理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 口述
慢性閉塞性肺疾患患者に対するリラクセーション肢位での呼吸介助併用効果と重症度との関連性
一場 友実宮川 哲夫解良 武士津田 徹國分 二三男八並 光信
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Da0312

詳細
抄録
【目的】 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は我が国の死亡原因の第10位であり、2020年には全世界の死因別死亡率の第3位になると推測されている。COPD患者の呼吸困難の軽減にリラクセーションが有効とされており、セミファーラー肢位、枕を抱えた前傾座位などは臨床上よく用いられる肢位である。しかしどの肢位がより呼吸困難の軽減をもたらすかについては十分に検証されていないため、これまで我々はこれらのリラクセーション肢位の有効性の差異について検討を行い報告した。今回これらのリラクセーション肢位でさらに呼吸介助を行った場合のその併用効果と、リラクセーション肢位選択と重症度との関連性について検討を行った。【方法】 対象者はCOPD患者29名(男性25名、女性4名)であった。呼吸中枢出力の指標としてP0.1を気道閉塞装置(Hans Rudolph社製)と差圧トランスデューサーを用いて測定した。気道閉塞装置に流量計とマスクを接続し、対象者の口に固定した。また心拍数の測定にはモニター心電図を用いた。流量計、圧トランスデューサー、心電計の信号はすべてAD変換器を介してパーソナルコンピューターに取り込んだ。測定肢位は端座位、枕を抱え机に前傾する前傾座位、ベッドの背もたれを30度挙上し膝関節を軽度屈曲位としたセミファーラー位の3肢位とし、順序はランダムとした。それぞれの肢位で6分間安静を維持してもらい、最後の1分間で任意の時にP0.1を5回測定した。測定終了後、各肢位に対する呼吸困難の程度(visual analog scale;VAS)と主観的安楽順位を測定した。さらにこの3肢位の中で最も安楽であったと回答のあった肢位で呼吸介助を行った。この測定時間に一回換気量、呼吸数、酸素摂取量、二酸化炭素排出量を測定した。また対象者をGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)の重症度分類により4群に分類し検討を行った。統計処理にはSPSS ver13.0 (SPSS)を用いた。主観的安楽順位にはχ2検定を行い、介助前後の比較には対応のあるt検定を行った。さらにリラクセーション肢位選択と重症度との関連性についてχ2検定と相関分析を行った。【倫理的配慮】 本研究は昭和大学藤が丘病院医学研究審査委員会の承認を得た後、すべての対象者に研究の趣旨を説明し、書面での同意を得た上で実施した。また得られたデータはすべて統計量に変換した上で、暗号化されたUSBで保管し、個人情報の流失防止に配慮した。【結果】 主観的安楽順位では最も安楽であるとの回答が多かったのはセミファーラー位で19名、次いで前傾座位で6名、端座位で4名の順で、残差による検討の結果セミファーラー位で1番、前傾座位で2番、端座位で3番との回答が多く有意な差を認めた(p<0.001)。リラクセーション肢位での呼吸介助において呼気終末二酸化炭素濃度と、酸素消費量、二酸化炭素排出量に差が認められ介助後で有意に低値を示した(p<0.001)。また呼吸困難の程度においても差が認められ、介助後で有意に低値を示した(p<0.001)。しかし呼吸中枢出力の指標であるP0.1、P0.1/PImaxには有意な差は認めなかった。リラクセーション肢位選択における重症度との関連性に関しては、GOLDの重症度分類と主観的安楽順位で残差による検討の結果GOLD3の患者がセミファーラー位を、GOLD4の患者は前傾座位が安楽であるとの回答が多く有意な差を認めた(p<0.05)。しかしGOLD1、2の患者はリラクセーション肢位と比較対照肢位との間に有意な差は認められなかった。またGOLDの重症度分類と呼吸機能には有意な相関が認められGOLDと正の相関を認めたものは、FRC、RV、TLC、負の相関を認めたものは%FEV1.0、FVC、VC、%VC、ICであった。【考察】 リラクセーション肢位での呼吸介助により呼気終末二酸化炭素濃度、酸素消費量、二酸化炭素排出量が介助後に有意に低値を示し、呼吸困難の程度においても有意に低値を示した。これはリラクセーション肢位での呼吸介助により呼吸仕事量が減少したためではないかと考えられる。リラクセーション肢位選択における重症度との関連性に関しては、重症度が高いとリラクセーション肢位を選択し、選択肢位は重症度により異なった。この結果からリラクセーション肢位での呼吸介助の併用には効果が認められ、リラクセーション肢位選択には重症度との関連が大きいのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究にて呼吸困難時のリラクセーション肢位で呼吸介助併用の有用性があるか、またリラクセーション肢位選択が重症度段階に応じて変化するかを解明することにより、今後増加の一途をたどると予測されているCOPD患者の重症度に応じた適切な治療介入の基礎になると考える。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top