理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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Alb値と離床状況が市中肺炎患者に影響する要因
本久 雄一高芝 潤清岡 佳奈齊藤 佑太橋詰 佳奈清水 桃子弘田 耕大塩田 直隆前田 秀博
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p. Db0559

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抄録
【目的】 近年、入院患者の高齢化が進み肺炎などの運動器障害を生じないような疾患であっても容易に廃用症候群をきたしADL低下をきたすことも少なくない.加えて,栄養障害を生じた症例は予備力が低く,感染症に対する抵抗力も低いことが予測される.今回,市中肺炎の症例についてAlb値の影響を検証すると共に早期離床の効果について検討してみた.【対象・方法】 対象は,2009から2010年の2年間に市中肺炎で入院し理学療法処方のあった症例のうち,死亡例を除く103例とした.対象について診療録より後方視的に,基本情報(年齢・性別・BMI),ADL評価(入院前・PT開始時・退院時BI,各期間の差,肺炎重症度(A-DROP),肺炎入院回数,血液検査(入院時Alb,BUN,Cre,CRP,Hb,WBC),画像所見(X線),抗生剤投与期間(内服投与期間も含めた),経過(PT開始までの期間・安静臥床期間・離床までの期間・発熱期間・最高値体温・意識障害有無・誤嚥有無,呼吸器管理有無),既往(脳血管障害・呼吸器疾患・心疾患・糖尿病・腫瘍・肝疾患・腎疾患の有無),転帰を調査した.安静臥床期間は,「入院から端座位開始までの期間」,離床までの期間は,「入院から連続して20分以上の車椅子乗車が可能となる,もしくは歩行までの期間」と定義した.これらの症例を入院時Alb値について3.5以上の正常Alb群と3.5未満の低Alb群の2群に分類した後に,離床までの期間の中央値である3日を基準に3日未満を早期群,3日以上を遅延群と定義し分類,合計4群での検討をおこなった.統計的手法はKruskal WallisのH検定,Dunn法,χ2検定を用い,有意水準は5%とした.【説明と同意】 本研究は当院における個人情報保護規定に基づき診療録を後方視的に患者が特定できないようにID化し調査した.【結果】 4群間で比較を行った結果はADL評価ではPT開始時BI,退院時BI,入退院時BI差で有意差を認めた.加えて,多重比較よりPT開始時と退院時BIでは低Alb早期群と低Alb遅延群(p<0.01),低Alb遅延群と正常Alb早期群(p<0.05)の間に有意差を認めた.入退院時BI差では低Alb早期群と低Alb遅延群(p<0.05)で有意差を認め,転帰でも同様の結果であった.血液検査ではHbでは低Alb遅延群と正常Alb早期群(p<0.05),低Alb遅延群と正常Alb遅延群(p<0.001)で有意差を認めた.また,CRPでは低Alb遅延群と正常Alb遅延群(p<0.01)で,BUNでは低Alb早期群と低Alb遅延群(p<0.05)で有意差を認めた.TPでは低Alb遅延群と正常Alb遅延群(p<0.001),正常Alb早期群と正常Alb遅延群(p<0.01)で有意差を認めた.胸部X線では低Alb遅延群と正常Alb早期群,低Alb遅延群と正常Alb遅延群(P<0.05)で有意差を認めた.PT開始までの期間・安静臥床期間では,低Alb早期群と正常Alb早期群,低Alb遅延群と正常Alb遅延群以外の組み合わせで有意差を認めた(p<0.01).また,入院期間では低Alb早期群と低Alb遅延群,低Alb遅延群と正常Alb早期群,低Alb遅延群と正常Alb遅延群(p<0.001)で有意差を認めた.【考察】 今回の結果から市中肺炎の症例においてAlb値とADLには関係があることが示唆された.特にAlbが基準値以下で離床が遅延しているような症例では退院時のADL低下の可能性が高く,可及的早期の離床が必要と考えられた.また,Albが正常値に保たれているような状態であれば離床時期の影響は受けにくくADLの状態に有意差を認めなかった.この事から低Alb群では入院前の状態を反映し予備力の低下が予測され,理学療法の介入基準として栄養状態の評価は必要な項目の一つと考えられた.Geethaは敗血症症例に対して早期リハを行うことで除脂肪体重が減少しないことを検証している.今回の症例では低Alb症例に対して早期離床からADL拡大を図ることでADL維持に繋がると思われる.また,今回の結果において炎症反応や腎機能に差異を認め,感染に伴う影響が示唆されたが対象群ではその要因が見出せず今後の検討課題としたい.【理学療法研究としての意義】 低Alb症例に対してもリスク管理を行いながら早期離床することでADL拡大を図りADL維持に寄与するのではないかと考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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