理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
人工呼吸器装着患者におけるギャッジアップによる消費エネルギーの検討
小幡 賢吾氏家 良人芝 直基片岡 昌樹
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p. Db1199

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抄録

【はじめに、目的】 急性期リハビリテーションでは人工呼吸器装着下であっても,早期の離床を行うことが一般的となっている.これは早期離床が四肢や内臓器官の廃用症候群予防のみならず,重力による呼吸仕事量の軽減など呼吸器系に良好な影響を及ぼすためである.人工呼吸器装着患者を離床していく上で,バイタル等で患者への負荷を測定することは一般的であるが,消費エネルギーから負荷量を測定した報告は見られない.今回我々は,間接熱量計を用いて人工呼吸器装着患者に対しギャッジアップを行い,消費エネルギー等により患者に加わっている離床時の負荷を検討したので報告する.【方法】 人工呼吸器を装着している患者に対し,人工呼吸器回路に間接熱量計(GE Healthcare S/5コンパクトモニターTM)を接続し,ギャッジアップ(以下,ギャッジ)を施行.臥位(5分)‐30°ギャッジ(15分)‐60°ギャッジ(15分)‐full(80°)ギャッジ (10分)施行時の呼気ガスより消費エネルギー量(以下,EE)と呼吸商(以下,RQ)を測定.各姿勢でのEE,RQの平均値を算出した. 症例は83歳男性で主病名は肺気腫によるCO2ナルコーシス,低ナトリウム血症.安静時基礎エネルギー888.1kcal,アルブミン3.1g/dL,測定時の人工呼吸器設定はCPAP,FiO2 40%であった.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 倫理委員会にて承認を得たものであり(受付番号1198),ヘルシンキ宣言に沿った研究である.また患者家族に対し説明を行い,同意を得たものである.【結果】 各姿勢での平均EEならびに平均RQは臥位ではEE1070.1kcal,RQ0.694,30°ギャッジではEE1070.2kcal,RQ0.799,60°ギャッジではEE1043.4kcal,RQ0.794,fullギャッジではEE1073.1kcal,RQ0.752であった.各姿勢でのEE平均値では大きな変化はなく安定していた.RQに関しても変化としては0.1内で収まっていた.【考察】 本症例に関しては,各姿勢変化によるEEならびにRQの推移は大きな変化は見られなかった.このことから本症例は各姿勢での平均EE上では過剰なエネルギー消費もなく安全な離床が行われていることが分かった.しかし消費エネルギーはカテコラミン等の薬剤,鎮静,熱発,患者ストレスなどに影響すると言われている.急性期での患者状況は時間ごとに変化する.このことからもEEが多く用いられる可能性のある状況下での患者の離床動作施行時は,バイタル上安定していても異常なエネルギー消費がなされている可能性もある.またRQに関しても,代謝状態を確認する指標となると言われている.よって理学療法中の間接熱量計によるモニタリングは意味のあることではないかと考える.今後,症例を重ね様々な状況下での検討をしていきたいと考えている.【理学療法学研究としての意義】 理学療法中の消費エネルギーや呼吸商を計測することは,栄養投与の指標や代謝状態を確認するために重要であると考える.このことからも理学療法研究の意義はあるものと考えている.

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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