理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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地域在住の維持期脳卒中患者に対する積極的リハビリテーションが身体機能および動脈機能に及ぼす影響
高取 克彦松本 大輔中村 潤二岡田 洋平庄本 康治
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p. Dd0845

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抄録
【はじめに、目的】 動脈硬化は心血管や脳血管疾患の主たる原因であり,これによるアテローム血栓症は,脳卒中の再発危険因子でもある.脳卒中後遺症を有する高齢者において,疾病の再発や重複は,ADL水準を大きく低下させる恐れがあるため,維持期リハビリテーションにおける動脈硬化の改善,進展予防は重要である.動脈硬化の進行には血管内皮機能の低下が中心的役割を果たし,運動による血管壁の剪断力の増加は一酸化窒素の合成と放出を増加させ血管内皮機能を改善させることが知られている.従って,動脈硬化症の進展予防・改善に運動療法は欠かせない要素の1つである.しかし,維持期リハビリテーションの効果を動脈硬化関連指数の変化から示した報告はなされていない.  本研究の目的は,在宅高齢障害者に対する積極的健康増進プログラムに参加した維持期脳卒中患者における動脈硬化関連指数および運動機能の変化を調査することである.【方法】 対象は通所リハビリテーション利用中の在宅脳卒中患者44名(男性32名,女性12名,平均年齢68.5±8.9歳)である. 対象を伸張運動と歩行練習を主体とした40分の標準的リハビリテーションを週2回,3ヶ月間実施する群(対照群)と高齢者に適した筋力増強機器による筋力強化および有酸素運動を中心とした2時間の積極的リハビリテーションを週2回,3ヶ月実施する群(介入群)の2群に分けた.各群への割り付けは交互法による準無作為化割り付けを行った.評価は動脈硬化関連指数,運動機能,ADL水準に関して行われた.動脈硬化関連指数の評価には心臓足関節血管指数(Cardio Ankle Vascular Index: CAVI)および足関節上腕血圧比(Ankle Brachial Index: ABI)を測定した.CAVIは高値になる程,動脈の伸展性が乏しいことを示し,ABIは低値ほど動脈の高度閉塞を表すものである.両測定には血圧脈波検査装置 (フクダ電子社製)を用いた.運動機能面では握力,Timed Up and Go test,10m歩行速度を評価した.ADL水準の評価にはBarthel Indexを用いた.データ解析は介入前後の群内・群間比較に二元配置の反復測定分散分析法を用い,危険率を5%未満に設定した.【倫理的配慮、説明と同意】 全ての参加者は研究プロトコルの説明を受け,その後インフォームドコンセントが行われた.また本研究は医学研究倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】 3ヶ月間の介入後,運動機能面では両群ともに介入前と比較して有意な変化は認められなかった.動脈機能では介入前後の麻痺側CAVI値に有意な時間×群の交互作用が認められた(F=0.41, P<0.01).単純主効果検定の結果,介入群の治療後麻痺側CAVI値(平均8.4 ± 0.3)がベースライン時(平均9.5 ± 0.4)に比較して有意に改善していた(P<0.01).コントロール群では治療後における麻痺側CAVI値(平均10.0 ± 0.3)はベースライン時(平均9.1 ±0.1)に比較して有意に増加していた(P<0.01).非麻痺側CAVI値は介入前後における主効果は認められたが(P<0.05),時間×群の交互作用は認められなかった.麻痺側のABIは群間および介入前後の主効果は認められた(P<0.05)が,時間×群の交互作用は認められなかった.非麻痺側ABIにおいても群間および介入前後の主効果は認められた(P<0.01)が,時間×群の交互作用は有意ではなかった.【考察】 本研究の結果,動脈機能においてCAVI値が介入群の麻痺側でコントロール群に比較して有意に低下していた.このことは,麻痺側への積極的筋力増強訓練が一酸化窒素合成と放出を増加させ,動脈伸展性を改善させたものと考えられる.非麻痺側CAVIでは,時間による主効果は認められたが,交互作用は認められなかった.これは介入前から使用頻度が高い非麻痺側では改善の程度に差が検出できなかったことが原因と考えられる.ABIは介入後における低下が認められたが,その程度には群間の差は認められなかった.今回の症例ではほとんどが正常範囲内の変化であったことから,この結果に関する臨床的重要性は低いと思われる.運動機能およびADL水準が有意な改善を示さなかったことに関しては,本研究の対象が全て発症後1年以上を経過した維持期症例であったため,統計学的な差を検出するには改善量が少なかったためと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 地域在住の維持期脳卒中患者に対する理学療法の重要性を運動機能の維持・向上だけでなく動脈機能の改善から明らかにすることで,積極的運動療法が疾患の再発予防の観点からも重要であることを示すことができる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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