抄録
【はじめに、目的】 3月11日に起こった東日本大震災により多くの被災者が不自由な生活を余儀なくされた。過去の新潟県中越地震では震災後にストレス、疲労、持病の悪化、エコノミークラス症候群で多くの方が亡くなったことを踏まえ、多くの団体が今回の震災後に被災者に対し支援を行っている。JOCVリハビリテーションネットワークでは、NPO法人難民を助ける会と協力し、主に土日に宮城、岩手の被災地を訪問する活動を続けている。今回、活動の評価を計る為、難民を助ける会のスタッフに対しアンケート調査を実施した。本報告では、試行期間の活動報告とアンケート調査の結果を報告する。【方法】 試行期間は、7月9日から8月28日の約2カ月間の土日計9日間であった。介入は宮城県と岩手県の2県に行った。宮城県では、避難所3カ所、特別養護老人ホーム1カ所、仮設住宅2カ所、個人宅4カ所、グループホーム1カ所に計7日間介入を行った。岩手県では、仮設住宅2カ所に計2日間介入を行った。介入場所は、比較的支援の少ない場所をそれぞれ現地に事務所を置く、難民を助ける会の医療スタッフの選択で決定した。理学療法士(以下PT)作業療法士(以下OT)計7名が1回につき2名で難民を助ける会のスタッフ及び看護師に同行し、希望者に対して介入を行った。PT・OTは、JOCVリハビリテーションネットワークの災害支援研究会に属し、定期的に災害支援について勉強会を行っていた。同行した難民を助ける会のスタッフへアンケートを行い、第3者から客観的に観た結果を介入に対する評価とした。【倫理的配慮、説明と同意】 難民を助ける会の医療スタッフに口頭にて説明を行い、他スタッフにアンケートを配布した。アンケート紙面上にも説明の記載を行い、回答にて同意を得た。対象者に対しては口頭にて説明を行い、同意を得た。【結果】 対象者は、88名(男性26名・女性62名・年齢67±25歳)であった。54.5%の人は何らかの疾患の既往歴を持ち、63.6%の人が現在も疾患をもっていた。疾患名は多岐にわたったが、主訴は「肩の疼痛」、「腰痛」、「膝痛」が上位であった。長引く避難生活で心身の疲労が生じ、既往疾患の再発や現在もっている疾患の悪化がみられていた。加えて筋力や体力の低下、関節の拘縮などの廃用性症候群もみられた。介入内容は直接的なマッサージやストレッチ、自主トレーニングの指導、動作指導が主であった。同行した難民を助ける会のスタッフに対し、アンケートを実施した結果、10名(男性5名・女性5名・年齢37.5±10.5歳)より回答が得られた。リハビリテーション職の介入に対し、スタッフ全員が対象者に変化を感じた。90%のスタッフが「非常によい」~「良い」変化を対象者に感じ、具体的な内容は「体を動かすのが楽そうになった」「笑顔が増えた」「表情が和らいだ」「よかったなど対象者から前向きな意見がきかれた」が上位を占めた。【考察】 災害弱者とよばれる高齢者の多い岩手県や宮城県の特に農村部では、疾患をもつ高齢者が多く、疾患の悪化や再発予防の為、リハビリテーション介入は必要だと考えられた。マッサージやストレッチなどの介入は症状を緩和し、その運動や手を介したアプローチは被災者の身体面だけでなく精神面への効果も持つことが今回の結果より考えられた。身体面の訴え、特に腰痛の訴えは精神面も大きく影響すると言われている。障害がある方だけでなく、将来日常生活に支障の出る可能性がある方にも健康体操等で早めにアプローチを行い、心身の悪化予防を図っていくことで、生活不活発病や震災後の死亡を防ぐことができるのではないかと考えられた。今後は、被災者の能動的な動きも引き出すよう働きかけながら、引き続き心身へのアプローチを行っていきたいと思っている。【理学療法学研究としての意義】 今回、災害後早期からのリハビリテーション介入の必要性を強く感じた。今後のリハビリテーション災害支援システムの構築のためにも、支援経験を積み活動を公表することで幅広く意見を取り入れ、改善を重ねていくことが大切だと考えた。