理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 口述
地域特性が一般健診参加者の呼吸機能に与える影響
─本土と離島における差異の検討─
大植 かほり柳田 頼英小栁 春美岐部 寛幸千住 秀明
著者情報
キーワード: COPD, 健診, 地域特性
会議録・要旨集 フリー

p. Da0310

詳細
抄録
【はじめに、目的】 慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)は世界的に有病率・罹患率・死亡率が高く、増加し続けている疾患であり、その経済的・社会的負担は大きい。2001年に作成されたGOLDガイドラインでは、改訂の後に、COPDは完全に可逆的ではない気流閉塞を特徴とする疾患であると定義されている。COPDの有病率については過去にいくつか報告がある。BOLD studyでは、COPDの有病率は全体で10.1%(男性11.8%、女性8.5%)と報告している。患者数には地域差があり、南アフリカでは最も有病率が高く、逆に低かったのはドイツであった。PLATINO studyではウルグアイの有病率が最も高く、メキシコが最も低かったと報告している。日本では2004年に大規模疫学調査が実施され(NICE study)、有病率は8.6%であると推計された。日本においては、NICE studyにて日本の潜在COPD患者数が推測されたが、大都会と離島・山間部などのようにCOPD罹患率等での地域差の検討を行った報告は見られていない。本研究の目的は、日本において地域特性が異なる本土と離島における一般住民の喫煙習慣がCOPD有病率や呼吸機能に与える影響を検討することである。【方法】 対象は長崎大学住民調査と徳州会グループ健診に参加した5221名。長崎大学住民調査は、長崎大学が長崎県松浦市・旧田平町(現平戸市)の50歳以上の全住民を対象に実施した住民健診と長崎県五島市で実施した老人健診、徳洲会グループ健診は医療法人徳洲会・愛心会で構成される徳洲会グループに属する17病院にて実施された特定健診である。方法として、全対象者の健康調査項目(年齢・性別・身体組成・喫煙習慣・Brinkman Index・呼吸機能(VC・%VC・FVC・FEV1・%FEV1・FEV1%)・COPD罹患疑い有無)を調査した。呼吸機能検査の測定にはスパイロメーター(JIS規格検査合格済で市販されている機器)を用い、椅座位にて3回測定し最大値を採用した。測定は十分に経験のある検者が測定を行った。COPD罹患疑いの有無は、呼吸機能検査にてFEV1/FVCにて70%未満となったものをCOPD罹患疑いと定義した。全対象者を健診実施施設の所在地によって本土群と離島群に分類し、各健康調査項目・呼吸機能を比較・検討した。国土交通省の国土分類では、北海道・本州・四国・九州・沖縄本島の5島を本土、それ以外を離島と分類している(本土5島と橋でつながっている島は本土と分類される)が、今回の検討において沖縄本島は他の本土と架橋されていない・沖縄本島は地理的に本土より大きく離れているという理由から沖縄本島は離島に分類した。統計学的処理として、2標本t検定、χ2検定、Mann-WhitneyのU検定にて検討を行った。統計ソフトはPASW ver.18.0(SPSS Japan INC.)を用い、危険率5%を有意水準とした。【倫理的配慮、説明と同意】 厚生労働省疫学研究倫理指針に則って研究を実施した。データはIDにて管理し、個人を特定できないように配慮した。【結果】 本土群と離島群において、年齢・性差・体重・BMIに有意差が認められた。全体のFVC・%FEV1・FEV1%に有意差が認められたが、男女別の検討を行うと呼吸機能に統計学的な有意差は認められなかった。喫煙習慣に関して、現喫煙者と過去喫煙者を合わせた喫煙経験者は、離島群が有意に高い割合を示した(本土群51.7% vs 離島群73.7%、p<0.001)。またBrinkman Indexに関しても、離島群が有意に高い値を示した(本土群322.0±494.7 vs 離島群406.2±446.7、p<0.001)。COPD罹患疑い有無に関して、離島群が本土群に比べて有意に低いという結果が得られた(本土群8.5%vs離島群7.0%、p<0.05)。【考察】 本研究において、離島群では喫煙経験者の割合やBrinkman Indexが本土群よりも有意に高いにもかかわらず、COPD罹患疑いの割合が本土群と比較して低いという結果になった。GOLDのガイドラインによるとタバコ煙が最重要因子として挙げられているが、本研究の結果よりCOPDの発症にはタバコ煙に加え、大気汚染などの他の因子も何らかの影響を与えている可能性が示唆される。【理学療法学研究としての意義】 呼吸理学療法の主対象疾患であるCOPDの危険因子として、タバコ煙に加えた他の何らかの因子の可能性を提唱するとともに、今後のCOPD研究に貢献することが出来たのではないかと考えられる。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top