理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
車いすクッションが片麻痺者の車いす駆動動作に及ぼす影響
─駆動開始動作に着目して─
川田 教平髙梨 晃松田 雅弘宮島 恵樹野北 好春塩田 琴美山本 澄子
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p. Eb0645

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抄録
【はじめに、目的】 片麻痺者の車いす駆動は,比較的早期に獲得可能な動作であるが,駆動により骨盤後傾してくる者が多い.この問題に対して木之瀬らは,車いす寸法や座面についての問題を指摘している.座面への工夫として車いすクッションの必要性が考えられているが,駆動中の骨盤後傾を最小限に抑制できるかについての報告はない.片麻痺者の車いす駆動に関する報告は散見されるが,駆動速度を評価指標としているものが多い.これについては少ない力で骨盤後傾しないで駆動速度が速いほうが良いと考えられる.また,車いすが動き出す時に多くの力が必要であることから,駆動開始の分析を実施する必要があると考えた.以上のことから,片麻痺者の車いす駆動開始動作に対する車いすクッションの効果を明らかにすることを目的とした.【方法】 対象は端座位保持自立レベルの片麻痺者18名(男性17名,女性1名,年齢は44‐73歳,右片麻痺9名,左片麻痺9名)とした.使用機器は,3次元動作解析装置,筋電計,採型用車いすを使用した. 計測条件は,クッションなし,クッション1,クッション2の3条件とした.クッション1は厚さ4cm(高低差0cm),材質は1層構造のウレタンフォーム,クッション2は厚さ8cm(高低差2.5cm),材質はポリエチレン発泡体,低反発高密度ウレタンでアンカー機能がついている物を使用した.統一条件として,身体寸法から車いす寸法を算出し,採型用車いすの調整を実施した. 計測課題は,静止座位と片側下肢駆動における駆動開始の直進走行の2課題とし,最後にハムストリングスの最大随意収縮(以下,MVC)の計測を実施した.MVCの計測は,5秒間実施し,間の3秒間の波形を全波整流し,積分値を算出した.3条件の計測順番はランダムとした. 評価項目は,3条件における静止座位の骨盤後傾角度,駆動開始時の骨盤後傾角度と駆動速度,ハムストリングス%IEMG,足部接地時の下腿角度とした.骨盤後傾角度はBody Builder ver.3.6を用いて算出した.駆動速度は,足関節点と第5中足骨頭のマーカー位置から算出した.得られた筋電波形は,フィルター処理後に全波整流し積分値を算出した後,MVCに対する割合(以下,%IEMG)を算出した. 統計処理は反復測定による1元配置分散分析を行い,主効果の認められた場合は多重比較法にて検討し,有意水準は5%未満とした.統計解析にはSPSSver15.0J for windowsを用いた.【倫理的配慮、説明と同意】 国際医療福祉大学研究倫理小委員会にて承認を得て,計測実施前に被験者と主治医に研究内容とリスクに関する説明を文書と口頭にて同意を得た.【結果】 静止座位の骨盤後傾角度では,クッション1とクッション2,クッションなしとクッション2において有意差を認めた.クッションなしとクッション1には有意差を認めなかった. 駆動開始時の骨盤後傾角度とハムストリングスの%IEMG,駆動速度,足部接地時の下腿角度では,クッション1とクッション2,クッションなしとクッション2において有意差を認めた.クッションなしとクッション1には共に有意差を認めなかった.【考察】 車いす静止座位の分析の結果,クッション2で有意に骨盤後傾角度が小さくなり,クッションなしとクッション1で有意差を認めなかった.クッション2では,座面の形状がアンカーの役割を果たすことで骨盤後傾を最小限に抑えたと考えられる.また,クッションなしとクッション1に有意差を認めなかったことから,一層構造のウレタンフォームやクッションなしの条件下では骨盤後傾を抑える機能は備わっていないと考えられる. 駆動開始の分析からクッション2において有意に骨盤後傾角度と下腿角度,ハムストリングスの%IEMGが小さくなり,駆動速度は速くなる結果となった.骨盤後傾角度が小さく,下腿角度が小さくなるほど起始部と停止部が遠ざかることでハムストリングスの筋張力は大きくなると考えられる.また,ハムストリングスの%IEMGが小さくなるということは,収縮に動員されている運動単位の減少,またはα運動ニューロン発火頻度の減少が考えられ,ハムストリングスが働きやすい環境となっていることが考えられる.以上のことより,アンカー機能のあるクッション条件下では足部接地以降に力が床に伝わりやすい環境であったことが駆動速度が速くなっていた要因であると考えられる.【理学療法学研究としての意義】 車いす使用者が多い片麻痺者に対する車いすクッションの効果検証を行うことは臨床場面で車いすやクッションを提供する際の一助になると考えられる.今後は時間的変化の検討を行っていきたい.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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