理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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多職種参加型心不全ワークシートを用いた早期心臓リハビリテーション導入における有害事象に関する検討
山口 智大松土 理恵七田 真美山田 順子亀山 久美子大塚 進加藤 真帆人奥村 恭男大矢 俊之平山 篤志
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p. Db0544

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抄録
【はじめに、目的】 入院による臥床期間が身体・精神機能に与える影響は大きい。心不全患者においても、運動耐容能の維持・改善が長期予後へ与える効果が示されており、早期の心臓リハビリテーション(以下、心リハ)介入によるデコンディショニングの予防は重要であると考えられる。しかし、慢性心不全の急性増悪患者に対する心リハ開始基準やプログラムは明確化されていない。そこで当院では、循環器内科医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士による包括的で早期心リハ介入が可能な多職種参加型心不全ワークシート(以下、WS)を考案した。今回、効率的であるとともに安全性が求められる早期心リハプログラム実施にあたり、WS導入における有害事象について調査したので報告する。【方法】 対象は、2011年6月~2011年10月までに当院循環器内科に入院しWSが適応となった患者20例(男性13例、女性7例)。平均年齢は72±10.3歳であった。基礎心疾患は虚血性6例、特発性2例、高血圧性10例、弁疾患2例、合併症は糖尿病7例、腎不全5例、脂質異常症3例、慢性肺疾患2例、整形疾患1例であった。入院時クリニカルシナリオ(以下、CS)分類は、CS1:5例、CS2:13例、CS3:2例であった。入院時LVEFは39.4±12.5%、NT-proBNPは11068.8±11398.0pg/mlであった。身体機能として膝伸展筋力2.0±0.8N/kg、開眼片脚立位19.1±18.3秒、入院前歩行レベルは屋外歩行17例、屋内歩行2例、歩行困難1例であった。WSは、血行動態を基準に4つのStage(1期:超急性期、2期:急性期、3期:回復期、4期:退院準備期)に分類し、各病態における心リハを以下のように定義した。まず入院時に以前のADL状況からリハビリ達成目標を設定する。1期では、立位~50m歩行テストまでを実施、起座呼吸が消失した2期から100m までの歩行を開始する。Volume overloadが解消された3期では200mもしくは目標までの歩行テストを実施し、6分間歩行を完遂できるか、リハビリ目標を達成した時点で4期への移行を医師へ提案し、以降は階段昇降、自主トレーニングの教育を実施する。理学療法士は運動負荷時の血圧・心拍数・心電図・酸素飽和度・Borg指数・自覚症状・歩行状態についてWSに記入し、他の職種も各専門のデータの中から重要項目を記入し相互に情報の共有を図る。医師は適宜WSを用いて指示を改訂する。中止基準はEuropean Society of CardiologyのWorking groupにより示された慢性心不全患者に対する運動療法の中止および変更を要する基準とし、逸脱した場合を有害事象とした。有害事象の有無、各Stageに要した日数、在院日数と転帰、リハビリ最終到達レベルについて調査した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象患者に対して実施された心リハ及び検査測定は、全て医師による説明がなされ同意が得られており、WS導入に関しては当院臨床研究審査会の承認を受けている。【結果】 運動負荷中及び負荷後における有害事象は無かった。各Stageに要した日数は1期2.3±1.9、2期3.8±2.7日、3期 6.4±3.7日、4期8.8±8.5日。在院日数は20.6±9.6日。20例すべて自宅退院であった。リハビリの最終到達レベルは自由歩行70%、200m歩行5%、100m歩行20%、立位のみ5%であった。【考察】 リハビリ最終到達レベルは、合併症や入院前身体機能が影響していた。各Stageに要した日数は治療により変動が見られたが、各リハビリ目標は期間内に達成された。これは膝伸展筋力、片脚立位の結果からも対象患者の身体機能能力が比較的保たれていたことも影響したと考えられる。また、血行動態安定後も検査日程の調整、社会的理由による入院期間の延長(4期)が見られた。今回、早期心リハ介入による有害事象はなかった。これは、WSを活用することによりチーム構成員が治療状況、他部門の介入内容をリアルタイムに把握できるようになったことで安全性が向上したのではないかと考える。理学療法士は患者個々の基礎心疾患、治療、投薬内容や看護観察による入院中のADL、病識などを理解した上で、運動療法施行時のリスクを予測し、介入することが重要と考える。【理学療法学研究としての意義】 心不全への早期心リハ介入は有効であると考えられた。有害事象はチームによる情報の共有や多角的な視野からのバックアップをすることで抑制できる可能性がある。また、急性期から介入することで、長期予後を視点に入れた患者教育や身体機能と運動耐容能の維持・改善が回復期への介入の有益性をさらに高めていくと考え、今後の急性期治療における早期アプローチのさらなる発展が必要であることが示唆された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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