理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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原発性肺癌術後の歩行開始に影響を及ぼす術前因子の検討
岩井 賢司築山 尚司太田 晴之馬崎 哲郎堅山 佳美千田 益生
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p. Db0558

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抄録
【はじめに、目的】 2008年8月より医師,歯科医師,リハビリテーション医,理学療法士(以下,PT),看護師,歯科衛生士,薬剤師,管理栄養士により構成される周術期管理センター(perioperative management center:PERIO)が発足した。術前後から多職種で連携し効率的かつ効果的な集学的アプローチにより手術療法の治療効果を最大限にするため,より質の高い医療の提供することを目的に運営されている。胸腹部外科的治療後は臥床状態の遷延により呼吸障害の増悪や合併症の併発に影響を及ぼす可能性が高くなるため,早期離床により呼吸器合併症を予防し機能回復を目指すことが一般的である。そのため術後より可能な限り早期離床に努めているが,中には離床が遅れる症例も少なくない。そこで今回は,原発性肺癌患者を対象として,術後歩行開始の遅れる症例を術前因子から予測することが可能か後方視的に調査することを目的とした。【方法】 2008年8月から2011年10月まで当院呼吸器外科にて原発性肺癌診断のもと,外科的治療を目的とし受診し,術前紹介された患者122名(男性71名,女性51名,平均年齢71.4±6.8歳,身長158.1±9.3cm,体重56.3±10kg)を対象とした。症例は全例術前において独歩可能であり,階段昇降が可能な運動能力を有しているものとした。また酸素投与が必要なもの,あるいは日常生活が制限されるようなものは本研究から除外した。対象は術後早期歩行開始群(以下,早期群)と歩行遅延群(以下,遅延群)の2群に分けた。早期群とは術後1日で歩行が可能であった群で89例(73.0%),遅延群は術後歩行開始に2日以上を要した群で33例(27.0%)であった。そして,術後歩行開始に影響を及ぼすと推測された術前因子,年齢,BMI,%肺活量(以下,%VC),1秒率(以下,FEV1.0%)Timed Up & Go Test(以下,TUG),を挙げ調査した。統計学的検討について,各測定項目の2群間の比較はスチューデントのt検定を用いた。さらに両群間で有意差を認めた項目を説明変数,歩行開始を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究,指導を行う上で患者に説明と同意を得た上で実施している。【結果】 全122例の平均離床日は1.4±1.0日であった。%VCは早期群で108.8±18.2,遅延群で96.9±17.1で早期群が遅延群と比較して有意に高い値を示し,TUGは早期群で9.89±2.4sec,遅延群で11.4±4.5secと早期群が遅延群と比較して有意に低い値を示した。これらの2群間で有意差を認めた測定項目を説明変数,歩行開始日を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った結果,%VCが有意な項目として選択された。【考察】 術前より運動機能・呼吸機能の向上に努めることが重要であることが明らかとなった。中でも特に術前%VCを向上させておくことが術後早期離床に影響を及ぼすと考えた。【理学療法学研究としての意義】 本研究結果より,原発性肺癌の術後離床に影響を及ぼす術前因子として%VCが示された。この結果をもとに術前より%VCを向上させておくことで原発性肺癌術後における呼吸器合併症の低減につなげられるのではないかと考えた。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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