化され病院機能の分化・連携が推進された。京都府では2007年12月より京都府共通パスが完成し、当院でも計画管理病院12のうち8病院との運用実績を有している。大腿骨パスの使用効果については総在院日数短縮や診療情報共有の強化(face to faceの関係)、患者家族の連携医療に対する理解度の向上、大腿骨近位部骨折診療の標準化など様々な運用報告が行われている。しかし、先行研究においては地域連携パス導入前後での比較を報告しているものが多く、地域連携パス対象患者を詳細に分析した報告は少ない。本研究の目的は大腿骨パス患者の総在院日数に影響を及ぼす因子を調査することである。【方法】 対象は2008年1月から2011年7月の間に大腿骨パス対象患者として当院に入院しリハビリテーションを実施した120名(男性26名、女性94名、平均年齢80.75±8.55歳)とし、入院中に全身状態が急変し一般病棟へ転棟した12名は除外した。最終的な解析対象者は男性25名、女性83名、平均年齢80.4±8.77歳であった。術式は人工骨頭置換術44名、観血的骨接合術64名であり転帰先は自宅退院100名、施設退院8名であった。統計処理では総在院日数(急性期病院~回復期病院退院)を目的変数、年齢、手術~当院入院までの日数、当院入院時FIM、当院退院時FIM、FIM利得、HDS-Rの6項目を説明変数として重回帰分析ステップワイズ法を用いて解析した。なお有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は診療情報より収集した後方視的検証であり対象者への説明と同意は行えなかった。しかし収集したデータについては個人情報が特定できないよう、データの取り扱いに十分注意を行った。【結果】 各項目の平均値は年齢80.4±8.77歳、手術~当院入院までの日数21.10±8.02日、入院時FIM76.61±19.09、退院時FIM105.65±16.98、FIM利得29.40±12.13、HDS-R21.38±6.24であった。重回帰分析の結果、総在院日数に影響を与える因子として入院時FIM及び手術~当院入院までの日数が説明変数として選択された。各説明変数の標準偏回帰係数は入院時FIM:-0.46、P<0.01そして手術~当院入院までの日数:0.38、P<0.01であり自由度調整済決定係数は0.49であった。【考察】 本研究では大腿骨パス対象患者において急性期病院入院から回復期病院退院までの総在院日数に及ぼす影響を明確にするため重回帰分析を用いて検討し、当院入院時FIMと手術~当院入院までの日数が影響を及ぼす因子として抽出された。病院の機能分化により急性期病院の在院日数短縮が求められ、今回はそのことを反映する結果となり臨床的にも有用な指標が得られたものと考える。在院日数には住宅改修の期間や認知面の低下による影響も考えられるため、連携病院である当院では急性期病院からの継ぎ目のない、シームレスなリハビリテーションを提供していく必要がある。今回HDS-Rの得点は因子として抽出されなかったが認知症が術後の移動能力に関与することが確認されている。廣瀬らは「認知症患者では達成目標のレベルを低く設定することで目標達成率を向上させることができた」と述べている。認知症の程度により達成目標や入院期間を変更する必要があるかもしれないと考える。地域連携パスは作成して使用するだけでなくバリアンスを分析し改定を繰り返し行うことによりエビデンスに基づく効率的な医療が実現される。施設間を越えたバリアンスの収集・分析を行う為にはデータベースの構築が必要であり紙ベースでは容易ではなくIT化が必要である。京都府では医師会が中心となり大腿骨近位部骨折及び脳卒中地域連携パスのIT化検討会議が開催されており、今後の動向に注目していきたい。【理学療法学研究としての意義】 地域連携パスは連携医療の標準化を図るための有用なツールであり使用後の評価と分析を繰り返し実施することが重要と思われる。本研究の結果は今後バリアンス分析を実施し地域連携パスの内容を改訂していく上で考慮すべき重要な知見であると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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