抄録
【目的】 腱板機能は具体的な評価が困難なため,第三者にわかりにくい.そこで腱板の画像評価として最も優れたMRIの撮像時間を短くし,動作中の腱板の動きが評価可能であれば,腱板機能の評価やリハビリテーションの効果判定を行える可能性が考えられた.今回我々は腱板機能訓練中の肩関節の動きをMRIにて撮像し,動作中の腱板と三角筋の形態学的変化について検討したので報告する.【方法】 対象は肩関節に疼痛や外傷歴のない23名23肩(成人男性10名,女性13名)平均年齢27.8歳,全例利き手側の撮像を行った.MRIはSigna1.5T(GE社製)を使用. 撮像はFast Imaging Employing Steady state Acquisition(以下FIESTA法)にて実施.撮像高位は肩甲下筋小結節付着部近位1/2の軸位画像とした.撮像動作は肩関節下垂位肘関節90度屈曲位とし,検査側上肢を20秒かけて最大内旋位から外旋20度まで外旋した. 撮像は無負荷(以下F群),張力:0.55kgのYellow(以下Y群),張力:2.73kg のGreen(以下G群)のTUBING(Thera-Band社製)による負荷の3条件で実施.断面積はGE社製プログラムを用いて計測した. 評価は各条件の棘下筋,三角筋の安静時と20度外旋位の断面積の差を用いて比較検討した.統計学的検討は,2群間の比較にWilcoxon Signed-Ranks testを用いて,有意水準を5%以内とした.【説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の目的,方法を十分に説明し同意を得て行った.【結果】 三角筋の断面積はF群91.7±19.12,Y群119.6±25.0,G群207.2±43.21であり,F群はG群より有意に小さかった.棘下筋の断面積はF群127.0±26.5,Y群118.3±24.68,G群146.2±30.46でありY群はG群に比べ有意に小さかった.【考察】 Fick Rは,1911年に筋力は筋肉の大きさと相関すると発表し,Bassettらは,肩関節において筋力と筋断面積が相関すると報告している.見目らはFIESTA法による筋断面積の評価では, 棘下筋は最大内旋位,中間位,最大外旋位の順に有意に小さくなり,腱板では求心性収縮で断面積が小さくなると報告している.また加藤木らは,FIESTA法による筋断面積における画像評価は,検者内信頼性,検者間信頼性ともにICC0.9以上と高い再現性であると報告している.我々の研究では,三角筋は負荷の増加に伴い筋断面積が減少した.棘下筋は,負荷の増加に伴い筋断面積は減少するが一定の負荷を超えると収縮が得られにくい結果となった.鈴木らは腱板機能訓練では3~4Nm以下での負荷を推奨している.以上のことから,今回の画像評価と理学評価が一致し,FIESTA法による腱板機能評価は動作中の腱板の動きや筋形態を詳細に観察することが可能であり,腱板機能評価として有効であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 本研究はCine-MRI(FIESTA法)にて腱板機能訓練を視覚的に観察し,筋形態学的に評価した研究である.従来の研究では,超音波診断装置や筋電図での評価が中心に行われ,動画によるMRI画像を用いた報告は無い.本法では,過剰な負荷を加えると棘下筋の収縮は得られない事がわかった. Cine-MRI(FIESTA法)による肩関節の評価は詳細に筋形態を観察することができる.また,理学療法の施行時において,筋や関節の状態を可視的に観察でき,治療施行時のイメージを2次元的に持つことが出来る.Cine-MRI(FIESTA法)は肩関節疾患における診断の一助として,かつ理学療法を展開するうえで治療効果の判定など大きな役割を果たすことができると考える.今後は障害肩でのCine-MRIの撮像や肩関節機能検査との相関関係について研究を進めて行きたいと考える.