理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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運動療法の効果が異なった特発性側弯症の2症例の検討
細野 健太福原 幸樹福原 千史山本 圭彦
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p. Cd0837

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抄録
【はじめに、目的】 Cobb角20°未満に対しての運動療法の効果を検討したものは少ない。筆者らは先行研究で、特発性側弯症に対して1年間の運動療法を行い、Cobb角と身体機能の継時的変化について経過観察した。その結果、Cobb角と体幹伸展筋力の間に有意な負の相関を認め、体幹伸展筋力の向上によりCobb角の増加を抑制する可能性が示された(細野ら2011)。また、Cobb角と体幹可動域の変化に正の相関が認められたことにより、柔軟性を拡大するよりも筋力の向上を目指すことが運動療法では重要と考えた。本研究ではCobb角が増加した人とCobb角が維持できた人の症例を紹介し、それぞれの特徴を報告する。【方法】 対象は当院に通院する特発性側弯症と診断された男子2名とした。症例Aの年齢は13歳、身長は156.0cm、体重は34.3kg、BMIは14.0kg/m2であった。レントゲン所見はTh6-Th11が右凸、Th12-L3が左凸のダブルカーブを呈しており、Cobb角は16°、20°であった。症例Bの年齢は14歳、身長は164.0cm、体重は56.2kg、BMIは20.9kg/m2であった。レントゲン所見はTh9-Th12が右凸、L1-L5が左凸のダブルカーブを呈しており、Cobb角は6°、10°であった。症例AはCobb角が大きく、症例BはCobb角が小さかった。運動療法は自宅で行うホームエクササイズを主体とし、内容は側弯体操を毎日約20分間実施するよう指導した。側弯体操は八幡ら(2001)の方法をもとに、8種類の運動を1年間に渡って継続して指導した。定期的な検査を月に1回実施し、体操の方法の確認と身体機能の評価を行った。身体機能の検査項目は体幹屈曲・伸展筋力、体幹側屈・回旋可動域、指床間距離(FFD)とした。体幹筋力の算出はGT-350(OG技研)を用い、等尺性の最大筋力を測定し体重で除した値とした。効果判定は各項目において開始時と1年後を比較し、運動療法の効果を確認した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象と保護者に十分に説明を行い、紙面にて内容の公表について同意を得た。本研究は福原リハビリテーション整形外科・内科医院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号121)。【結果】 症例Aはホームエクササイズを平均週3回程度実施していた。1年後の身長は160.9cm(+4.9cm)、体重は37.9kg(+3.6kg)、BMIは15.0kg/m2(+1.0kg/m2)であった。レントゲン所見としてCobb角は17°(+1°)、27°(+7°)に増加した。体幹側屈可動域は右側55°(+35°)、左側55°(+40°)、回旋は右側55°(+25°)、左側45°(+25°)とそれぞれ拡大した。FFDは-2.0cm(+11.0cm)と向上した。体幹筋力は屈曲13.6N/kg(+7.2%)、伸展12.8N/kg(+10.5%)とそれぞれ向上した。症例Bはホームエクササイズをほぼ毎日実施していた。1年後の身長は166.5cm(+2.5cm)、体重は62.1kg(+5.9kg)、BMIは22.3kg/m2(+1.4kg/m2)であった。レントゲン所見としてCobb角は6°(±0°)、10°(±0°)と変化がなかった。体幹側屈可動域は右側25°(±0°)、左側30°(+10°)、回旋は右側45°(±0°)、左側45°(+5°)であった。FFDは0cm(+5.0cm)と向上した。体幹筋力は屈曲11.1N/kg(+29.5%)、伸展14.4N/kg(+36.9%)とそれぞれ向上した。症例AはCobb角が増加し柔軟性の増加がみられ、筋力の向上は少なかった。症例BはCobb角と柔軟性に変化はほぼなく、筋力の向上は大きかった。【考察】 今回はCobb角の大きい症例AとCobb角の小さい症例Bについて検討を加えた。筆者らは先行研究から運動療法による体幹伸展筋力の向上が重要であると考えている。今回、症例Aは柔軟性の増加が多く、体幹伸展筋力の向上は少なかったことが、Cobb角の悪化に繋がった可能性がある。さらに、ホームエクササイズの実施頻度が少ないことも運動療法の結果に反映したことも考えられ、対象に対するモチベーションを高める意識づけも重要である。一般にCobb角の6°以上の増加を「悪化」と定義することから(Karol 2001)、症例Aの7°の増加はよい結果とはいえない。これに対して、症例Bは体幹伸展筋力の向上がみられ、柔軟性の増加は少なかったことにより、Cobb角の増加を抑えられた可能性がある。また、特発性側弯症は身長の伸びとともにCobb角は進行するといわれている(南2010)。両対象ともに身長は増加しているが、症例Bに関してはCobb角に変化はなかったため、運動療法の効果があると考えた。Cobb角10°の症例に関しては、体幹伸展筋力を向上する運動療法に効果がみられた。しかし、Cobb角20°の症例に関しては効果が少なかったため、今後もさらに症例を重ね、より詳しい関係を調査していきたい。【理学療法学研究としての意義】 本研究ではCobb角10°の特発性側弯症に対して運動療法実施後により、体幹伸展筋力の向上とCobb角の維持を示せた意義は大きい。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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