理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
在宅高齢心不全患者における運動の実施状況と健康関連QOL
高瀬 広詩松尾 善美柳澤 幸夫嶋田 悦尚真鍋 誠小田 実東根 孝次小倉 理代日浅 芳一
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p. De0036

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抄録
【はじめに、目的】 安定した慢性心不全患者に対する運動療法は,心不全悪化などの副作用を生じることなく運動耐容能を改善し,QOLを向上させることが報告されている.また,心不全再入院率を減少させることも報告されており,当院においては,入院した心不全患者のほぼ全例に対して理学療法士が介入し,退院後の運動指導を行っている.しかし,高齢で合併症を有する者が多く,指導の際に難渋するケースが少なくない.そこで,本研究では在宅高齢心不全患者の運動の実施状況と健康関連QOLを調査し,我々が行っている指導内容がどれだけ反映されているのかを明らかにするとともに,指導方法を再考する参考資料とすることを目的とした.【方法】 平成21年1月より平成22年3月までに心不全の診断名で当院に入院し,リハビリテーションを実施した患者のうち,75歳以上の者を対象とした.さらに1.調査時すでに死亡している者,2.認知症と診断されている者,3.重度の他疾患への罹患で入院治療を行っている者を除いた93名を対象とし,退院後1年以上経過した後に,郵送によるアンケートを行った.質問項目は,運動の行動変容ステージ,運動の必要性の認識,運動を実施していない者の運動が困難な理由,SF-8であり,行動変容ステージ(前熟考期・熟考期・準備期・実行期・維持期)は,前熟考期と熟考期を運動非実施群,準備期から維持期を運動実施群とした.統計解析には,SPSS 17.0J for Windowsを用い,運動実施の有無と運動の必要性の認識についてはχ2検定を,運動非実施群と実施群のSF-8下位8項目にはMann-Whitneyの検定を用いて検討した.すべての検定においては危険率5%未満を有意差判定の基準とした.【倫理的配慮、説明と同意】 アンケート送付時に,本研究の趣旨と個人情報保護に関する説明書を同封し,その返送をもって本研究に同意を示す内容とした.【結果】 アンケートを送付した93名中61名の返信があった(回収率66%).そのうち有効回答は45名であった(有効回答率48%).回答が得られた45名の内訳は,年齢82.3±4.7歳,男性25名,女性20名.基礎疾患は虚血性心疾患14名(31%),弁膜症15名(33%),高血圧性心疾患8名(18%),心筋症3名(7%),その他5名(11%)であった.運動の実施状況は前熟考期10名(22%),熟考期6名(13%),準備期24名(53%),実行期1名(2%),維持期4名(9%)であり,運動非実施群16名(36%),運動実施群29名(64%)であった.運動非実施群において,運動が困難な理由は7名(44%)が「関節が痛い」と回答し,最も多い理由であった.また,運動の必要性の認識について,χ2条検定では,運動実施群が有意に運動の必要性があると感じていた(p<0.05).さらに,運動非実施群と実施群とで,SF-8の下位8項目について比較検討を行ったところ,「体の痛み:BP」,「活力:VT」,「心の健康:MH」の項目において有意差を認めた(p<0.05).【考察】 平均年齢が82歳と高齢にもかかわらず,64%の患者がなんらかの運動を行っている結果となった.行動変容ステージ別でみると,半数以上が準備期「指導内容通りではないが,運動している」であり,これは,なんらかの理由で指導通りの運動ができない,あるいは指導内容を忘れてしまった,といった理由が考えられた.また,運動をしている人ほど運動の必要性を感じている傾向にあったことから,運動に対する効果の実感や期待感が運動実施の有無に影響を与えていると考えられた.さらに,HRQOLにおいて運動非実施群では実施群に比べて「BP」が有意に低く,関節の痛みが運動を困難にする理由として最も多かったことから,運動実施群に比べて非実施群のほうが,関節痛が強い傾向にあると考えられた.したがって,高齢心不全患者に対する運動指導の際には,関節痛などに配慮し,より具体的な指導内容を提案するとともに,指導内容を常に確認できるよう,パンフレットや手帳を活用する必要があると考えられた.また,運動の効果や必要性を十分に説明し,それを実感してもらうことが運動継続には重要であると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 安定した慢性心不全患者に対する運動療法には,様々な効果が報告されているが,運動指導を行う我々にとっては,いかにその運動を長期間継続させられるかが重要となる.本研究は,合併症を多く抱えた高齢心不全患者において,運動実施時の問題点を明らかにするものであり,運動指導の方法を再考するうえで重要な資料となった.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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