理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
呼吸リハビリテーションの早期介入に向けての取り組みと効果について
筒井 宏益藤田 美紀男野原 慎二市原 里佳渡辺 充伸内賀嶋 英明
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p. Da0313

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抄録
【はじめに】 呼吸器疾患のリハビリテーションにおけるリハ開始時期についての報告は少なく、一般的には運動器疾患、脳血管疾患に比べると開始時期が遅れる傾向にある。呼吸リハビリテーションを早期に介入し効果的に実施するにすることは、廃用症候群の予防やADL,QOLの向上も期待でき、入院期間短縮や経済的損失の改善も期待できる。今回、呼吸リハビリテーションの早期介入に対する取り組みを紹介し、その効果を検証したので報告する。【早期介入に向けての取り組み】 1)毎朝の入院カンファレンスでのリハスタッフ参加。2)病棟カンファレンス、NSTラウンド等での情報共有および収集。3)電子カルテでの入退院情報の確認。伝達機能、電話を用いての主治医への処方依頼。4)バランススコアカードで、部署内の年間目標として呼吸リハビリテーション開始時期を(入院より2.5日)設定。5)院内呼吸専門士養成などの教育システムで、リスク管理の徹底、チーム医療の強化やスタッフの知識、臨床場面でのスキルアップを図った。6)患者ごとに設定した進行・中止基準をもとに、early mobilizationを実施。【対象、方法】 2006年度と2010年度に呼吸リハビリテーション介入した、肺炎群88例、82例(平均年齢80.1±10.2歳,78.2±9.2歳)と慢性呼吸不全増悪群71例、65例(平均年齢78.8±8.3歳,78.4±6.5歳)を対象に、入院からのリハ開始期間、在院日数、ADL変化、在宅復帰率、レセプト点数を後方視的に調査し検討した。ADL変化は入退院時の差を求め、評価法については肺炎群はFIMで慢性呼吸不全群ではNRADLを使用した。各群の比較にはマン・ホイットニ検定を用い、いずれも危険率5%以下を有意とした。【倫理的配慮】 本研究の内容は、当院倫理委員会の承認を得て実施した。データーの収集、解析にあたり匿名化、個人情報保護、研究成果の公表等に厚生労働省の疫学研究に関する倫理指針(平成19年8月16日全部改正)に従って対応した。【結果】 2006年度と2010年度の比較において(2006年度→2010年度)、リハ開始時期、在院日数で肺炎群(4.8±3.2日→2.6±2.2日),(53.8±20.3日→39.6±18.8日)、慢性呼吸不全増悪群(4.7±2.4日→2.5±2.6日),(48.8±18.2日→37.4±17.1日)で共に2010年度が有意に短縮した。ADL点数においても2010年度が、肺炎群は有意に向上(9.5±4.6点→18.8±5.5点)し、慢性呼吸不全増悪群は向上傾向(10.3±5.3点→14.0±4.8)を示した。在宅復帰率も同様に向上傾向(64.9%→78.1%),(69.9%→80.3%)を示し、レセプト点数は肺炎群(114183.8±10192.2点→74217.8±6083.9点),慢性呼吸不全増悪群( 43417.0±9917.5点→96423.5±1515.2点)共に2010年度が有意に減少した。【考察】 今回の結果は、呼吸リハビリテーションの早期介入が予後や経済的側面に、ある程度の影響を及ぼしたことが示唆されたが、全体的には包括的な取り組みの結果であるといえる。ハイリスクな症例に対しても、患者ごとに設定した進行・中止基準をもとに、early mobilizationを実施することで、廃用症候群の予防を含めた身体機能的予後の向上につながると思われる。理学療法士においても、早期リハビリテーション実施に向けて積極的に介入することが必要であり、リスク管理などの知識向上やコストなどに対する意識改革も必要である。また、多職種とのコミュニケーション能力の向上も必要であり、連携が十分で円滑であればリハビリテーションにおけるリスク管理や効果は、より向上すると思われる。呼吸リハビリテーションの早期実施においては、多職種間での包括的な取り組みが必要である。【理学療法学研究としての意義】 呼吸リハビリテーションを早期に介入することは、廃用症候群を予防する意味でも重要であり、ADL向上や在院日数の短縮など入院期間短縮や経済的損失の改善も期待できる。理学療法士が、早期介入に向けて情報収集や早期処方依頼などを積極的に取り組み、知識及び技術のスキルアップを行うことは、安全で質の高い理学療法を提供でき社会的地位の向上にもつながると思われる。また、多職種との連携の中で、コミュニケーションを図りお互いを理解しながら業務を進めるなどの視点も重要である。呼吸リハビリテーションの早期介入に向けては、包括的なチームアプローチが必要不可欠である。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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