理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
転倒予防体操を継続した高齢者の身体機能の変化
─2年間の継続調査結果を用いての検討─
河村 達也高見 とも子石黒 恵子田邊 誠
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p. Ea0955

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抄録
【はじめに、目的】 介護予防理念の普及啓発が進み、高齢者の介護予防に対する取り組みは増えている。当院においても平成21年より兵庫県加古川市地域包括支援センターの介護予防事業への協力の中で身体機能評価、転倒予防体操の啓発を行っている。今回、そのうち2年間継続調査と転倒予防体操の継続ができた26名の身体機能の変化について報告する。【方法】 平成21年より身体機能評価を行った健康に関心のある加古川市在住の高齢者205名のうち2年間継続調査のできた26名を対象にロコモティブ・シンドロームの数値的指標となる運動器不安定症の評価基準(握力・Timed Up & Go (以下TUG)・開眼片脚起立)と顆間距離を用い変化について検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者に研究の趣旨と内容について説明し、同意を得た上で行なった。【結果】 参加者26名(男性13名、女性13名)、平均年齢71.08±4.96歳、平成21年握力(右)25.98±7.88kg、(左)24.91±8.14kg、TUG6.54±1.99秒、開眼片脚起立(右)37.42±41.53秒、(左)37.08±41.41秒、顆間距離(膝関節変形有)が12名。平成22年握力(右)28.65±7.82kg、(左)27.18±8.13kg、TUG6.65±2.08秒、開眼片脚起立(右)42.97±39.43秒、(左)31.17±36.70秒、顆間距離(膝関節変形有)が17名。前年と比較すると握力は84.62%が向上し15.38%が低下。TUGは38.46%が向上し61.54%が低下。開眼片脚起立は46.15%が向上し53.85%が低下。顆間距離(膝関節変形有)は5名が増加し46.15%が増悪した。【考察】 先行研究では様々な報告はされている。経年的変化について花岡は一次的な増加は可能であったが長期間における基礎体力の低下予防には至らない。高齢者に不可欠な基礎体力の維持は日常生活での運動により影響され、習慣的な運動を実施することによって、身体活動量、運動量を増加させなければならない。村木は下肢筋量の低下は50歳代より始まるが上肢筋量は年齢による低下はみられず、上下肢で筋量の経年的変化に違いがあると報告している。また吉武は加齢による握力の変化は少なく、歩数の影響は受けないと述べている。今回継続調査のできた26名の経年的変化ついて下肢機能の低下を過半数で認め、これまでの報告と同様の結果となっている。また、1年間で顆間距離(膝関節変形有)は5名が増加し46.15%で膝変形が増悪したことは将来、身体機能の低下、要支援や要介護に陥るリスクが高まる事につながる。しかし、握力はほとんどの例で改善しており、健康意識の高まりと予防によって高齢者においても筋力は増強できることを改めて確認した。これらから下肢筋力についても効果が期待できると考える。転倒予防体操の継続と日常生活での習慣的な運動の重要性を再認識し、今後介護予防への継続した活動の中で早期発見と転倒予防体操の啓発に努めたい。【理学療法学研究としての意義】 介護予防事業への協力の中で2年間継続調査と転倒予防体操の継続ができた26名の身体機能の変化について調査し、転倒予防体操の継続と日常生活での習慣的な運動の重要性を再認識した。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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