理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
ペダリング運動におけるLocomotor Respiratory Couplingの誘発が運動継続時間や呼吸パターンに及ぼす影響
安福 祐一玉木 彰解良 武士大久保 康越久 仁敬
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p. De0032

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抄録
【はじめに、目的】 呼吸リハビリテーションにおいては、運動療法時の呼吸困難の軽減と運動継続時間の確保が重要な課題である.Locomotor Respiratory Coupling(LRC)とは四肢の運動に呼吸運動が同調する現象である.先行研究においては、LRC発生による利得として呼吸筋酸素摂取量の減少や呼吸困難の改善等が考えられているが、その検証は十分ではない.本研究の目的は、LRC誘発がペダリング運動時の運動継続時間や胸腹部運動からみた呼吸パターンに及ぼす影響について検討することである.【方法】 呼吸循環器系疾患のない健常男性12名(21±1.1歳)を対象とした.まず、本研究の実施前に自転車エルゴメータ(75XL2、コンビ)を用いたRamp負荷による最大運動負荷試験を実施し、無酸素性作業閾値(AT)を算出した.次に、最大運動負荷試験から算出したATレベルでのペダリング運動試験を実施した.プロトコルは、安静3分間、Stage 1 (50%AT) 3分間、Stage 2 (100%AT) 3分間、Stage 3 (150%AT)ではAll Outに達するかもしくは10分継続した時点で運動終了とし、全参加者に自由呼吸下(Free条件)とLRC誘発下(LRC条件)でのペダリング運動をそれぞれ実施させた.LRCの誘発には自転車エルゴメータに取り付けたLRC誘発装置(サンキ)を用い、運動と呼吸との比率を50%ATと100%ATでは2:1、150%ATでは1:1とした.呼気及びペダリングのタイミングは流量計とエルゴメータに設置した光学的通過センサーを用いて計測し、胸部及び腹部の運動の計測にはワイヤー式変位計(MICROEPSILON)にバンドを組み合わせた自作の胸郭運動測定装置を用いて計測した.それぞれのアナログ信号はPower Lab(ADInstrumental)を介してサンプリング周波数1000Hzでノートパソコンに記録し、波形分析ソフト(LabChart ver.7.2)を用いてLRC発生状況と胸腹部運動の特徴について解析を行った.胸部周径の変化をX軸に、腹部周径をY軸に配置したXYチャートを作成し、描出されたXYループの面積と傾きを呼吸パターンの指標とした.また、運動中は呼気ガス分析装置(ミナト医科学)で換気諸量を連続的に測定し、各Stage終了時に修正Borg Scaleで呼吸困難と下肢疲労を聴取した.統計学的分析は、ペダリング運動条件とStageを要因とした2元配置分散分析を用い、各Stageでの条件間の比較には対応のあるt検定を用いた.また、正規分布に従わない場合にはそれぞれFreidman検定とWilcoxon検定を行った.統計解析にはSPSS Ver.18を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、兵庫医療大学倫理委員会での承認(第11007号)を受けた上で実施した.本研究に関する内容を記載した同意書を作成し、研究開始前に参加者者本人から本研究への参加について書面による同意を得た.【結果】 運動継続時間はFree条件では838.2±191.4秒、LRC条件では907.7±193.6秒であり、Free条件からの増加率で比較するとLRC条件では有意な増加を認めた(P<0.001).胸腹部運動に関しては、いずれの条件とも負荷増大に伴うXYループの面積拡大を認めたが、そのうちStage 3ではFree条件の方が有意に大きかった(P<0.05).またいずれの条件ともXYループの傾きは運動中変化せず、胸部運動と腹部運動の時間的な優位性については有意な変化を認めなかった.呼吸困難に関しては、Free条件と比較してLRC条件ではStage 2のみ修正Borg scaleが減少した.換気諸量はLRCでは全Stageに亘って呼気終末炭酸ガス分圧が減少したが、その他の値についてはStage 2での有意な変化を認めなかった.【考察】 本研究では、LRC誘発による運動継続時間の延長効果が認められた.この要因を検討するため、換気諸量や胸腹部運動に関して更に解析を進めた.LRC条件ではStage 3においてXYループ面積の有意な減少を認めたが、同Stageでは呼吸困難の有意な減少を認めておらず、また単にFree条件と比較してLRC条件の一回換気量が有意に低値であったことに依存した結果であることも考えられ、LRC誘発が胸腹部運動からみた呼吸パターンに及ぼす影響は明らかにできなかった.LRC誘発により呼吸困難が減少する原因についても、本研究では明らかにできなかった.今後も、LRC誘発の意義やその利得についての検証を続けていく必要があると考えられる.【理学療法学研究としての意義】 LRC誘発により運動継続時間の延長や運動中の呼吸困難の減少を認めた本研究の結果は、呼吸不全患者のような呼吸困難の出現により長時間の運動継続が困難となる症例に対してLRCを導入する根拠となる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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