理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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佐世保中央病院におけるがん患者リハビリテーションの取り組みと今後の課題
石丸 寛人末武 達雄
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p. Db1224

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抄録
【はじめに、目的】 当院では、2011年1月よりがん患者リハビリテーション料(以下、がん患者リハ料)の算定を開始し、開胸開腹手術前後のリハビリテーション(以下、リハ)を行っている.また、がん患者リハ料算定開始に合わせ、外科カンファレンスの参加などの取り組みにより、他職種へのリハの啓発も行っている.今回、がん患者リハ料算定開始前後での、リハの効果についての調査を行ったので、取り組みの紹介と今後の課題とあわせ報告する.【方法】 対象は、当院にて2011年1月から6月までに、がん治療のために開胸開腹手術を施行し、がん患者リハ料を算定した42名(平均年齢:68.0±9.0歳、疾患の内訳は、大腸癌20名、肺癌6名、胃癌7名、肝・胆癌7名、その他2名)とした.診療記録から、1.手術後リハ開始日からのリハ実施期間、2.手術前リハ介入率、3.退院時のFIM得点、4.FIM gain、5.FIM efficiency、6.手術から室内歩行開始までの期間について、後方視的に調査した.また、がん患者リハ料を算定する以前の2010年7月から12月の期間で、がん治療のために開胸開腹手術を行った37名(平均年齢:70.7±10.2歳、疾患の内訳は、大腸癌15名、肺癌10名、胃癌8名、肝・胆癌3名、その他1名)の患者を比較対象とした.【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に沿って個人情報保護に配慮し、患者情報を診療記録から抽出した.【活動内容及び結果】 外科カンファレンスにて医師、看護師向けに手術前後のリハの重要性を説明し、リハオーダーの啓発活動を行った.また、外科カンファレンスに毎週参加し、治療方針について医師、病棟看護師、MSW、訪問看護師と情報共有を図っている.既存のクリティカルパスに、手術前後のリハについてリハオーダーの導入を行い、リハ開始時に手術前後のリハの流れについてリーフレットを使用して説明を行っている.手術後では、手術翌日から離床を目的としたリハを実施した.がん治療のための開胸開腹手術後に生じる可能性のある合併症としては、摂食障害、排便困難と安静臥床に伴う肺炎・無気肺などの呼吸器合併症、深部静脈血栓症、廃用症候群などが考えられる.その予防として、手術前から、喀痰を目的とした咳嗽指導などの呼吸理学療法や、疼痛の起こりにくい起き上がり・臥床動作の指導などを行っている.また、手術後自己喀痰が困難な場合は、呼吸介助や排痰手技なども併せて行っている.深部静脈血栓症に対しては、手術前から足部の自動運動と早期離床の重要性を説明し、廃用症候群予防のためにも、手術後早期から下肢の抵抗運動を行っている.今回の調査結果として、1.手術後リハ開始日からのリハ実施期間は、算定前が25.4日、算定後が15.3日であった.2.手術前リハ介入率は、算定前が5.4%、算定後が54.8%であった.3.退院時の平均FIMは、算定前が109.7点、算定後が111.5点であった. 4.FIM gainは、算定前が50.9点、算定後が48.6点であった.5.FIM efficiencyは、算定前が2.05点、算定後が3.17点であった.6.手術から室内歩行開始までの期間は、算定前が5.9日、算定後が3.4日であった.【考察】 手術前からのがん患者へのリハの介入が増えており、手術後のリハの理解と同意が得られやすくなり、介入がスムーズになった.取り組みとして外科カンファレンスへの参加によって医師、看護師とのコミュニケーションが図れ、また、多職種からの患者への離床の促しも増えてきている印象である.それによる一つの影響として、歩行開始時期の短縮にもつながったと推測できる.リハ実施期間についても短縮していることから、手術後早期から歩行が可能となることで、早期のADLの回復へつながり、短期間でより効率的なADL能力の向上が図れたと考えられる.しかし、離床の遅延例も少なからず存在しており、その分析や、術後合併症の予測因子などの検討が今後の課題として挙げられる.【理学療法学研究としての意義】 2010年の診療報酬改定において、がん患者リハ料が新設され、当院でも2011年1月から算定を開始した.当院では、その対象を、がん治療ために開胸開腹手術を行う患者としている.がんのリハの実施にあたっては、がんの病期によりリハの目標が異なるため病期の把握が重要となる.当院のがん患者リハ料の対象となる患者は、ADLの維持・向上が可能な段階の患者であるため、早期のADL回復によりQOL向上を図ることが重要であり、今回課題として挙げた、 離床の遅延例に関しての検討が今後重要と考える.これからのがん患者増加の時代に向けて、多様な症状を示すがんについて理学療法士も検討を重ねる必要があると考える。なお、大会当日は対象症例を2011年12月まで増やし、昨年1年間との比較として発表する.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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